泥は……楽しいんだ、そうだろう?
次の階へ降りて最初に見たものは……がっかりするほど退屈な光景だった。いや、嘘だ。雰囲気が違った。もっと……陰鬱? 湿った綿のように分厚い沈黙が空気を支配していた。木々は変わらないが、足元の地面は沼地のように柔らかく変質している。沈み込まずに歩けるものの、一歩ごとにズボッという滑る音と、靴底へのベトッとした引っ張り感がついてきた。
「泥人形作りたいな、ねぇ?」突然言い放ち、草むらで靴底を擦りながら嫌悪の表情を浮かべるカラナを見た。返事を待たず、イレーネの隣にしゃがんだ。水たまりの縁で跳ね、冷たくザラついた泥の塊を指でこね回す。私の作品は……まあ、形になろうと努力はした。「犬」はコブだらけのジャガイモ、「猫」はラヴクラフト的な悪夢を喚起する。一方イレーネのはシンプル──貝殻の目と小枝の笑顔をつけた滑らかな球体だ。ミニマルな優雅さに静かに辱められた。こうして小道を小さな泥の「雪だるま」で埋め尽くした。奇妙なほど牧歌的だった……私の生み出した化物の一本の泥触手が動いたと確信するまでは。「芸術家志望の妄想だ」と自分に言い聞かせた。
「ダンジョンにモンスターがいないって変だろ?」カラナに尋ねた。彼女は木々の間から流れ込む霧を見つめ、やがて「グゥ」と唸り肩をすくめた。「ちぇ……新しいコレクションアイテム欲しかったのに!」芝居がかったため息をつき、黒く絹のように滑らかで冷たい油のような深い水たまりに近づいた。小熊を作ろうとした……結果は怒り狂ったガーゴイルの胎児のようだった。「プッ……ケラケラケラ!」カラナの笑い声が砲撃のように轟いた。「おい!全力を尽くしたんだぞ!」抗議したが、間抜けな笑みが零れた。私の尊厳は文字通り泥だった。慈悲深いイレーネは私の恐怖を認識可能な何かに改造していた。幼女に負けるとは何事だ?
その時、水たまりが反応した。
手が粘つく闇から出現した。骨でも肉でもない……純粋な可塑性の泥だ。そして私に触れた!「ひいいいいい!? な、なんだコレ!?」感電した猫のように後ろへ跳び、金切り声を上げた。腕が現れ、次に不定形の頭──太陽の下で溶けて再生する蝋のように形を保てない泥の塊だ。体が水たまりからゆっくりと重く這い出し、糖蜜に浸かったゾンビのような動き。泥男。沼の保育園で見られる最も恐ろしいものだ。
震える手で武器を握る。ズブッ! 一閃で首を刎ねた。地面にポチャンという水風船のような音で落ちた……が、まだ這い続ける! 斬り落とした腕(ベチャッ! ベチャッ!)は胴体へ向かって這い、胴体は縮みながらも前進を止めない。「おい、カラナ! どうすりゃいい!?」パニックで叫びながら狂ったように斬りつける。モンスターはスローモーションで再生する。脳よ、考えろ!
「アルテミサ! 雷撃、今すぐ!」命令した。人形のフェルトがパチパチと火花を散らし、青白い稲妻を放つ(ビリビリッ!)。直撃は壮絶だった:ジューッ……ドカン! 泥男は悪臭を放つ無数の滴に爆散し、最終的なパフ!と共に蒸発した……が、何も残さなかった。魔法の泥の欠片すら。無だ!
「……! 戦利品はどこだあああ!?」絶叫し、必死で地面を掘り返す。カラナは片眉を上げ、“言わんこっちゃない”という表情。だが私は想像上の骨に執着するブルドッグのように頑固だった。「おい、カラナ……やっていい? いいだろ、いいだろ、いいだろ!?」彼女は唸りを返し、存在しない鉱石を探して手で穴を掘り始めた。イレーネは掘り出した土で城を作る。そして私は……水たまりへ戻った。
実験第2号: 別の泥男をおびき出す。アルテミサが出現直後に焼却(ビリビリッ―パフ!)。結果: ドロップゼロ。
実験第3~7号: 憑かれた科学者のように反復。一貫した結果: パフ! + 無 + 消えゆく正気。
「ああああ! 役立たずの泥男め! 何も落とさない!」岩天井に向かって叫び、小さな水たまりで地面を蹴り散らした。カラナは眉まで泥まみれで、土の塊を吐き出した。「ちっ! この糞土地、鉱石の欠片もねぇ!」。近寄り、汚れていない方の袖で彼女の泥面を拭った。「優しいんだね~、カラナ」鼻歌まじりに言い、殺意の眼差しを無視した。「よし……進むか? あの化物は塵すら落とさない。もしまた出くわしたら……完全無視だ!」。
カラナは伸びをした(ボキッ! ゴキッ!)、彼女にとっては軽い準備運動だ。イレーネはアルテミサを肩に留まる電気の小鳥のように抱き上げた。先へ進む──繰り返す風景に不審な水たまりが点在する。見るたびに血が沸騰した。「アルテミサ! 雷撃! その水たまりを揚げろ!」狂乱した元素獣使いの如き熱意で命じた。ビリビリ……ドカン! 水たまりは蒸気の雲(ドン!)と共に爆発し、煙を上げる穴だけを残した。戦利品ではないが……復讐の味は甘かった。「よし! ざまあみろ、役立たず!」勝利を叫び、叫び声が霧深い泥沼に消えていく間に少し気分が良くなった。せめてこの負けフロアは綺麗にした……砲撃でな。




