『交通』
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第四十四章:魂のクラウド化 —— 『プロジェクト・アヴァロン』
騒動が鎮圧された後、湊は押収した教団のサーバーと、ミオンが持ち帰った「水晶惑星のメモリ技術」を照らし合わせていた。
「教団の連中は愚かだったが、一つだけ正解を引いていた。
『意識はデータ化できる』ということだ」
これまでの人類の技術では、脳のデータを完全に保存するには容量が足りず、コピーすると劣化(発狂)してしまった。
だが、水晶生命体の「超高密度メモリ」を使えば、人間の魂を完全に、劣化なしで保存・複製できることが判明した。
「これを組み合わせれば、人類は肉体の枷から解放される。
……死さえも、ただの『ログアウト』に過ぎなくなる」
1. 帝国公式『魂の銀行』
湊は直ちに新制度を発表した。
それは、国民の意識を定期的にバックアップするシステムだ。
* 対象: 帝国への貢献度が高い「ランクA」以上の市民、および特殊技能を持つ技術者・芸術家。
* 機能:
* 不死の保証: 事故や病気で肉体が死んでも、直近のバックアップデータから、新品の肉体(クローンまたは義体)に意識をダウンロードして蘇生できる。
* 知識の継承: 熟練の職人が死んでも、その「技術データ」だけを抽出し、若者にインストールすることが可能になる。
「死による人材の損失は、国家最大の損失だ。今日から『死』を廃止する」
人々は歓喜した。
独裁に従い、貢献しさえすれば、永遠の若さと命が約束されるのだ。
これは最強の飴であり、同時に「バックアップを消去する」という最強の鞭(罰)でもあった。
第四十五章:光速を超える通勤 —— 『データ・テレポート』
そして、この技術の真価は「移動」において発揮された。
外宇宙にいるカナタやミオンとは、ワープ航法を使っても物理的な移動には時間がかかる。
だが、意識データとして送信すれば?
1. 物質転送のその先へ
帝都の転送センター。
湊は、真新しいカプセルに入ろうとしている外交官を見送っていた。
「行ってこい。現地での身体は、向こうのプリンターで出力済みだ」
「はっ。……行って参ります(送信されます)」
スイッチが押されると、外交官の意識は瞬時にデータ化され、超光速タキオン通信に乗って数千光年先へ飛ばされた。
受信側の水晶惑星では、物質変換装置で作られた「空の肉体」が待機しており、そこに意識がダウンロードされる。
所要時間、ゼロ。
これが究極の移動手段、『意識転送』である。
2. 銀河をまたぐデュアルライフ
この技術により、人類の活動領域は爆発的に広がった。
* 朝: 地球の自宅で朝食をとる(肉体A)。
* 昼: 意識を飛ばし、木星のソフィの工場で重機を操作する(肉体B)。
* 夕方: さらに遠く、カナタが開拓した未踏惑星で冒険を楽しむ(肉体C)。
* 夜: 地球に戻り、家族と過ごす(肉体A)。
「肉体」は現地のレンタル品(端末)に過ぎない。
本質である「意識」だけが、銀河中を瞬時に飛び回る。
物理的な距離は、完全に意味をなさなくなった。
第四十六章:全知への接続 —— 『アカシック・ダイブ』
さらに、水晶惑星からもたらされた「アカシックレコード」の解析も進んでいた。
そこには、銀河の誕生から現在に至るまでの、膨大な歴史と知識が記録されている。
湊は、自らの脳をこのデータベースに直結させる実験を行った。
「……見える。数億年前の超新星爆発。滅びた古代文明の技術。未知の物理法則……」
湊の脳内に、人類が何万年かけても到達できないはずの「叡智」が流れ込んでくる。
それは、彼を単なる独裁者から、文字通りの「全知全能の統治者」*と進化させた。
「わからないことなど、もうこの宇宙にはない」
湊は、アカシックレコードの検索結果を閲覧し、ある一つの「答え」を見つけ出した。
それは、彼がずっと探していた、この帝国の「最終到達点」に関わる情報だった。
「なるほど。……宇宙には『先客』がいるだけでなく、『管理者』がいるのか」
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次回は明日20:10に更新予定です。
次の話:『断罪』




