勝ち取った日、安らぎのひととき
目を覚ました。
どれだけ時間が経っていたのか分からないが、腹の虫の鳴き声が、生きていることを実感させてくれた。
動こうとしたが、何かが体を押さえていた。
いや、誰かが。
イレーネだった。
まだ眠っていて、まるで自分のぬいぐるみのようにしがみついていた。彼女の呼吸は穏やかで、口はわずかに開いていて、よだれがシャツに染み込んでいた。それでも…その寝顔はどこか神秘的だった。穏やかで、美しく、無垢で。世界が彼女を汚すことなど、到底できないように思えた。
抵抗はしなかった。
そっと彼女の頬に手を伸ばし、柔らかく引っ張ってみた。
「起きて、ちびちゃん… ほら、起きて…」
もぞもぞと動き、微かに唸る声…だが、起きる気配はなかった。
何分か経ってから、ようやく起き上がることにした。イレーネを抱きかかえ、部屋の外へ出た。
最初に驚いたのは——この場所が冒険者ギルドだったこと。
宿屋や医務室ではなく、ギルド内の休憩用の一室だった。ギルド長が自らここまで運んできたのだろうか…それとも、誰か別の人が?
受付に行くと、そこには一人の人物がいた。
受付嬢。
しかも今日は…やけに色っぽかった。
「アラアラ〜、おはよう、美しき眠り姫さん♪」
甘ったるい声と、捕食者のような笑み。
「ギルド長をお探しかしら? ついさっき報告に出かけたわ。でももし私が目当てなら…大胆な子ね。うふふ、いつでもお相手するわよ〜」
苦笑いしかできなかった。
(…今日は一体何なんだ)
だが背を向けかけたその時——
「あ、そうそう。あなたに届け物があるのよ」
わざとらしく胸元を整えたふりをしながら、彼女はポケットからリネン製の小袋を取り出した。
「おめでとう、エステル。正式にCランク昇格よ〜」
黙って受け取る。
袋の中には、数枚の銀貨、何枚かの金貨——そして更新されたギルドカード。中央に「C」の文字が刻まれていた。
特に感想はなかった。
イレーネを見た。
彼女はまだ半分夢の中だったが、私の腕の中で目をこすっていた。
そして受付嬢の姿を見るや否や、ギュッと強く抱きついてきた。
(…間違いない、これは縄張り意識だ)
余計なことは考えず、そのままギルドを後にした。
空を見上げた。
新しい日が始まっていた。
任務は完了。金も手に入れた。ランクも上がった。
だが何よりも——
イレーネのために、好きなだけ食べ物を買ってやれる。
商業地区へ向かった。
まず鼻をくすぐったのは、ある屋台から漂う肉の香りだった。
『オーク肉の串焼き – 1本3ブロンズ』
期待はしていなかった。でも、今の自分には金がある。
「串焼き15本、ください」
店主は一瞬まばたきしたが、すぐに無言でうなずき、調理を始めた。
最初の数本が焼き上がると、それを一本取り、息を吹きかけて冷まし、イレーネの口元へ運んだ。
彼女はゆっくりと噛みしめ…その目を輝かせた。
「ん〜っ、美味しい!」
微笑まずにはいられなかった。
味は豚肉に近く、少し癖があるがジューシーだった。特別な味ではない。でも——
彼女が美味しそうに食べる、その笑顔。
それだけで胸が温かくなった。
そのまま歩きながら、互いに串を分け合った。
商業地区は賑わっていた。布、薬草、武具、本、果物…
衝動的に何かを買いそうになるのを抑えて、代わりにジュースの屋台に立ち寄った。
そこには緑色の果汁が並んでいた。甘い香り。どこかで嗅いだような…
「これ…リンゴですか?」
「“アプフェル”と呼ばれてる南方の果実だよ、坊や。珍しいだろう?」
二つ注文し、8ブロンズを支払った。
イレーネに渡すと、彼女は一口飲んで——満面の笑みを浮かべた。
(これだ…)
つかの間かもしれない。
だが今だけは——
誰にも邪魔されない静寂の中で、確かに「平和」を感じていた。




