戦の咆哮
衝突は避けられなかった。
変異ゴブリンたちは、まるで野生の波のように押し寄せた。しかし彼らを迎え撃ったのは、鋼鉄と意志で築かれた壁だった。騎士と冒険者たちは即席の陣形を取り、その叫びは金属音の嵐にかき消された。
「隊列を崩すな!」隊長が咆哮する。
バーサーカー・ゴブリンは、まさに暴力の権化だった。即興の棍棒や斧が盾を叩きつける音は、まるで骨まで砕けるようだった。しかし兵士たちは正確に反撃した。盾の隙間から脇腹や鼠蹊部、首を突き刺した。
「息をさせるな!」
その横では、冒険者たちがそれぞれの流儀で戦っていた。
中でも目を引いたのは、胴よりも大きな戦斧を振るう男。山のような筋肉を持つ彼は、高らかに笑いながら斬り裂いていた。
「ヒャハハハ! 来いよ、この緑のクズどもがぁ!」そう叫びながら、バーサーカーの腕を斬り落とし、襲いかかる騎士ゴブリンを真っ二つにした。
その遠方には、二体の変異ゴブリン魔術師が黒き瘴気を杖から放ち始めていた。不気味な霧が立ち込める。近くでは、ゴブリンのヒーラーが回復の呪文を唱えていた。
だが、彼らも無敵ではなかった。
「目だ!」と弓手が叫ぶ。
一筋の矢が風を切り、魔術師の目に突き刺さった。倒れる魔術師。もう一体もよろけた。ヒーラーは集中を失い、回復の光がかき消えた。
戦いは着実に人間側に傾いていた。
俺は全てを見ていた。鼓動が頭にまで響くほどに高鳴っていた。両手で縫い針を握り、アイリーンを背に隠すように守っていた。あのゴブリン・ロードの一歩一歩が、死神の足音に聞こえた。
だがその時――
「キィエエエッ!」獣のような声が響く。
一体の変異ゴブリンが抜け出してきた。機敏で、小柄。第一線には向かわず、回り込んできた。血走った目がアイリーンを捉えた。
「だめだ!」
俺は走った。
走りながら、縫い針を槍のように構える。
だがゴブリンの方が速かった。
ザクッ!
原始的な石のナイフが俺の太ももに突き刺さる。焼けるような痛みが脚を駆け抜けた。膝が崩れる。
それでも倒れなかった。
俺は叫んだ。
「絶対に…近づけさせない!」
全身の力を込めて、ゴブリンの胸に縫い針を突き刺した。奴は悲鳴を上げ、血を吐いた。もがいたが、俺も耐えられなかった。
俺の縫い針が――
ミシミシッ
パキンッ
折れた。
半分になった縫い針の先端は、ちょうど心臓を貫いていた。
ゴブリンは俺の上に崩れ落ちた。
耳鳴りがした。世界が遠のいていくような感覚。
脚から血が流れていた。
「エステルッ!」アイリーンの叫びが聞こえた。彼女が駆け寄ってくる。
片腕で彼女を抱き寄せながら、もう一方で地面を支えにした。死んだゴブリンは、なおも目を開けたまま、あざけるように笑っていた。
俺の武器…
俺の縫い針…
壊れた。
それでも、俺は深く息を吐いた。
「まだ…終わってない。」




