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グリモアレイド-A  作者: 二本針玲
9/23

君の正義を殺した日

「あっはっはっは」

本城の息子、勝見は男をガスバーナーで炙っていた。男は身体をよじりながらそれを避けようとする、だが周りの取り巻きが囲むように炙るので避けられない。身体には凄惨な傷が浮かび上がっていた。深夜の公園のトイレに悲鳴が響く。

「ひっ...許して...許して...」

「誰かぁ!助けてくれ!」

男は叫ぶ、勝見が口に蹴りを入れる。男の歯が何本か折れ、口から歯の破片が落ちる。

「あっはっはっは、そんなの来るわけないじゃん」

取り巻きの女が吐き捨て、ガスバーナーの火力を上げる。男はあまりの痛みに気絶してしまう。

「だってうt」

女が喋らなくなる。それと同時に周囲に生暖かいものが飛び散る、勝見達が不思議そうにそちらを見る。

「勝見さん、貴方にも裁きを受けてもらいますよ」

女の首を持った日元が立っていた。顔には貼りつけたような笑みが浮かんでいた。

「しょうk」

信行が魔法を唱えるよりも早く日元は信行の胸に左腕を突き刺す。信行は腕を抜こうとするが、健闘虚しく死んでしまった。残った取り巻きが魔法を発動させようとする。日元は二人の首を残った取り巻きに投げる、そして二人を手刀で切り裂く。二人は噴水のように血を出して死んだ。

「残るはあなただけですね」

「は...」

一歩も動けなかった、一瞬で全員を殺しやがった。俺の力にあやかりたいだけの奴らだったから何とも思わなかったが、この流れだと俺も...こいつに...いや、この男見たことがあるぞ...

「あんた、刑事さんか?」

「はい正解です。あなたにも贖罪を与えたく参りました」

「は?何言ってやがるんだ...」

日元が茫然としている勝見に迫る、勝見は距離をとる。

「かm」

得意の雷魔法を唱える前に日元に口を塞がれる。

「なんてな」「雷魔法 紫電の檻」

魔法が発動する

「なるほど、口生成(こうせいせい)ですか。ですが」

日元はものともせず勝見の太ももを握りつぶす、勝見は崩れ落ちる。悲鳴をあげようとするが、すぐに口を抑えられてあげられなかった。

「あなたの贖罪はそのままそこで失血死することです」

「ですが、あなたの発言次第では贖罪は軽いものになるでしょう」

「助けを乞えば即座にあなたを一番つらい方法で殺してさしあげましょう」

日元が笑う、だがその笑みは死んでいた。足の痛みがずきずきと痛む、それに出血がひどい。自分の中の大切な何かが消えていく気がする。

「たっ...たすけて...」

漸く捻り出した言葉がそれだった。日元はそれを見据える、

「あなたがこれまで手にかけてきた人達も同じことを言ったんじゃないですか」

「し...しるかそんなの!刑事さん...いや日元さん!助けて、そうだ親父に言って昇進させてやるよ!金だって地位だって女だってなんでもくれてやる!だから」

「そんなもの要りませんよ...それに」

「そのようなことをしても罪は軽くなりませんよ」

「へっ?へっ?」

勝見は混乱していた。眼は世界新を取れそうな勢いで泳ぎまわり、全身は小刻みに振動していた。分からない分からない。これまでの奴らは欲しいものをやったり親父の名前をちらつかせるだけで言うことを聞いた。でも目の前の人間はそれができない。なんで、なんでなんでなんでなんで

「なんで!なんで!パパに言いつけるぞ!」

勝見の精神は幼児に帰った。

「あなたには罰を与えましょう」

そう言い、日元は勝見の目の前に人差し指を置く。嫌なよか

ずぶっ

「あああああああああああああああああああああああああああああ」

勝見は永久に光を失った。日元は指を引き抜く。

「どれだけ騒いでも届きませんよ、ここは人里離れた公園。誰もあなたに気づかない」

日元は言い残し、外に出る。外の冷たい風が日元の頬を撫でる、だが日元にはそれがとても暖かいもののように感じられた。

「凛、俺は正しいんだよな...」

日元が懐から写真を一枚取り出す、唯一の友人だった。凛との写真、



「そっかーカゲはほんきなんだね。じゃあぼくはカゲを助けられるようなひとになるー!」

「ほんとー?じゃあたのしみにまってるね!」

幼い頃、野原で二人で笑って交した約束。果たされなかった約束。



それが頭にちらつく、

「でもな凛、これは仕方のないことなんだよ」

そう言って写真を懐にしまう。この言葉は凛への言い訳なんだろう、死んでももう凛には会えないな。日元は俯く、これから何をしようか。まずは証拠を消さなければ。

「お見事、さすがは正義の代理人だ」

殺したはずの男が起き上がる、男の顔の形、体の形が変わっていく。日元はそれを見つめる、確かに殺した感触はあった。なのに何故生きている...犯罪者だろうか、しかしこんなやつどの書類でも見たことがない。

それに邪気が感じられない、こいつは一体何なんだ。

「僕はレイブン、僕はちょっと特別でね。こんなんじゃ死なない」

レイブンはそう言って日元にステップして近づく。

「日元警部、かな。君の肩書」

「よく調べましたね」

日元が口角を吊り上げてみせる、それを見てレイブンは少し笑みを浮かべる。

「まってまって物騒なことをしにきたんじゃないんだ。君の計画に協力してあげようと思ってね」

「君の心意気は素晴らしい、だが計画がずさんだ」

「はぁ」

「僕の力を見せてあげるよ」

そう言いレイブンは気絶している男の頭を掴む、

「君は今日ここでなにも見なかった。君はたまたま料理に失敗してこんな傷を負ったんだ、そして数メートル先で一度転倒する」

レイブンが言い終わると男は眼を開き、歩き出した。そして数メートル先で転倒し、また歩き出す

「僕は記憶を操ることができる、君の役に立てると思うけどどうする?」

「そうですねぇ...こちらとしても協力していただきたい。口封じをする手間が省けますからね」

日元が笑って言う。だが語調にはそれを実行する力がこもっていた。

「それでいいよ、でも僕の組織の仕事もしてもらうよ」

「君の組織の仕事...」

「多分君が今後狙うであろう人を殺してもらうだけだけど」

レイブンが髪で遊びながら話す。

「分かりました。君の組織に協力しましょう」

日元は言い放ち、レイブンに付いて行く。今はこいつについていくのが賢明だろう。悪であれば裁きを下せばいいだけの話。

「多分処理がいるのは警視正の家だよね」

レイブンは言う、日元は空を見上げる。

凛、今日から俺が自警団(ビジランテ)

そう呟き、日元はレイブンとともに夜の闇に消えていった。



「ああ、たすけて...」

もう勝見は叫ぶ気力すら残っていなかった。足から出た血が足元に池を作っていた。それをただぼんやりと見つめていた。吸い込まれるような錯覚を覚える。最初は周囲から虫のなく声が聞こえていたがだんだんと聞こえなくなってきた。その代わり、走馬燈というやつだろうか頭の中に”遊んだ”奴らの声が残響する。

「やだ...しにたくないよ...」

勝見は呟く、もう音は何も聞こえず、あそんだやつらのこえだけが全てをしはいしていた。ゆるして、なんでもするから。すきなものをなんでもあげるからころさないで、たすけてください。

「やだやだやだやだやだや...やだやだ...や......や.........やだよ............あ.................」

声の間隔が長くなっていき、ついには何も発さなくなった。

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