打撃、宝石、そして絶叫
手の痛みはまだ残っていたが、そんなことを気にしている余裕はなかった。最後のゴーレムが、無骨で異様な姿をしたまま目の前に立ちはだかっていた。カラナはまるで新しいおもちゃを手に入れた子供のように、ミスリルのピックの握りを両手に変え、顔には「さっさと終わらせるぞ」という意気込みが表れていた。
何も言わずに突っ込んだ彼女は、宝石で飾られたゴーレムの腕――たぶん肘あたり――を思いきり叩いた。その衝撃音は、まるで誰かが山にダイナマイトを仕掛けて爆破したかのようだった。
そして…見えてしまったのだ。
宝石の山。
サファイア、ルビー、エメラルド、そして名前も知らない宝石たちが、まるで宝石箱のようにゴーレムの体に埋め込まれている。ゴクリと唾をのみ、考える間もなく、転がったゴーレムの腕のかけらへ走っていった。
「イエーイ!金持ちになるぞ!」
「…バカ!ゴーレムから目を離すな!」
カラナが蹴りを放ってきた。叱るためかと思いきや、実際は助けてくれたのだった。ゴーレムがもう一方の腕をまるで大槌のように振り下ろし、俺を地面に押し潰そうとしたのだ。
カラナは俺を突き飛ばして攻撃から守り、自分が衝撃を受けた。そのせいであたりに土煙が舞い、俺はむせて咳き込んだ。
「カラナ!?大丈夫か!?返事してくれ!」
立ち上がって彼女の元に駆け寄ると、煙が晴れて彼女の姿が見えた。平然としていた。…いや、咳してたな。土は舐めたり食べたりするくせに、吸い込むのは苦手らしい。腕には少しだけ傷があり、そこから血がにじんでいた。
「ゲホゲホ…大丈夫だ、バカ。でもな… ゴーレムから目を離すな、このクズ野郎!」
言葉は荒いけど、本当は心配してくれてる。それが顔の赤みでバレバレだ。俺は照れ笑いしつつ構えを取り直した。ゴーレムは怒りの唸り声を上げ、今度は砕けた自分の体の破片をこちらに向かって一斉に投げつけてきた。まるで子供が手当たり次第に石をぶつけてくるかのように。
「避けろ、バカ!」
けど今回はただ避けるだけじゃなかった。俺は《ユニークスキル》を発動。
「縫合」
ゴーレムの投げた破片と地面を選択し、それらを縫いつけるように結合させた。すると、空中にあった岩が一斉に地面に吸いつくように止まった。
「……何だと!?おい、エステル、今のは…… バカ!考えてる時間はない!」
カラナは混乱しながらも即座に切り替え、再び両手でピックを構えた。
「もう一回それやれ、早く!」
俺はすぐに従い、ゴーレム本体と地面を再度“縫い付け”た。結果、ゴーレムの体に亀裂が走り始める。どうやら無理に動こうとするたび、自分自身を壊しているらしい。
カラナは軽やかに跳躍し、ゴーレムの胸部にピックを思い切り叩きつけた。中から魔力の核が露出し、それを俺に放り投げてきた。
「受け取れ!これも保存しとけ!」
「了解…!」
「クソッ…宝ゴーレムなんて無駄ばかり!くだらない石ころのせいで時間の無駄だったわ!」
彼女は明らかに苛立っていた。宝石類は鍛冶には向かないし、加工しても強度がない。だから、エルフや人間のように宝飾品を重視する文化でもない限り、使い道は少ないらしい。
「エステル、これで終わりじゃないわよ。ちゃんと責任取って、全部運ぶって言ったよね?」
カラナの顔は笑っていたけど、その目は全然笑ってなかった。俺は…抵抗する勇気すらなかった。
一方で、イレーネはずっとマイペース。アルテミサと一緒に、まるで遊び感覚で小さな鉱石を割っていた。その中には金や銀もあったけど、彼女にとってはただのオモチャ。まるでミニ鉱山ごっこをしているようだった。
その姿を見ていると、心が和らいだ。
――平和だなぁ。ここ地下だけどさ




