↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

43/89

ゴブリンロードの咆哮

勝利だった。

俺たちはゴブリンたちに勝った。


簡単ではなかった。

奴らは手強かった。

それでも──奇跡的に死者は出なかった。


負傷者たちは後方に下がり、木に寄りかかって座っている。

矢を抜き、布で応急処置を施し、血を止める。

治癒ポーションを使う者もいたが、それは貴重品。

一滴たりとも無駄にしない。


俺はイレーネを抱き寄せ、辺りを警戒しながら前へ進む。


森は生きているはずなのに、今はまるで息をひそめているようだった。


――そして、足音。

金属が擦れる規則的な音。


何人かの冒険者が本能的に武器を抜いた。

だが、木々の間から現れたのは──


騎士たちだった。


その甲冑には傷が刻まれ、擦り切れていた。

だが、誰一人として倒れてはいない。


隊列の先頭には隊長がいた。

マントを翻し、口を開かずとも存在感は圧倒的だった。


彼は静かに命令を出し、兵士たちは一糸乱れず従う。

前衛、後衛、防御陣形の構築。


冒険者たちも再び隊列を整える。

剣士やタンクは前方に、

弓兵や魔術師は後衛に配置された。


そして──そのときだった。


地面が微かに揺れる。

空気が変わった。

重く、濁り、黒く。


俺たちの前に、岩に隠された裂け目が現れる。

それは明らかに洞窟の入口だった。


闇の中から──奴らは現れた。


まずは、変異したゴブリンたち。

骨や石の武器を持ち、ある者は素手で。

その瞳には、ただの飢えではない、憎悪が宿っていた。


「……ゴブリン・バーサーカーだ!」


誰かが呟いた。


異常な筋肉量、泡を吹く口。

奴らは既に戦いの渦中にあるかのように、地面を叩き、跳ね回った。


そして次に、重い金属音が響く。


ゴブリン・ナイト(変異種)。

4体。


彼らは冒険者から奪ったであろう鎧や武器を身に纏っていた。

歪だが、しっかりと装着している。

剣の錆びついた刃先には、いくつもの命が沈んだ痕がある。


──まだ終わらない。


次に現れたのは、奇妙な文様を顔に刻んだ2体。

歪んだ杖を握り、黒いマナをまとっていた。


ゴブリン・シャーマン(変異種)だ。


空気はさらに重くなり、何かが囁く声が聞こえたような錯覚。


そして……


現れた。


ゴブリン・ロード(変異種)。


その存在が現れた瞬間、

時が止まったようだった。


灰緑色の皮膚に、黒い血管が浮き出ている。

ひび割れた骨の仮面を顔にかぶり、

赤く染まった眼光が俺たちを睨みつける。


手にするは、深淵のように黒く染まった大剣。

その剣は振るわれていなかった。

ただ、引きずっていた。

だが、それだけで十分すぎた。


その隣には、奇妙な布をまとった

ゴブリン・ヒーラー(変異種)がいた。

人間の皮のようなローブ。

口からは呪詛のような詠唱が聞こえる。


緊張が走る。

誰もが息を呑み、武器を握り直す。


俺はイレーネを背中に隠し、

震える手で針を握りしめた。


(……壊れるなよ)


後方では魔術師たちが杖に魔力を込めている。

前衛は防御陣形を整える。


誰かが低く叫んだ。


「崩れるな……!」


「ラインを維持しろ……!」


それでも──俺たちは準備するしかなかった。


あれは、ただのモンスターじゃない。


それは「宣戦布告」だった。


そのゴブリン・ロードは、大剣を空へ掲げ──


咆哮した。


「GYAAAAAAAAAAAAAAA!!!」




その声は、魂を揺さぶった。

木々は揺れ、鳥は飛び立ち、

俺たちは──戦いの覚悟を決めた

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。