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校外遊戯部という大義名分

 神木に迫られた地獄の時間も終わり、ほかのクラスの授業でもオリエンテーションを済ますと気づけば放課後。校外遊戯部の活動がとうとう始まることになった。

 指定された部室の扉を開き中に入ると、既に全員揃っており仲良くお菓子をつまんでいた。仲が良さそうで何より。

 しかし俺が部室に入ってくるとお菓子そっちのけで駆け寄ってくる。まるで友情など元々なかったと言わんばかりに我先にと蹴落としあっているのは見ないでおこう。女子高校生にも色々な事情があるのだ、気にしてはいけない。


「せんせ~!いらっしゃい‼」


「ね、あっちで一緒にお菓子食べよ?」


「お前ら……せめて活動っぽい事しろよ……」


 これじゃ放課後空き教室に集まってお菓子を食べるだけなのではないか……そんな心配も部長である神木の一言でなくなることになる。


「今日は活動初日ってことで、私たちがどんな活動をしていくか話し合おうと思う。冴島(さえじま)先生もいることだし」


 部長として部をまとめる神木に感動しつつ、俺も顧問として部員たちの監視をする。といってもお菓子をつまみながら話し合いをしているだけで緊張感もくそもあったものじゃないが。


「まずこの部『校外遊戯部』は校外の遊びを探求し、客層や値段、需要をその身で確かめる部だ。私たちは部活動の活動を行うにあたり、カラオケやボーリング、ショッピングモールに行くことになるけど……これは決して遊びではなく部活。よって、顧問の冴島先生は行動を共にすることが必要になると思う」


「まぁ、真面目に活動するのなら別に問題はないか……」


 放課後外で遊ぶときに俺を連れていく大義名分を与えてしまったが、生徒と長く接することが出来て嫌がる教師は実はあまりいない。大抵の教師は生徒に愛を持って接しているし、俺は生徒の事を家族として認識している。

 だから嬉しいのだが……あまり高頻度で教師と生徒が遊ぶというのは考え物ではないかとも思ってしまう。それにカラオケなどという密室空間に教師と生徒が入ってはいけないだろ、と今すぐにでもツッコんでやりたいがこいつらも年頃の女の子なのだ。節度を持った行動をするだろう。

 こいつらの教室での自己紹介を思い出して節度を持った行動をするような生徒なのか……?と疑問に思ってしまったが、何とかなるだろうの精神で乗り切ることを決めた。


「それじゃあ、今日は早速どこか行くの⁉」


「遊びなら任せてよ!私そういうの詳しいし!」


 特徴的な金髪のルーズツインテールをブオンブオン振り回しながら、莉愛(りあ)は俺の腕に自分の腕を組み、引っ張り席の近くまで誘導する。五人の中で誰よりも豊かな双丘が当たって非常に居たたまれないのだが……。


「まぁ待ちたまえ。顧問は常に部長といるべきだ」


「その理論は通らなくないかな⁉あたしはその……問題児だから先生に見張ってもらっておいた方が良いと思うの‼」


「その理論を持ち出すなら自分を見直せ」


 とんでも理論で俺の隣に居座ろうとして来る(みお)に呆れつつ、そもそも顧問なのだから五人の後ろについて見守るだけのつもりなのだが……俺も一緒に遊ぶ予定になっていないか?大人としてそんな事をするつもりはないのだが。


「わ、私は身長が小さいから先生と手をつないでおかないと」


「それを言うと僕もだね~」


「お前らもう高校生だろ」


 確かに白石もすみれも小柄で人形みたいだが、中身ははっきり高校生。あと三年で成人だしそこまで過保護になる必要もないと思うのだが。そもそも思春期の子供はそういった扱いを嫌がりそうなものだが。


「まず部員同士で行きたいところを話し合えよ。俺はお前らの後ろをついていくだけだからいないものだと思ってくれ」


「先生をいないものと捉えたらあたしたち帰りますけどね」


「仲良くしろ」


 ため息をつきながら部室の中央に揃えられた机の前の椅子に座ると、体面に座っていた莉愛がスティック型のチョコを俺の口に近づける。


「ほら、あ~ん♡」


「……流石に問題があるから。そういうのは彼氏にやってあげなさい」


 む~っと唸りながら莉愛は仕方なくチョコを俺の口の前から下げると自分の口の前に持って行きそのまま(かじ)った。

 他の四人はまるで椅子取りゲームのように俺の隣の席を奪い合うと、見事勝利した白石がピトっとくっついてきた。確か、昔もこうやって隣にピトっとくっついてきていたので懐かしい限りだ。

 えへへと声を漏らしながら、白石を足をパタパタとしている。本当に高校生か疑わしいほどに可愛らしさに溢れているが、特別扱いしないように気を付けなければ。


「それじゃあ、明日早速どこに行くか決めよう。ちなみに私はカラオケを二ボックス借りて私と先生、それ以外で気持ちよく歌うのが良いと思うんだけど」


「仲良くしろ」


「じゃあ先生が五人になってください」


「真面目な顔してとんでもないお願いが飛んできたな」


「先生が五人になっても全員あたしが幸せにするけどね~」


 盛り上がる話題が変な方向に曲がっているが、こういうのは早めに軌道修正するに限る。


「俺はどうやっても一人だ、増えることはない。変な話してないで明日の予定をだな」


「それもそうだね。せんせ~は私の魅力で振りむかせるとして……やっぱショッピングモールとか⁉」


「いや、この部の存在がまだ広まっていない以上、ショッピングモールに行って同じ高校の生徒に見つかると先生に迷惑がかかるかもしれない。まぁ、私は一向にかまわないんだけど」


 神木は俺の事を心配してくれているのか、莉愛の案を却下した。いや、さっきの授業で君結構暴走していた気がするんだけど、その件はスルーですか。

 だが確かに、一年生の間ではこの五人と俺の関係が何故か噂になりつつあるが、上級生は別だ。それに俺は上級生とは関りが薄めだ。帰宅部の生徒とはほとんど接したことがないし、その他の生徒ともたまに部活にお邪魔するときに話す程度だ。

 確かに放課後多くの生徒が集まると予想されるショッピングモールに行くのは変な噂が立ってしまうかもしれない。行くとしても校外遊戯部の名前を広めてからの方が良い筈だ。


「それなら……最初は個室付きの漫画喫茶とかどうですか?それなら客層も分かりますし、最近の流行だって研究できます」


「確かに!天才じゃんしおりん‼」


「……お前らはそれで良いのか……?」


 白石の提案に澪は親指を立てて賛同し、他の三人もこくりと頷いている。漫画が遊戯と言えるのかは分からないし、個室を借りる気満々のこいつらに俺がついていってもいいものか。

 だが仲のいい女性教師は最近部活の顧問で忙しいらしいし、顔見知り程度の女性教員は給料が発生されないのならと断ってきそうだ。

 俺は俺で漫画喫茶を楽しむことにし、明日の分の仕事も今日の内に終わらせることを決意する。白石が俺の口に無理やり飴を食べさせてくれたので、それを活力にして書類仕事に取り組むことにした。

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