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魔王に転生したけど私、解釈違いです!~完璧な従者と最強の魔王の関係性を拗らせたオタク、自らの存在が解釈違いすぎる~  作者: 片吟堂
第2章:推しと対話

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2-17:風の聖域の侵入者

 風の精霊の聖域には、他の聖域よりも特に厄介なギミックがいっぱい仕掛けられてる。

 特定の順番で風向きを切り替えたり、風にわざと魔物を乗せて飛ばしたり……制作陣こだわりの高難度ギミックがてんこ盛りで、とにかく面倒臭いダンジョンだ。


 だけど今、それらは全てキレイに突破されてる。私たちはただ最奥を目指して歩くだけでよかった。


「至れり尽くせりだな」


 セブが皮肉交じりに言うぐらい、道中は何も起こらなかった。あまりにも静かすぎて不安になる。本当に侵入者がいるのかな。いるとしたら、どこに潜んでるんだろう。


 慎重に慎重を重ねて進んでいたはずのセブと巫女は、いつの間にかもう聖域の最奥、風の精霊の座がある辺りまで来てしまっていた。


「侵入者のこと、精霊様に伝えた方がいいよね」


 そう言って奥へ進もうとする巫女を、セブの腕が引き留めた。


「待て」


 緊張感が走る。私にも巫女にもわからないけど、セブだけが何かの気配を察したみたい。


「精霊、じゃなさそうだ。この先に一人」


 いよいよ侵入者とご対面だ。セブと巫女はそれぞれ柱の陰に身を隠し、目と目で合図して一斉に侵入者の前へと躍り出た。


「……ああ、姫。来てくれたんだ」


 ヴァニアだ。風を司る、ナチュリア王国第三王子。


「ヴァニア、あなたがどうしてここに?」


 巫女の声が少し震えてる。原作にない想定外の出来事に混乱してるんだ。


「姫がいけないんだよ? 兄さんたちはさておき、俺というものがありながらそいつと精霊巡りをしようとするから」


 出た、痴情の縺れ……。私たち関係ないんで、当人同士で話し合っていただいてもいいですか?

 げんなりしてる私とは対照的に、セブはヴァニアに鋭く問いかける。


「風の精霊はどうした?」


 そういえば、精霊の姿が見当たらない。嫌な予感がしてきた。


「倒したよ、俺が」


 やっぱりそうなりますよね? てかこれ一人でやったの? 強すぎない? 育成とかどうなってるの?


 いや待って。そんなことより……祝福は?


「祝福も俺が授かった」


 うわぁ面倒臭いことになった。これまでセブと巫女に与えられてた祝福が、急にヴァニアのものになっちゃった。

 原作だとあり得ないシチュエーションだけど、この場合どうなるんだろう。


(これってまずいのか?)

(たぶん……いや、でももしかして)


 通常ルートならみんなでセブモルを倒してそのまま黒雲を払う儀式に進むから、誰が祝福持ってても関係ない。

 でも追加ルートは違う。セブと一緒に四精霊を巡った後、セブと二人きりで儀式に進む。だから、セブと巫女以外の人に祝福を取らせちゃいけない。

 つまり、このヴァニアの行動で詰むのは、


「何してくれてるんですか」


 静かな、それでいてあふれんばかりの怒気を抱きながら、巫女が低い声で呟いた。普段の聖女感は完全に消え失せてる。


「どうしたの~姫? そんなに怖い顔して」


 こいつハート強いな!? この状態の巫女に平然と話しかけるなんて、私なら絶対無理ですけど!?


「黙ってください。今あなたの声聞きたくないです」


 巫女、猫被るのやめてる。一応ここにセブいますけど、それどころじゃないってことか。まあセブは私越しにいろいろ見てたから、巫女がこんな感じだってとっくに知ってるけどね。


 ヴァニアは巫女が本性表したことを気にしてないのか、今まで通り話しかけてる。


「酷いなぁ。俺はただ」

「聞こえませんでした? 金輪際あなたの声は聞きたくないって言ったんですよ」


 さすがのヴァニアも今のはダメージ受けたみたい。悲しそうな顔で黙り込んじゃった。

 っていうかいくらなんでも言い過ぎじゃない? そもそもヴァニアが暴走したのだって、巫女が事前にちゃんと話を通してなかったからでしょ。


 何か思うところがあったのか、セブが巫女に声をかけた。


「それがお前の本性か」

「そうです。幻滅しました?」

「いや、悪くねぇ」


 こいつ~! こいつすぐこういうこと言うから油断ならないんですよ~!

 ほら、今! 今の巫女の「キュン……」みたいな顔! フラグ立ってない!? 大丈夫!? 本当に追加ルートに進まない断固とした意志があるのか~!?


(おい、騒ぎすぎだ)

(ごめんだけどこれで騒がないのは無理です!)


 それはそれとして悪くねぇって言った時の顔は絶対かっこよかったに決まってるので横から見ておきたかったですね! 早く外に出たい!


 騒ぎまくってる私をよそに、巫女がこっちに近づいてくる。えっ待って近くないですか? 手を伸ばしたら触れられるぐらいの距離感ってか実際に手が伸びてきてますけど!?

 巫女の指先が、そっとセブの頬に触れる。顔が、近づいてくる。嘘でしょ。待って無理この流れはだめです無理です。ストップ! プリーズストップ! 制止! ヴァニアが見てますけど!? 待ってやだやだ本当に無理中に私がいるんですよ!?


 もうダメだと思ったその時。セブの手が、頬に触れる巫女の手を掴み、引き離した。


「何の真似だ」


 よ、よかった止まってくれて……一人のオタクの命が救われました……あとヴァニアも……。


 巫女の目が、セブを見つめる。そこには純真無垢な聖女の持つ清らかな輝きは一片もない。あるのはただ、欲と執着。


「あたし、この先何が起きても絶対にあなたを諦めませんから」


 ぞくってしちゃった。巫女はヴァニアには見向きもせず、セブの隣を抜けて聖域から歩き去っていった。

 置いて行かれたヴァニアは、巫女が去っていった方をじっと見てる。


「俺だって、諦めないよ。姫」


 大丈夫かなヴァニア。また巫女のこと塔に閉じ込めたりしない? というかセブに逆恨みして今すぐこっちに攻撃してきたらどうしよう。

 私の心配をよそに、ヴァニアはセブのことなんて見向きもしないで転移魔法を使い、去っていった。


(……私たちも帰ろう)


 ヴァニアが残した魔法陣をセブがいい感じに書き換えて、私たちは無事マテリアへと帰ることができた。


 ***


 王城に着いた私たちをモルが出迎えてくれた。転移魔法使ったし、またセブが倒れたらどうしようって心配だったけど、今回は大丈夫みたい。戦闘が無かったからかな。


 いろいろ想定外ではあるけど、ヴァニアのおかげで追加ルートの道は絶たれた。まずは一安心……とはいかないか。

 巫女のことだから絶対このままじゃ終わらない。きっと原作にないやり方で来るだろうから、事前に対策を打てないのが怖いな。リセット狙いでまた攻め込んでくることだって十分あり得る。


「我がしもべよ」


 ごちゃごちゃ考えてたら、いつの間にか謁見の間まで来ていた。玉座に腰かけたセブが改まってモルに呼びかけてる。モルは跪き、主の命令を待ってる。


「陛下、ご用命を」


 従者からの呼びかけに魔王が応じる。


「土の聖域に行く。お前も来い」

「かしこまりました。陛下の仰せのままに」


 ……待ってこの魔王今何て言った? 土の聖域に、行く? モルも?



特大供給にオタクは耐えられるのか……!?


次回更新は木曜です!

引き続きよろしくお願いします~!

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