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魔王に転生したけど私、解釈違いです!~完璧な従者と最強の魔王の関係性を拗らせたオタク、自らの存在が解釈違いすぎる~  作者: 片吟堂
第3章:推しと世界

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3-24:マテリア王国を照らす月

 ほの白く明るい満月の光を浴びながら、セブとモルが並んで星空を見上げてる。

 黒雲の晴れた世界で、二人が二人のまま生き続けてる。


「よかった……」


 思わず口を出た言葉に、次いで涙があふれ出す。やだなぁ、主従二人の姿をちゃんと目に焼き付けておきたいのに、涙で視界がぼやけてよく見えない。

 足に力が入らなくて、うまく立っていられなくなった私は膝をついた。セブとモルが振り返ってこっちに駆け寄ってくれる。


「由紀? どうした?」


 セブがしゃがんで目線を合わせてくれる。紫水晶の瞳が心配そうにこっちを見つめてる。


「ごめん……なんか、ホッとしたら、涙……止まんなくなっちゃった……」


 恥ずかしくて、情けなくて、無理に笑顔を作ってみたけど、全然うまくいかなかった。

 セブはそんな私を胸に抱き寄せてくれた。


「好きなだけ泣け」


 ずるい。こんなの絶対泣いちゃう。しかもセブは泣きじゃくる私の頭を優しく撫でてくれた。


「俺たちのために、ずっと、ありがとな」


 モルもすぐ傍で寄り添ってくれてる。申し訳ないけど、今だけは、二人の気持ちに甘えさせてもらおう。


 ひとしきり泣いて、ふと冷静になった私は重大なことを思い出した。


「あの、ひとつお聞きしても?」

「何だ?」


 セブが腕の中の私を見つめながら、囁くみたいに答えた。距離が近いどころの騒ぎじゃない。けど今の私にはそんなことよりもっと気になることがあった。


「さっきのあれ、私が書いたやつだよね?」

「……」


 沈黙。セブもモルも一切表情を変えずに黙ってる。

 えっまさかしらばっくれるつもりですか? 許しませんけど? どう考えても絶対私が夢でセブに会うために書いてたセブモル二次創作の一部を、忠実に再現してたよね?

 このままスルーさせるわけにはいかない。追撃してみよう。


「っていうか、どこまで読んだ?」

「全部だな」


 待ァッ!? あ゛っ!? 全部!?


「ぜっ、ぜ、えっ!? 全部って、全部ってこと!?」

「そうだ」


 この魔王、一ミリも悪びれずにぬけぬけと……! てか待って、この人現代日本語が普通に読めるってこと? 私の記憶共有してたから?


「おれは、読めたところだけだ」


 モルたん! フォローになってるようでなってない!

 待って待って、読まれてたのは知ってたけど全部とは聞いてない。

 セブが全部読んで内容把握しちゃってたら、いずれモルにも伝わっちゃう。全部。ちょっといかがわしいやつも含めて。うわぁ社会的死!!


「さて、酸の雨も止んだことだし、帰るか」


 おおおい!? スルーですか!? オタクが社会的死を迎えてますけど!?


「陛下、お帰りになる前に、ナチュリアの王子たちに一声かけるべきかと」

「それもそうだな」


 この二人、読んでた件は完全にスルーしていく気だ。つら。

 そしてさすがモルたん、冷静。セブもモルの指摘にうなずいて、魔天蓋(まてんがい)に開けた穴の方へ行く。


「よっと」


 一瞬、何が起きたのかわからなくて私は思いっきり瞬きしまくった。

 セブの姿が消えた。正確に言えば、セブが穴から飛び降りた。


「ちょっ!? ええっ!?」


 自由か。心臓に悪いからやめてほしい。

 かなり動揺した私とは対照的に、モルは涼しい顔をしている。

 そのモルが、なぜかじっと私の方を見てる。


「由紀」


 珍しい。モルから私に話しかけてくれるなんて。


「なに?」


 モルはしばらく言おうか言うまいか躊躇ったみたいで、視線を泳がせながら黙っていた。けどついに、意を決したように私を見た。


「ありがとう」


 聞こえるか聞こえないかぎりぎりぐらいの小さな声で、だけど私の目をちゃんと正面から見据えながら、モルが伝えてくれた。


 あの、ちょっと……思った以上の破壊力……すごく、うれしい。


「こちらこそありがとうモルたn」

「たんを付けるな」

「ごめんなさい」


 今回は食い気味ですね? 貴重な新規バリエーション、ありがとうございます!


「あいつらに報告してきた」


 ちょうどいいタイミングでセブが戻ってきた。


「んじゃ、帰るぞ。せっかくだし、この上歩いて帰るか」

「賛成!」


 ついテンション上がって元気に返事しちゃった。


 星空の下、月明かりを浴びながら、私たちは並んで歩く。

 主従二人と、壁として横から二人を見守る私。


 ……壁にしてはちょっといろいろ張り切りすぎた気もするけど、二人を酸の雨から救うことができたんだし、まあいっか!


 これから先は壁として、深入りしすぎず控えめに、幸せな日々を送るセブモルを眺め続けるとしますか。


「陛下、慈雨(じう)の巫女のお披露目についてですが」


 忘れてた。確か私、国民の前に出て挨拶的なことしないといけないんだっけ。ああいうのぶっちゃけ苦手なんだよね。絶対緊張するし。


「せっかく黒雲も晴れたことだ、派手にやっときたいところだな。魔天蓋も解体しなきゃなんねぇだろうし」


「ナチュリアとの国交正常化も含め、両国の和平と協調を兼ねた式典にしてはいかがでしょう」


 モルたん、ナイスアイデア。だけど何かかなり大ごとになってきてない? 私ただでさえ人前苦手なんですけど?


「確かにそうだな……あっ」


 セブが不意に声を上げ、立ち止まる。


「モル、俺は面白ぇことを思いついた」


 ……嫌な予感がする。セブがこう言うとき、だいたいろくな考えじゃない。


「俺の婚約も同時に発表。これでいくぞ」


 そう言ったセブの腕が、私の肩をぐいっと抱き寄せた。


「…………はあぁっ!?」


 何、何言ってんのこの人、正気!? ダイス振って正気度チェックした方がいいのでは!?


「実に素晴らしいお考えです、陛下。城に戻り次第、早速準備に取りかかりましょう」

「モルたん!?」


 こっちも正気じゃない! いつもの「たんを付けるな」も無いし!


「よし、決まりだな」

「決まっとらんわ!」


 肩を抱きながら私を見つめるセブに私はド正論ツッコミをぶつけた。


「なんでだ? 俺のこともモルのこともよくわかってて何かと都合がいいし、何よりお前だって間近で供(・)給(・)得られるんだから、いいだろ?」


 全く悪気なくこれを宣うんだから、この魔王は本当にたちが悪い。


「あのね、そもそも人の人生の重大事をそんな勝手に……っていうかモルもちゃんと止めて!?」

「由紀なら心配ない。どこの馬の骨とも知れない女と結ばれるよりずっと安心だ」

「お墨付きを与えないで!?」


 もうだめですこの主従。どうしよう、マジでどうしよう。てか私、今度こそ暁光(ぎょうこう)の巫女に刺される。

 頭の中が大混乱な私に、セブがいきなり正面から向かい合って、顔を覗き込むみたいに問いかけてきた。


「由紀は……嫌か?」


 ……っこの、ちょっとしょんぼりした感じで聞くの、ずるすぎ……! 月に照らされた顔がより一層憂いを帯びてるみたいで、推しにこんな顔されたら、抗えない……!


「嫌じゃ……ない……です」


 セブの表情が途端に明るくなる。


「よかった」


 ふわっ、て足が地面から離れた。セブの顔が、近い。その奥に、満天の星空が広がってる。


 お姫様抱っこ、されてます????


「待って嫌じゃないとは言ったけど良いとも言ってない。解釈違いではあるので。ちょっとその受け止める時間が必要なんですが。聞いてます??」


「善は急げ。明朝、ナチュリアと和平交渉だ」

「かしこまりました。使いを出します。式典の手配は私の方で、抜かりなく」


 ぜ、全然聞いてない~! この悪役主従どもめ~!


 けど二人とも、楽しそう。未来のことをこんなに楽しそうに話し合う二人、初めて見た。

 こんな二人を間近でずっと見ていられるなら、まあ、悪くないのかも。


「陛下、婚姻の儀の進行に関してですが、やはりメインは誓いの口づけで飾るべきかと」


 待ってモルたん今何て言った?


「それだな。練習しておくか」


 セブリオン・マテリアさん??


「待って落ち着いて本当に待って」


 近い! 近い近い! 顔! 待って無理心の準備がまだ、ねえ、誰か止めて~~~~!?



完結です!

ここまでお読みいただき本当にありがとうございました!

もし少しでも気に入っていただけましたら評価・ブクマ・感想・リアクションなどいただけるととっても励みになります!

ここまで応援いただいたすべての皆さま、本当の本当にありがとうございました~!! 大感謝~!!

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