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魔王に転生したけど私、解釈違いです!~完璧な従者と最強の魔王の関係性を拗らせたオタク、自らの存在が解釈違いすぎる~  作者: 片吟堂
第2章:推しと対話

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2-10:巫女と対話

 モルが立ち去った謁見の間で、セブと巫女は二人きりで向き合っている。

 もちろん、セブの中には私もいる。「陛下を頼む」ってモルが託してくれた、その期待に必ず応える。


「やっと、二人きりだね。セブ様」


 暁光(ぎょうこう)の巫女は交代中の私たちが意思疎通できないと思い込んでるみたい。

 まさか私がセブの中から一言一句漏らさないように聞き耳を立ててるとは思わないだろうな。都合がいいからこのまま黙っとこう。


「まずは謝らせて。マテリアに攻め込んだこと、モルを傷つけたこと、本当にごめんなさい。追い詰められて、いっぱいいっぱいになっちゃったとはいえ、許されないことをしたって、わかってる」


 巫女は深々と頭を下げてる。セブは何て返すだろう。気にしながら待ってたら、巫女がそれを待たずに再び話しだした。


「あんなに酷いことをしちゃったのに、セブ様はあたしを王子たちから助けに来てくれた……あたし、うれしかった……」


 あっ、巫女の目にうっすらと涙が。なんだろう、この、つい守ってあげたくなる感じ。主人公補正が強すぎる。王子たちを肉の盾扱いして笑顔で大鎌振り回してたのと同一人物とは思えないな?

 というかこの人、ぬいぐるみ姿の私を足蹴にしてナイフを突きつけて窓から放り投げたことはスルーですか? さすがにちょっとぐらいは謝ってほしいんですけど?


(それはお前がのこのこ敵地に出向いたのが悪いだろ)


 うっ、推しから冷静なツッコミが。正論は時に人を傷つけるんですよ?


 涙ぐむ巫女を前に、セブが泰然と口を開く。


「謝罪は不要だ。受け取るつもりもない」


 容赦ないな。セブはセブで、モルたんを傷つけた巫女に怒ってたのかも。


「単刀直入に問う。巫女よ、お前は『慈雨(じう)の巫女』について何か知っているか」


 セブの口から慈雨の巫女って言葉が出たことに、巫女は意外そうな反応を見せた。原作ではセブの口からその言葉が出ることはないから、巫女が驚くのも当然ではあるけど。


「……はんぺんさんからは何も聞いてないの?」


(ハンペン……?)

(私のことです……)


 推しの前でHN(ハンネ)禁止ィッ!


「由紀のことか? 特に何も聞いていないが」

「そう、ユキさん」


 今、個人情報が流出しましたね。まあモルたんも巫女の前で私のこと呼んでたし、今更ではあるか。

 あと、巫女は今「自分の名前より先にクソオタクの名前が推しに認知された」事実にキレ散らかしてると思う。完全に目が死んでる。怖い。


「そうだよね。慈雨の巫女の情報は、セブ様を救うルートに進まないとわからないから。ユキさんが知らないのも無理はないと思う」


 巫女は一瞬悲しそうに目を伏せると、何かを決意したみたいにセブの目を真っ直ぐ見つめた。


「セブ様。この世界であたしは、あなたとモルが死んでしまう未来を見たの」


 来た。追加ルート突入のフラグ会話。原作だと、破滅の未来を告げられたセブはここでモルを生き残らせる道を選ぶかどうかの決断を迫られる。


「モルが、あなたのために魔力を(かえ)して……モルを喪ったあなたは、この世界の何よりも悲しそうだった」


 ここまでは原作通り。でもここからは違う。


「……知っている」


 巫女が動揺してる。そう、今のセブは原作と違って、既に自分たちの行く末を知っている。それどころか何十回も見てる。私の記憶経由で。


「俺たちが辿る末路なら、既に由紀から聞いている」


 さあどうする巫女。あんたが望む原作通りの会話は今の私たちに通用しないから。


「……そっか。ユキさんからもう聞いてたんだね。つらいこと思い出させてごめんね」


 心から申し訳なさそうな顔を見せた後、巫女はためらいがちにセブに語りかける。


「セブ様は、いいの? このまま、モルがセブ様のために死んじゃう世界で、本当にいいの?」


 そうならないためにこっちは今あんたを呼びつけてるわけなんですが。でも巫女からすれば、目の前に助かる道があるのにどうして手を伸ばさないの、って不思議で仕方ないんだろうな。


「俺がモルを手放すだと? 馬鹿を言え。あれは俺のしもべだ」


 これ! 好きな! 台詞! だけど原作通りの台詞なんですよね大丈夫かな?


「あれの命は俺の手中に在る。俺だけのものだ」


 供給が、きょ、供給が、怒涛の勢いですごい助けて無理。


(おい騒がしいぞ)

(ごめんなさい)


 落ち着け私。巫女の反撃に備えないと。


「それでもあたしは、二人に生きてほしいよ」


 一つ一つ、自分の言葉をかみ締めるみたいに、巫女は語った。


「二人を確実に助けられる方法を知ってるのに、黙って見殺しにするなんてあたしにはできない。この世界のために、二人を犠牲になんてさせない」


 巫女はそこで一度言葉を切ると、強い意志を込めた目でセブを見た。


「お願い。あたしと一緒に、この世界で生きて」


 原作の台詞とも違う、巫女自身の、推しへの気持ち。どう考えても私がここで聞いてていいやつじゃない。さすがに申し訳ないな。


「……」


 いや待って、セブ絆されてない? 私も殺されかけた過去がなければ危うかったとは思うけど。

 セブの反応に手ごたえを感じたのか、巫女は一気に自分のペースへ引き込もうとしてくる。


「ごめん、話それちゃった。慈雨の巫女のこと、あたしが知ってる範囲で教えるね」


 巫女はそう言って待望の新情報について話しだした。


「まず、ナチュリアの暁光の巫女は、ナチュリアの四精霊の力でこの世界に呼ばれるの。だから、マテリアの慈雨の巫女も、マテリアの精霊たちの力で現れるはず」

「マテリアにも精霊が? そんな話は聞いたことがないが……」


 訝しがるセブに、巫女は冷静に根拠を示す。


「この世界のことを調べると、その痕跡が見つかるの」


 研究ステータスのことだ。ステータス値を育てると読めるようになる、この世界についての短いテキストたち。その中に追加ルート突入後だけ読めるものがあったはず。


「あたしもこれ以上のことは知らない。けど、ナチュリアの四精霊たちならマテリアの精霊のこと何か知ってるかも」


 そこまで話すと、巫女は上目遣いにセブを見つめた。


「だからセブ様、あたしと一緒にナチュリアの精霊たちに会いに行きませんか?」


 やられた。それが狙いか。追加ルートのメインコンテンツ、王子たちの代わりにセブと一緒に四精霊の聖地を巡る探索イベント。


(これは原作でいう追加ルートにあたるのか?)

(そう。セブと巫女が二人で四精霊の聖地を巡って、黒雲を払うために必要な祝福を授かる)


 通常ルートだと火水風土それぞれの属性に対応した王子と一緒に行くんだけど、追加ルートは四精霊全部セブと二人きりで行くことになる。セブ推しのオタクにとってはこの上ない最大の供給ってわけ。


 正直、反対したい。魂の契り解消クエストと聖地巡りは必ずしも直結はしないけど、追加ルートと同じ行動は出来る限り取ってほしくない。原作ゲームのシナリオが、この世界にどれぐらいの強制力を持っているのかはわからないし。


 とはいえ情報は欲しい。それに、セブは情報のためなら喜んで巫女と聖地巡りをすると思う。少しでも、モルを従者のまま生かせる可能性が上がるなら。そこは私も同じ気持ちだ。


(巫女の提案に乗ろう、セブ)

(……いいのか?)

(取れる情報は取らなきゃ、でしょ)

(そうだな)


「いいだろう。マテリア国王セブリオン・マテリアが、お前とともにナチュリアの聖地を巡ると約束しよう」


 巫女、嬉しそう。そうだよね。今のセブの台詞、原作と同じだもん。

 不安はぬぐい切れないけど、幸いセブの中で私が話を聞いてたことは巫女にバレてないし、魂の契り解消クエストに直結するような会話も今のところは出ていない。

 原作と違うルートを早く確立するためにも、ここで慈雨の巫女の情報をしっかりゲットしよう。


 こうして、追加ルートと同じく、セブと巫女はナチュリアの四精霊の聖地を巡り、祝福の試練を受けることになった。

 けど、追加ルートとは違って、魂の契り解消クエストは発生してない。ベストじゃなくてもベターな結果になってよかった。外で待ってくれてるモルたんに報告しよう。


もうすぐ10万字!


次回更新は土曜!

引き続きよろしくお願いします~!

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