表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔王に転生したけど私、解釈違いです!~完璧な従者と最強の魔王の関係性を拗らせたオタク、自らの存在が解釈違いすぎる~  作者: 片吟堂
第1章:推しに転生

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

10/10

1-10:この国初のセブモル二次創作が爆誕した

 翌朝。ちょっとだけ期待してたけど、やっぱりセブからの返事はなかった。

 作戦失敗。セブへの呼び掛け文は念のためこのまま残しておくとして、次の手段を考えなきゃ。


 セブの魂は私の魂と同居してるわけだから、例えば自分の内面と向き合う系の……瞑想? マインドフルネス? よく知らないけど、そういうのやってみたらいいかも。


 というわけで、今私はあぐらをかいて目を閉じ、ゆっくりと深呼吸をしているわけであります。正解がわかんないから、何となく、それっぽく。


 その私の髪をモルが丁寧に()かしてくれているんですね。おかげで私は瞑想どころか煩悩が増す一方なのですが……。


 セブとして数日過ごすうちに分かってきたんだけど、この主従、距離が近い。

 というかこの城、魔王の身の回りの世話をする使用人的なのが存在してなさそう。料理人や清掃係はいたけど、いわゆるお世話係といえそうな人は一人も見てない。


 現代日本において、我々オタクはずっと「セブは生い立ち由来の人間不信に陥っているからモル以外の人に身の回りの世話をさせたがらない」って集団幻覚を見てたわけなんだけど……これ、本当に合ってたっぽい。みんなの解釈がすごい。


 モルたんが慣れた手つきで主の髪を編んでいる。つまりこれはセブモルにとって、繰り返された何気ない日常。


 もうね、本当、こっちに来てから公式の供給がすごくて。仮にも倒すべき悪役として描かれる二人だから、こういう日常パートって今までは数少ないスピンオフからしか摂取できなかったんだよね。

 それが今や毎日が日常パートですよ。書きたいネタが次から次へと降ってきてどうしたらいいか分かんなくなる。


「……そうか!」


 いいこと思いついた。つい声に出しちゃったけど、瞑想の果てに何かが降りてきたように見えたのか、モルたんはスルーしてくれた。


 私の思いつきはこう。現実で会えないなら、夢で会えばいい。


 ――夢に推しが出現しますように。それは全てのオタクが試したことのある禁断の秘術。あらゆる手段の中で、私が一番「確度が高い」と認識している方法。それは「推しの同人誌を読みながら寝落ち」だ。

 とはいえここはマテリア王国。セブモルの同人誌なんて存在しない。


 そこで私は閃いたってわけ。無いなら作ればいいじゃない?

 ネタなら有り余ってる。ここで書かなきゃオタクの名が廃るってもんでしょ。


 私がひそかに決意を固めたタイミングで、モルは涼しい顔して主の髪を編み終えた。今日もしごでき。

 早速原稿作成に取りかかりたいところだけど、一国の王にはやらなきゃなんないお仕事がそれなりに溜まっているわけで。


 まずはモルに今日の予定を確認。……うわ、軍事会議が入ってる。やだなぁ。

 只今ナチュリア王国とマテリア王国は領土を巡ってバチバチに争い中。というか、マテリアが一方的に攻め込んでる形だから完全に悪いのはこっちなんだけど。

 でもやめるわけにもいかないんだよね。たとえほんの少しでも、酸の雨の降らない土地が欲しいから。


 で、その最前線の戦況報告を受けて今後の方針について指示出したりしなきゃなんないってわけ。本当は武官のトップとかがいい感じに事を進めてくれるはずなんだけど、セブが傀儡(かいらい)にしちゃってるから……実質指揮を執るのはセブ本人、つまり今は私になるわけで……。


 こんなことなら○○の野望とか○○エムブレムとかそういうのもっとちゃんとやっといたらよかった~! 苦手なんだよ戦略シミュレーション!

 とにかく原作の展開を思い出して、何となくそれっぽくなるようにやるしかない。……本当は侵略なんて今すぐやめてほしい。だけど、セブがこの戦いを止めなかったってことは、今のマテリアに他に取れる手段は、きっとない。


 そして今日はそれだけじゃない。「魔天蓋(まてんがい)」の視察も入ってる。

 マテリア王国の中心、王城と城下町の空を覆う巨大な魔晶石のドーム。これのことを魔天蓋って呼ぶんだって。原作では名前出ないから知らなかった。

 セブの莫大な魔力を惜しみなくつぎ込んで作られた、酸の雨から国を守る唯一の盾。これが問題なく機能しているか確認しに行く。

 もし異常があれば修理が必要で、そのときほぼ確実にセブの魔力が必要になる。もちろん今の私は魔法なんて使えないから、何とか言い訳して代替手段を講じないと詰む。


 というわけで、今日も正体バレのリスク大、かつ丸一日かかりそうな厄介仕事に追われる感じですね。原稿は夜にやろう。


 ――そんなこんなで数日が経過した、ある夜。


「書けたぁーっ!」


 夜更けも夜更けのド深夜。ついに、この国に、セブモル小説第一号が生まれましたっ!

 二人が穏やかな日常を過ごすほのぼの話。羊皮紙片面十二枚分。もちろん全部手書き。羽ペンだったら途中で泣いてた。万年筆が存在する程度の文明レベルで本当に良かった。ありがとうマテリア王国。


 昼間は神経すり減る魔王業を何とかこなし、夜は睡眠時間を削ってセブモル小説を書く。現代日本でオタクやってた頃のイベント前を思い出すよね。さすがにこの文字数を手書きしたことはないけど。


「おーお疲れー」


 ピッピの適当な労いも、今の私には沁みる。でも残念。現代日本語で書いたからピッピはこれ読めないんだ。ごめんね。読ませるつもりもないけど。


 さて、感傷に浸ってる場合じゃない。当初の目的を思い出して。

 今から私は、この出来立てほやほやのセブモル小説を読んで、夢の中にセブを召喚する。

 何となく、見られてると恥ずかしい気がしたから、私はピッピを壁の方に向けた。ピッピには千里眼があるから意味ないんだけどね。


 ……読んだ。よかった。我ながらすっごくよかったんだけど。


 自分のじゃなくて、他の人が書いたのが読みたい……!!


 暁光(ぎょうこう)巫女(みこ)に土下座して頼んだら書いてくれないかな。絶対無理だな。あの人セブモルの人じゃなさそうだし。

 まあ、自作でも無いよりはマシか。とにかく夢に推しを召喚するため、私は自作のセブモル小説を念のため三周分熟読し、それなりに満たされた気持ちで眠りに就いた。


 翌朝。


「で、どーだったよ、夢は?」


 目を覚ました私に、壁の方を向いたままのピッピが問いかけてきた。私はのっそりとベッドから這い出し、ピッピの向きを戻すと、ありのまま昨晩起きたことを話す。


「見た」

「マジかよ!?」

「セブモルの夢だった」

「やったじゃねーか!」


 大はしゃぎしてくれているピッピとは対照的に、私の表情は晴れなかった。


「どーしたんだよユキ? セブリオンと話せたんだろ?」


 ピッピの疑問に、私はゆっくりと首を横に振る。


「は……?」

「モルは出てきたの。モルはいっぱい出てきた。でも、セブは出てこなかった」

「それって、まさか」


 そう。私が見たのは、自分(セブ)視点でモルが出てくるタイプのセブモル夢だった。


 まあ、よく考えたらそうなるのが自然の道理だよね。今の私はセブなんだから、夢がセブ視点になるのは当然のこと。


「……」


 ピッピが黙っちゃった。たぶん呆れてると思う。私も正直ちょっと自分で自分に呆れてる。

 けど、こんなことで諦めてらんない。とにかく次の手を考えよう。


 それから私はやれるだけのことをやった。連日の瞑想、蔵書室通い、さまざまな降霊術。セブの魂を飛ばすつもりでピッピに念を送ってみたり、鏡に向かって話しかけてみたりもした。セブモル小説も増えた。


「全っ然だめだ……どうしよ……」


 自室の小さなデスクに突っ伏した私の目に、セブへの伝言を書き込んだ羊皮紙が映る。もちろんそこにセブからの返事はない。その隣にはセブモル小説の羊皮紙群が堆く積まれてる。

 そろそろ成果を出さないと。あと一週間もすれば、暁光の巫女がまたマテリアに来る。


 二度目の訪問。これが終われば、残る訪問はあと一回。それまでに、私がセブに体を返せなければ、巫女は今度こそ本気で私を殺そうとするだろう。

 魔王の体でそう簡単に殺されることは無いとは思うけど、どっちにしろその先で三度目の訪問を起こされたら、終わりだ。暁光の巫女が魔王セブを攻略してセブモルの主従関係が解消される「追加ルート」への突入が確定しちゃう。それだけは、何と引き換えにしても絶対阻止しなきゃ。


 そのときだった。突然ピッピが焦ったような声で私に呼びかけてきた。


「ユキ、ヤベーぞ! あの女もう来やがった!」


 ピッピの言葉の意味を、耳では聞き取れているのに頭が理解しようとしない。だって、そんなわけない。まだ一週間あるはずだよ?

 そんな私の混乱を、いつもより強めのノックの音が一気に現実へ引き戻した。


「陛下、暁光の巫女が訪れました」



次回更新は土曜日です!

引き続きよろしくお願いします~!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ