若者
露美亜
「(いない!?いったいどこへ消えた!)」
その瞬間、嫌な感覚が背筋を通り、脳天に走った。そして…
「うグっ!!!」
「面あり!」
「2本目!!」
頭部に痛みを残したまま、妃帝露美亜と倉木梨華の戦いは妃帝の1本先取により、2本目へ突入した。
「(痛い……頭がヒリヒリする…。こんなんじゃいつも通りの剣道ができない…!)」
自分へのダメージを気にかけながら戦うのは無論、分が悪い。そのようなスリップダメージを、アドレナリンを分泌する事によってかき消そうとした倉木は、今までよりも大きな声で妃帝を威嚇し、通常よりも素早く体を動かした。さらにこの状況下にも関わらず、何度も何度も連続して技を繰り出したのだった。
「(よし!!崩した!これで!)」
倉木の猛攻により妃帝の体はバランスを崩し、それに影響されたかのように妃帝の打突部位のひとつである「小手」に隙が生まれた。これを見逃さず、倉木は隙を縫うように小手打ちを放ったが、
「(!?)」
倉木が最高の状況下で渾身の技を打とうと手を動かした瞬間、目の前から直前まであったはずの小手が消え、そのまま妃帝の姿も見失ってしまったのである。
「(これは…一本目と同じ!!!)」
倉木は咄嗟に一本目の出来事を思い出し、素早く背後に振り返り1歩下がって牽制した
「(わ……。)」
かったが出来なかった。倉木が振り返った時、それはそれはとても近くに、巨大な「カメレオン」が倉木の顔を覗いていた。恐怖と焦り、そして痛みが最高潮に達してしまったが故に起こってしまった出来事だった。それでも、目の前の恐怖を払い、精一杯の力を振り絞って誠心誠意の面打ちを放った。そんな誠意のこもった技でも無に帰す、全てを無視した面打ちが、倉木の頭部に更なる痛みを与えた。
「面あり!勝負あり!」
全校のギャラリーによる拍手と声援に囲まれながら1日目の最終戦である倉木と妃帝の戦いは終わりを迎えた。これにて2日目に進出する選手が決定し、全選手の内のたった8分の1という選ばれし剣士だけが生き残った。明日はより強く、より洗練された選手のみがぶつかり合い、更に白熱した戦いが予想されるだろう。
圧倒的な実力で2日目に進出した者、悔しくも1日目で散った者、2日目に「運良く」進出できた者も含め、それぞれの思いを胸に試合会場に別れを告げ、帰路に着く。終わりは始まりの合図だ。若者は夢を追い求め、「今日」も「明日」も奮闘する。戦いの果てにあるものは一体なんなのだろうか。その答えを見つけ、実りのある未来をこの若者たちに期待しよう。




