石と約束、そして燃える晩餐」
ゴーレムの残骸が地面に散らばり、まるで荒れた誕生日パーティーの後みたいだった。ぼんやりした頭で、俺は一つ一つを《編まれたインベントリ》に収めていく。これは死体?遺体?それともただの瓦礫?あまり深く考えたくなかった。
カラナは少し離れたところから、黙って俺を見つめていた。その目はどこか楽しげで、でも鋭かった。やがて彼女が口を開く。
「ねえ、その子……あんたの妹?」
「え?」突然の質問に、思わず間の抜けた声が出る。
カラナはイレーネを指さしていた。彼女は枝を持って地面の石をカチカチしている。アーティミサはその隣でじっと見守っていて、まるで訓練された兵士のように微動だにしなかった。
「ドワーフの子にしてはヒューマンっぽいし、人間にしては小さすぎるし。体格と年齢が釣り合ってない」
イレーネはにこりと笑い、また小石遊びに戻った。カラナはさらに言う。
「それで、エステル……その人形、何よ!? あんた、一体何作ったの!?」
「……仲間?」俺は目をそらしながらそう答える。
カラナはすぐに俺に詰め寄り、シャツを引っ張って顔を近づけてくる。小さい体なのに、異様な威圧感があった。目が、俺の魂の奥まで見通してくるようだった。
「無理に聞き出したりはしないけどさ……」
彼女はにっこりと笑い、空気が一気に軽くなった。
その瞬間、ぐぅぅ〜と音が響いた。俺とイレーネの腹から、同時に。
「……帰ろっか?」
「ぷははははははっ!!!」
カラナは腹を抱えて笑い出し、そのまま帰路に就く。
...
地上に出ると、もう夕暮れだった。警備のドワーフたちは交代しており、町の喧騒も少し静まっていた。イレーネがあくびをしたので、自然に抱き上げた。カラナは俺をチラチラと見ながら、なぜかため息をついている。
その足でカラナの家、つまり彼女の父親の鍛冶場へと戻る。
老ドワーフはまだ寝ていた。しかも今度は別の樽を抱えていた。位置だけ少し変わったが、まるで時間が止まったような光景だった。
カラナは俺を作業部屋に連れて行き、インベントリから資材を出すよう指示する。言われたとおりに全部出していくと、そこには大量の鉄、炭、タングステン、ダマスカス鋼、そして灼熱の輝きを残すヴァルカナイトのゴーレムの残骸が山積みに。
「……はぁ、これでしばらく鉱山には行かなくて済むな」
「そうかしら、ダーリン?」
カラナが後ろから近づき、俺の肩に手を置いた。ドワーフとは思えぬ優しい声。いや、優しいふりの罠か?
「“何でもする”って、言ったよね?」
……マジかよ、女神。これが俺のロマンスの始まり?ハーレムってこうやって始まるのか?サインがほしい。
俺は話題を逸らすために一言。
「……晩ごはん、一緒にどう?」
「いいわよ。もちろん、あんたの奢りね」
.....
宿屋の食堂に入ると、ドワーフたちの笑い声、鉄と火の匂い、そして酒の香りが満ちていた。
「コカトリスのモモ肉とジュースを、俺とイレーネに。あと……」
「私は火山猪のスペアリブと“火の谷の水”をもらうわ!」
え、水……!?と思ったが、それはエタノール度数が高すぎて、炎を吐きそうなアレだった。
「それ、喉焼けないのか?」
「焼ける? 赤ん坊でも飲むわよ、こんな水」
……ドワーフ文化、おそるべし。
料理が届く。イレーネは夢中で肉にかぶりつき、カラナはガツガツとスペアリブにかぶりつく。俺も静かに頬張りながら、2人を見守る。
夕食後、カラナはふわりと微笑んだ。その笑顔は、不覚にも俺の心臓をぶち抜いた。
(……まったく、女ってやつは)
....
部屋に戻ると、俺はベッドに倒れ込んだ。次の瞬間、何かが背中にのしかかってきた。
「……イレーネか」
いつの間にか、彼女が俺の背中に乗っていた。でも、疲れすぎて文句も言えなかった。
こうして一日が終わった。明日、何が起きるかもわからないけど――今は、静かな夜に感謝するだけだ




