採掘、結婚、そして投げられる鉱石
どんどん坑道の奥へと進んでいくたびに、自分がまっすぐ歩いているのか、それとも地獄に向かって真っ逆さまなのかすら分からなくなってきた。
空気は重く、湿っていて、金属の匂いが喉の奥まで染みつくようだった。
俺の編み込みインベントリには、すでに俺の頭ほどもある鉄の塊が二十個以上も詰め込まれている。いや、これは俺の頭基準だ。カラナの頭サイズで計算したら……冷蔵庫か?
「早く早くっ!」
少女が父親をソファから引っ張って「見てー!」って叫んでる光景を思い出した。
まさにそれ。
ただし、俺は冷静な父じゃなくて、死にそうな荷運び役だ。
カラナは夢中でピッケルを振り続けていた。
時々、壁から金やエメラルド、フローライト、ビスマスなどの貴重な鉱石がこぼれ落ちてきたが、彼女にとってはただのキラキラしたゴミらしい。
「役に立つスペースを無駄にしないでって言ったでしょ! それにさ、もし私と結婚してくれたら、この鉱山でずっと一緒に暮らせるんだよ?」
……
どこから「結婚して鉱山生活しよう」って話になったんだ。
彼女の理屈は……まあ、分からなくはない。
俺のインベントリは無限に近い容量があるし、食料も確保できるし、安全性もある。
しかも、持ち運びが便利!
でも俺は、ただ世界を旅したいだけなんだよな……
ため息をついたその瞬間、彼女が歓喜の声を上げて、拳大のミスリルの塊を掘り出した。
当然のように俺に向かって放り投げてくるので、咄嗟にキャッチ。顔面セーフ。ありがとよ。
どれくらい時間が経ったのか分からないけど、少なくともアイリーンは楽しそうだった。
地面に座ってアルテミサと遊んでいた。
驚いたことに、魔力属性の「水」の石を使って、アルテミサは飲める水を生み出していた。
アイリーンは手のひらで水をすくいながら、小鳥のようにちょこちょこ飲んでいる。
可愛すぎて思わず頬が緩んだ。
「はぁ〜、うちの子が天使すぎて……っ! OUCH!!」
また石が飛んできた。今度はミスリルの直撃。
なんだこの自動追尾システムは。
「……人間って、こういう変なの好きだよね?」
と、カラナが黄色くぼんやり光る石を投げてきた。
見た目は属性石かと思ったけど、違った。
「これ、『光る石』って言うんだ。ただ光るだけ。松明の代わりにはなるけど、それだけ」
俺の中のクラフト魂が燃え上がったが、ランプを作る素材がなかったのでアイリーンにあげた。
彼女は宝物のように服の中にしまって、ご満悦。おかげで、この暗い坑道でも居場所がすぐ分かる。
しばらくして、カラナがまた壁をガンガン叩き始めた。
「ドリルモールに気をつけて」
「……は?」
そのとたん、地面がもぞもぞ動いて、モグラみたいな生き物が出てきた。
ただし、前足がドリルだった。
完全に本能で蹴りをかました。
「キュウゥゥ……」
即死したらしい。とりあえずインベントリへポイ。
道中、虫の羽音みたいなガサガサ音が聞こえてきたけど、姿は見えなかった。
正直、見なくて良かった。
「ふふ〜ん、この辺……お宝の匂いがするね!」
テンション爆上げのカラナは、またピッケルを振るいはじめた。
鉄、ミスリル、その他の鉱石が次々と掘り出され、俺のほうに飛んでくる。
たまに顔面ヒット。もはや日常茶飯事。
そして彼女、属性石まで投げてきやがる。拾わないと地雷を踏んだように怒るので、律儀に全部集めていた。
「う〜ん……チタンとか、ダマスカス鋼が欲しいな。いやいや、オリハルコンが掘れたら最高!」
俺はただ、平穏な日々が欲しいだけなんだが。




