これはただの石じゃない!
カラナのピッケルが岩を砕く音が、狂気のリズムのように響き渡っていた。彼女が工具を振るうたびに、岩の破片や見たこともない鉱石が空を舞った。まるで自分の世界に没頭しているかのように、彼女は鼻歌を歌いながら掘り進んでいた。
そして、不意に子供のような声が飛んできた。
—「エステル!早く来て、早く!これを保管して!『マナシライト』だよ!将来の旦那さまへの贈り物~!」
(……は?)
手渡されたのは、淡い光を放つ青い石だった。目には優しい光なのに、見ていて心地よく、どこか神秘的だった。手の中に乗せた途端、ほんのわずかに魔力を吸われているのを感じた。すぐさま鑑定スキルを起動した。
【名称】:マナシライト
【重量】:推定500グラム
【レア度】:やや珍しい
【説明】:周囲または使用者の魔力を吸収・蓄積する鉱石。高等魔導具や生活用魔法器具の製作に用いられる。職人たちにとっては垂涎の品。
(すごい石だな……でも、ちょっと待て。「将来の旦那さま」って何だ!?)
カラナを見ると、もう新たな鉱脈に夢中で、こちらの返事など眼中にないようだった。――この街で学んだことがあるとすれば、それは「ドワーフにプロポーズされたら反論は無意味」ということだった。
反論を諦めた頃、地面が揺れた。
—「地震……?」
カラナが地面から飛び出すように顔を上げ、目を細める。
—「おおっ!ゴーレムだ!エステル、急いで回収するよ!」
—「えっ、何を!?」
考える暇もなかった。重厚な足音と共に、3体のゴーレムが現れた。街にいた整った形のゴーレムでも、ゴレモイドでもない。荒々しく不格好な、まさに“岩の塊”だった。
その体からは赤熱した鉱石――まるでマグマのような鉱物が飛び出している。
—「やった!『バルカナイト』のゴーレムだ!全部欲しい!」
そう叫ぶや否や、カラナは迷いなくゴーレムに突進した。岩の拳が振り下ろされたが、彼女は軽くかわし、ピッケルをその足に突き立てた。ゴーレムはガタンと崩れ落ちた。
(……え、強すぎない?)
こっちは一撃食らったら終わりってのに、彼女は殴られても数センチしか後退しない。もはや鉄の女。
驚愕しながらも、俺は自分の武器「月光の刃」(ハサミの片刃)を手にした。輝くその銀色の光に一瞬見とれつつも、もう一体のゴーレムに切りかかった。
……が、現実は甘くなかった。
—「うわっ、手がしびれるっ!」
衝撃が腕まで響いた。まったく刃が通らない。ゴーレムはお構いなしに拳を振り上げてくる。
間一髪で避けた俺を見て、カラナが怒鳴る。
—「バカ!剣はピッケルじゃない!そんなもんで岩が砕けるか!」
(……ごもっともです)
じゃあ、どうする?
俺は武器をランスのように構え、最小限の接地面で突き刺すように攻撃した。
すると、ゴリッ――という音と共に石にヒビが走り、膝が崩れた。
(よっしゃ……!)
次の瞬間、ゴーレムは両手を高く掲げ、こちらを押し潰そうとする。俺は間一髪で後ろに飛び退いた。
代わりにカラナが跳び上がり、ゴーレムの胸を突き崩し、魔力核を取り出して俺に投げた。
—「これも保管ね!」
(なんで俺がこんなことを……)
残るは一体。さっきの2体より一回り大きく、体には宝石のような鉱石が散りばめられている。だがカラナは鼻で笑った。
—「宝石ゴーレムかよ。あんなの役に立たないわ。くだらない飾り石なんて誰が使うか」
(……うそだろ?宝石、めっちゃ欲しいんだけど?)
俺が黙って頷いた瞬間、カラナの胸元が強調されて視界に飛び込んできた。目を逸らせなかった。
—「こら、目線上!変態!」
(す、すまん!)
その瞬間、最後のゴーレムが怒りの咆哮を上げ、拳を振りかざしてきた。
カラナは構えたまま、一歩も引かず、カウンターの構え。俺も、懲りずに再び武器を構えて突撃した。
—「よし、月光の刃よ、今度こそ…頼む!」




