手袋と約束と、ちょっと強すぎるドワーフ娘
最初の目的は単純だった。カラナに挨拶して、少しおしゃべりして、ついでに市場で魔力核や属性石を探して……でも最近の俺の日常は、いつも想像以上に騒がしい。
今は、カラナの鍛冶屋に来ていた。アイリーンは俺のそばで、肩に乗ったアルテミサはいつものように無表情で警戒態勢。カラナの父親――あの無口でひたすら酒を飲む鍛冶職人――は、今日も樽を抱えて寝ていた。まるで金属と酒の夢の中にいるようだった。
「素材を見る目はいいが……お前、何作るつもりだ?」
カラナは例のごとく、玄関から突然叫びながら入ってきた。
「別に手伝ってやってもいいぞ。ただし失敗したら、うちの盾も剣も全部磨けよ?」
脅しじゃなくて本気っぽかった。俺は深く考えずに、ばあちゃんから買った布地を取り出し、魔力核と火属性石、地属性石を並べた。
「……何だそれは?」
返事せず、俺はカラナの手を取った。
「え、ちょ……な、何よ……」
彼女の手は、信じられないほど柔らかかった。毎日ハンマーを振るってるとは思えない。思わず笑って頭をポンポンしたら、カラナは顔を赤くして、小さく拳を胸に当てた。可愛い反応だった。
それから俺は、静かにスキルを発動した。
「縫製!」
素材が浮かび、融合し、縫われていく。石と布が混ざり合い、魔力が紡がれる。俺の手が別人のように動くのを、カラナはポカンと見ていた。
「な、なんで石が布と……!? ちょっ、意味わかんないんだけど!」
やがて光が収まり、二組の手袋が現れた。
《力の手袋(特製)》 — SR+
炎耐性、自動修復、力・防御力+10%
《ヘラクレスの拳手袋》 — SSR+
炎耐性、自動修復、切断耐性、大幅な力・防御力・魔法耐性上昇
「う、嘘でしょ……」
カラナは俺の襟を掴み、シェイクした。
「なによこれぇえええ!? なんで!? どうやったの!? 答えろぉおお!!」
俺はニヤリと笑って一言だけ。
「へっ。」
その瞬間、胃に一撃が入るかと思ったけど……代わりにほっぺにキスが来た。
「う、うわっ…」
彼女は手袋をはめ、炉の前へ。普通なら熱さで手が焼ける場所。だが彼女は、まるで冷たい水に触れたかのような顔をしていた。
「……全然、熱くない。なにこれ……!」
全身が震えていた。俺を再び持ち上げて――
「こ、これは一体何なの!?!?!?!?」
「俺からのプレゼントだよ。いいだろ?」
驚きはあったが、俺はいつものように得意げに笑った。彼女は何も言わず、地面に俺を下ろして父親のもとへ駆けていった。
その音で、父親が目を覚ました――というより、アイリーンがその立派なひげを三つ編みにしていたからかもしれない。アイリーンは本当に度胸がある。
俺は彼らに近づきながら笑った。
「ハハハ、これは俺の手作りだ。職人じゃないけど、ちょっとした奇跡は作れるんだ。」
カラナの父は手袋を見つめた。視線は職人のそれで、無言のまま返した。
「ふむ……悪くない。拍手でもしようか?」
無感情な口調だったが、確かに笑っていた。そして目を細めて俺を見た。
「なあ、お前。うちの娘を連れて行ってくれないか?」
沈黙。
「経験は少ないし、ドラゴンも見たことない。でもお前なら大丈夫だろう。なんたって、お前は馬鹿そうだからな。」
……それ、褒めてる?
「娘に怪我させたら拳骨が飛ぶだけだ。あの暴れん坊娘には男なんか見つかるはずないしな。俺も歳でな……」
カラナは顔を真っ赤にして、ハンマーを父に向けた。俺は見なかったふりをして、アイリーンの可愛い編み込み作業に集中した。
「じゃあカラナ、俺と一緒に旅に出るか? 行き先はまだ決めてないけど、君の意見を聞きたい。」
それはまるで――プロポーズのように聞こえたらしい。
「うん、行く! ……結婚する!」
また俺を持ち上げる。……多分、仲間が一人増えた。
これは幸運の始まりか、ハーレムの前兆か――
あるいは、ただの骨折フラグかもしれない。




