嗤う人
「こいつら、怯えすぎだろ。
どんな殺し方をしたらこんなにビビるんだ。」
隣の部屋に入るなり、その1言を言って此方を見てきた。
溜息をつきそうになるがそれを抑えて、答えた。
「裏口から逃げようとするので、ドアノブに短剣を投げただけです」
「それだけでこんなに怖がるとはな。
傑作だ。」
鼻で笑いながら言う。
ふくよか男は気絶し、記者女はその場で動けずに声も出ないのか口をパクパクとしている。さっきからその調子だ。
「これ」ウミに紙を渡して来た。
「報告書だ。そこにあった事を書いておけ。
出来るだけ簡潔に。期限は明日までだ。
もう帰っていいぞ。
処理は此方で行う。」
言う事を言って、部屋を出て行った。
ウミは報告書を見つめながら、能力者塔に帰った。
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自分の部屋に入るなり、机に向かった。
ガタッと音を立てながら椅子に座る。
やらなきゃいけない事があるのに、ぼーとしてしまう。
服の上から、スイレンの刻印を触った。
「はぁ〜」とウミが嫌いな溜息をついた。
持って来た筆箱からシャープペンシルを出して、持って来たノートに走らせた。
報告書をみながら、どんな事を書くのかと。
言うなれば、下書きだ。
今やっておかないと、正確に書けなくなってしまうと。それと、出来るだけこういうのは早い方が良いだろうなと思いながら。
報告書を書き終わった時には、午前5時だった。
早起きの人ならば、起きている頃だろう。
部屋に戻って来てもう、2時半ぐらいだったので、2時間半程、椅子に座ってずっと書いていたのだろう。
流石に、手が震えている。
今渡しに行っても良いが、流石にウミも限界だったので、少し寝る事にした。
服を寝巻きに着替えようとして気付いた。
懐中時計を返し損ねていたのだ。
だが、今更後悔してももう遅い。
(報告書と一緒に渡そ。)
そして、懐中時計を報告書と一緒に置き、タイマーをセットしてベッドに潜り込んだ。
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ノックをするが、何も返事が帰って来ない。
少し待っていても、来ない。
部屋にはいないのだろうか。
「ウミさんで合ってるかな」
扉の前で待っていると、横から話しかけられた。とりあえず、返事をする。
「はい」
「僕はクラリス・セレンティアです。
報告書を渡しに来たんだよね?」
セレンティアは175cm程の身長で、ルミナラよりも少し小さい。
少し薄めの茶色髪と少し暗めの黄色の瞳だった。
「はい、合っています」
報告書をクラシスに渡す。
「ありがとう、ルミナラコマンダーに渡しておくよ」
来た道に戻ろうとするセレンティアにこれもと声を掛けると振り返る。
その顔は驚いていた。
「それって、瞬間移動できる懐中時計、だよね」
「はい、ルミナラコマンダーに貸して貰ったんですが、返し損ねてしまいまして。」
「そ、そうなんだ。
ローレンスに渡しておくね」
無理矢理笑顔を作りながら、早足で去っていった。
ルミナラコマンダーを下の名前で呼び、名称を使わなかったぐらい親しいのだろうか。
それに、何故彼処まで驚いて居たのだろうか。それだけ高いのか貴重なのだろうか。
色々と頭の中に浮かぶが、まだ眠気は残って居るので、能力者塔に戻った。
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「報告書、持って来ましたよ」
「あぁ、助かった」
ローレンスは、クラリスから報告書を受け取った。
「助けてくれっ、俺には家族がいるんだ。」
ふくよかな男が叫びながら訴える。
「はぁ〜、うっせぇな。
俺にも家族は居るわっ。
お前1人だけに家族がいると思うなよ」
頭をポリポリと掻きながらローレンスは、言い返している。
報告書を読み終わったのか、座っていた椅子から立った。
「お前等の処分はひとまず保留だ。
上に報告書を提出しないといけないからな。
じゃあクラリス、後は任せたっ」
クラリスの肩に手を1回置いて、書類を提出しに行った。クラリスにとっては、逃げたと言った方が正しいのだが。
「面倒だな〜」と言いながらも、やる事はちゃんとやる。
「先ずは、尋問からですよね」
クラリスの顔は微笑んでいた。
その目は笑っていなかったが、顔はちゃんと嗤っていた。




