『孝行』
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第七十九章:星々の凱旋 —— 成長した子供たち
数年(あるいは十数年)の月日が流れた。
帝都・東京は、相変わらず平和で、少し退屈で、しかし銀河一豊かな都市として繁栄していた。
ある日、太陽系の主要なワープゲートが一斉に開いた。
侵略者ではない。
それぞれの星を統べる「王」たちが、約束の刻限を迎え、親元へ帰ってきたのだ。
1. 火星の王:レオ(20代後半)
最初に降り立ったのは、赤錆色のマントを羽織った青年、レオ。
かつてのボサボサ髪の少年は、今は精悍な顔つきの建築家兼統治者になっていた。
彼の背後には、重力制御で浮遊する『移動要塞都市・マルス』が影を落としている。
「親父(陛下)。火星はもう、地球のコピーじゃない。重力さえもデザインされた、物理法則の実験場だ」
2. 木星の女王:ソフィ(20代半ば)
次に現れたのは、冷ややかな美貌を湛えた女性、ソフィ。
彼女の周囲には、常に数体の自律型防衛ドローンが浮いている。
彼女の手土産は、木星の超重力下で生成された『対消滅エネルギー・バッテリー』。
「エネルギー効率は99.9%まで改善しました。これ一つで、地球の全電力を100年賄えます。……褒めていただけますか?」
3. 小惑星のドン:ジン(20代後半)
そして、派手なスーツに身を包み、数人の異星人秘書を従えた男、ジン。
彼の笑顔は、以前よりも胡散臭く、そして洗練されていた。
「やあ、陛下。アステロイド・ベルトのGDPが、ついに地球を抜きましたよ。
今や銀河の富の半分は、僕の金庫を経由しています」
4. 虚空の冒険者:カナタ&ミオン
最後に、空を裂いて現れたのは、傷だらけの恒星間船『イザナギ・改』。
タラップから降りてきたのは、野性味溢れる男カナタと、神秘的な歌姫ミオン。
彼らの背後には、彼らを慕う多種多様な異星人の戦士たちが控えている。
「よう、親父。銀河の果てまで行ってきたぜ。
……土産話なら、死ぬほどある。聞く覚悟はあるか?」
第八十章:最後の晩餐
皇居の大広間。
久しぶりに全員が揃った食卓には、地球の料理が並んでいる。
しかし、空気は張り詰めていた。
彼らはもう、湊に庇護される「子供」ではない。
それぞれが、一国の、いや一つの星系の支配者としての「覇気」を纏っている。
湊は、グラスを片手に彼らを見回した。
「よく戻った。……私の庭(太陽系)も、随分と狭くなったようだな」
レオが口を開く。
「単刀直入に言います、陛下。僕たちはもう、あなたの『下請け』じゃない」
ソフィが続く。
「私たちは、それぞれの領域で、あなたを超える成果を出しました」
ジンが笑う。
「陛下、そろそろ隠居して、悠々自適な年金生活なんてどうです? 後のことは僕らがうまく回しますよ」
そして、カナタがニヤリと笑って、食卓にナイフを突き立てた。
「アンタが座ってるその椅子(玉座)。……そろそろ誰かに譲る気はねえか?」
彼らの目にあるのは、反逆の意思ではない。
「乗り越えるべき壁」としての湊への挑戦状だ。
「……ほう」
湊は、ゆったりとワインを飲み干した。
そして、獰猛な、しかしどこか嬉しそうな笑みを浮かべた。
「親孝行な子供たちだ。育ちすぎて、親を食い殺そうとするとはな。
……いいだろう。欲しいなら奪ってみせろ」
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次回は明日20:10に更新予定です。
次の話:『未熟』




