9 魔導王との対峙
前方から地響きが聞こえてくる。
十数体のゴーレムがこっちに向かってきた。
この城の警備兵といったところか。
俺は問答無用でドラゴンブレス『滅びの光芒』を吐き出した。
青白い光線がゴーレムたちを一掃する。
その後も何度かモンスターに遭遇したが、いずれもブレスで吹き飛ばした。
警備兵レベルなら、今の俺の敵じゃないようだ。
そして──最深部にたどり着いた。
『この向こうに──いるわ』
と、ナビ。
『魔導王か』
『間違いなさそうね。この強大な魔力は──』
『……行くぞ』
俺は扉を爪で切り裂き、内部に入った。
内部は巨大なホールになっており、奥まで赤絨毯が続いている。
謁見の間、といった感じの作りだ。
その奥に玉座があった。
座しているのは一人の男。
まさしく王のごとき貫録を備えた、魔導師。
「こうして直接会うのは初めてだな。ようこそ、我が城へ。古の竜王よ」
芝居がかった口調で男が告げた。
「余が魔導王である」
こいつが──。
俺の全身が怒りで燃え上がった。
エレノア王国を、そして様々な国を蹂躙し、多くの人間を苦しめ、殺してきた元締めが目の前にいる。
「余もお前には会いたいと思っていた。ゆっくりしていくがいい」
『ゆっくりだと。ふざけるな』
俺の【意思疎通】スキルは近しい人間にしか効果がない。
初対面の魔導王には通じないだろうと思いつつも、叫ばずにはいられなかった。
「ほう、すでに【意思疎通】を取得しているのか。ならば、話しやすいな」
魔導王は俺の【意思】を感知できるようだった。
あるいはなんらかの魔法を使っているのか。
その辺りはどうでもいい。
『俺の方は話すことなどない。ただ滅ぼすだけだ。お前を、この世から」
『その前に話を聞くくらいはよかろう。お前にとっても有益な情報だぞ?」
と、魔導王。
これ以上何も言わず、ドラゴンブレスで吹き飛ばしてやろうと思ったが、やめておいた。
奴の妙な余裕はなんだ?
この謁見の間には奴の配下のモンスターはいない。
護衛の兵士などもいない。
奴はたった一人で無防備に姿をさらしているのだ。
いくら強大な魔導師とはいえ、エルダードラゴンまで進化した俺に対して、一人で立ち向かうつもりか?
何かが、あるのか。
それを見極めるための時間稼ぎに、会話くらいはしてもいいだろう。
「余は『最強の存在』になることを志しておる」
魔導王が厳かに告げた。
『最強の……存在?』
「神話の時代──神や悪魔さえも凌ぐ力を誇ったという七大竜王。その中で暗黒竜王は時代の節目節目によみがえり、猛威を振るっている。余はその力を得たいと考えたのだ」
魔導王の言葉に熱がこもる。
「さすれば、余は神や悪魔をも超え、未来永劫の存在となろう。魔導を極めた程度では足りぬ。人の領域を超え、あらゆる世界に君臨する絶対者となる──それが余の望み! 願い! 夢!」
『エレノア王国を襲ったのは、その暗黒竜王絡みか?』
「然り。かの王国には千年前に暗黒竜王がよみがえった際、その牙が残されていた。暗黒竜王の体の一部を触媒にし、かの者の力を得る──それが、余がエレノアを攻めた理由だ」
『暗黒竜王の牙……?』
「だが、牙は見つからなかった。余が手に入れる前に、何者かに宿り、今代の暗黒竜王の依り代として利用したのだろう」
『……じゃあ、それはまさか』
俺はごくりと喉を鳴らす。
「おそらくは、間違いあるまい。お前はエレノアに縁のある人間なのだろう? なんらかの理由で牙を宿し、そして暗黒竜王へと受肉、転生した」
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