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速攻でログアウトですが

 小さい頃から、姉達のようにキラキラした洋服を着て、綺麗な男性に優しくされたいって思ってた。末っ子って本来甘やかされて可愛がられるものだと言われたのは、同じく末っ子で可愛い友達ができてから。それに対して私は衝撃を受けた。全員が全員そうではないとは思っても、その子は自分が憧れるキラキラした洋服を着てたからかもしれない。


 なぜなら、うちの父親が息子が欲しくて欲しくて、5人連続して娘しか出来なかったことで、最後の娘を男の子として育てる!っと宣言して実行してしまったから。止めろよ、母と姉よって思うんだけど、姉達も弟が欲しかったらしい。そのため、柔道をやってた父親の手ほどきを受けて、むきむきのゴリマッチョな女子になってしまった末っ子が私だ。

 姉達は、線の細い今時女子。みんな姉達を見てから私を見ると、え?!って顔をするほど、鍛えられてしまった顔はごつくなってしまった。でも、姉達と暮らしていれば、女の子らしいものが欲しくなるんですよ。可愛い洋服に可愛いぬいぐるみ、自分には似合わないってわかってても。

 そんな姉達も、末っ子がかわいそうに思ってくれたのか、家の中でだけ着るにはいいんじゃない?って言ってフリフリの服をプレゼントしてくれたけど、外に出歩く勇気はなかったし、止められた。というか、姉の一人がロリータだったから、お下がりで着せてもらってただけともいう。ぶっちゃけ自分も女装したごつい男みたいになってる自覚はあったけど!でも、着てる自分の姿は見えないしね!

 何よりも、姉達のように男性にちやほやされたことがない、女子からはかっこいいとか王子様とか言われてたけど。違う!かっこいい男子に一度でもいいから可愛いって言われて見たいんだよ!ゴリマッチョって言われるんじゃなくって姉達みたいに!可愛いね、お姫様って!

 そんなことを悶々と思いながら、ムカつくことを言った男子を背負い投げでぶっ飛ばし、乙女な私は心の中で泣いたものです。


 だから、次生まれ変わるときは、線の細い可愛い女の子にみんなにちやほやされて見たい。お姫様みたいにふわふわなロングスカートを着て、可愛いヒールの靴を履いて可愛いアクセサリーをつけて!お部屋もピンクにしたい!そんでもって、もう少し普通の女の子らしい体力で生まれて見たい!



 そんなことを願ったおかげか。生まれ変わった私は可愛い女の子になってた!!ビバ!輪廻転生!!!思わずガッツポーツですよ!!


「きゃー!」

実際は、ちっちゃい可愛いおててがあがってるだけだけどね!


「あら、セシルはご機嫌ね」

赤い髪に緑の瞳の綺麗な女性は、今生の母!私をお姫様みたいな白いフリフリのお洋服を着せてくれる女神!!よしよしって抱っこされている私は、まだ生まれたてほやほや〜数ヶ月!だと思う!そう、転生先はなんだか髪の毛がカラフルなんです、瞳の色も肌の色もね!


「あーうー!」

 そして、私は今赤子なの!でも着ている服は、白いレースがついたフリフリ!!鏡に映る私は、ふわっふわな赤みが強いオレンジの髪の毛に、クリックリの緑の瞳!可愛い!天使顔!これは、可愛い服が似合う顔!!

「可愛い私のお姫様」

 そう言ってお母様は私のほっぺたにキスを送ってくれる。それがこそばゆくって嬉しくって思わず歓声をあげれば可愛い声が口から出た。

「きゃー」

いいねいいね!これは、もう理想の女の子になれますよ!可愛いものに囲まれて可愛い格好をするんですよ!でもってかっこいい彼氏を作るんだ!


「お母様!!!セシルは!!」

 ドタバタと音を立ててて駆けつけてきたのは、お兄様たち。なんと、今回も私は末っ子。お兄様が4人いるのですよ!あっはー!これは父親に鍛えられるフラグはないね!可愛い末っ子お姫様だね!まちがいないね!


「ご機嫌にお目覚めよ。私の王子様。ちゃんとおててを洗ってらっしゃい」

 そうお母様が優しく言えば、貴族服なのに泥だらけのお兄様達が元気よく返事をして駆けていった。その後をメイドや従者達が叫んでるけど。やっぱり男の子は貴族でもヤンチャみたいですね!


「ふふふ、元気なお兄様達ね」

「ぁー!」

 本当だね!そして、このあとはお兄様達による私の取り合いになるんだよね。唯一の女の子!我が家のお姫様だから、可愛い可愛い言ってもらえるしね!


「可愛いな〜セシルは」

「兄しゃま。僕も抱っこしたいぃ!」

「プニプニほっぺー可愛い」

「順番だろ!早く」


 これが俗に言うモテ期!!ビバモテ期!!かっこいいお兄様達のとりあい。お兄様達は上からアランお兄様、9歳、ウジェーヌお兄様6歳、エドガーお兄様4歳、ジョゼフお兄様3歳。アランお兄様と、ウジェーヌお兄様の髪の毛は赤からオレンジへとグラデーションがかかった不思議な色合いの髪の毛で、エドガーお兄様は真っ赤な髪の毛、ジョゼフお兄様は私より赤みが薄いオレンジ色。みんな瞳は緑色でお揃いなのよ。


 替わる替わるお兄様達に抱っこされながら、兄弟の中で一番小さい、ジョゼフお兄様が抱っこすると、背後から支えるようにアランお兄様が一緒に抱っこしてくれた。まだ力が弱いから不安でジョゼフお兄様の腕の中は怖いのよね。

「ぼく。ひとりで、だっこしたい」

「ふふ、そうだね。でも、お姫様は好奇心旺盛だから、ジョゼフの腕の中で動き回ったら支えきれないだろ?」

「むー」

「だー!」

 そうだね!まだまだ無理だよ!っていうことを伝えるべき手足をバタバタして遊べば、ジョゼフお兄様が驚いた。めっちゃ優しいアランお兄様が下からちゃんと支えてくれてるので安心、そして本当かっこいい。

「セシルご機嫌!」

「そうだね。」

「きゃーー!」

 そうだよ、毎日ご機嫌ですよ!私の気持ちを伝えるべく、一生懸命喋るけど、まだ赤子!あうあうしか喋れないけど、みんなニコニコ笑顔で見てくれる。そん仲の良い兄弟を、部屋の中で待機してる侍女と従者達も微笑ましそうに見ていて、本当生まれ変わった先も幸せだ。


「ねぇねぇ、アラんおにぃちゃま、セシルはいつ一緒に剣できる?」

 ん?ちょっとジョゼフお兄様が不安なことを言ってきたぞ。まって、女の子だから剣なんてやらないよ?せっかく可愛く生まれたんだから、ここは女の子らしくダンスとか、楽器とか極めるんだから。

「そうだね〜。ヨチヨチ歩きできるようになってからかな」

アランお兄様?!何を言ってるのかな?

「そうだね、ジョゼフのときは、剣だけは8ヶ月めくらいで持ち始めてたしね。」

ウジェーヌお兄様がさらっとすごいことを言ってきた。

「ていうか、持たせないとギャン泣きしてたからだろ。セシルが興味を示してからでも良いんじゃない?」

エドガーお兄様ないす!興味なんて持たないから大丈夫!私は女の子らしく儚いお姫様系になる予定なんだから!横で兵隊さんのお人形並べて遊ばれたって参加しませんからね!



 そんなことを思っていた時期がありました!


 よちよち歩きが始まり、子供部屋で動ける範囲が広がりました!そして、おもちゃ箱の蓋にてが届くようになりましたよ!さすが金持ちな感じのお家。いっぱいおもちゃが入ってるぜ、一部壊れてるのもあるけど、これは兄弟あるあるですね、お下がりだね。で、漁っているとなぜか、遊び道具に剣や弓、縦があるのかな?もちろん、ちゃんと子供用にツルツルな手触り、誤飲誤植できない程度の大きさになってるけど。お人形が、兵隊とか馬だし。

「にゃい」

可愛いお人形がない!どういうこと?!思わずぷくーっと頬を膨らませながら、今度は絵本の場所に移動する。そこに置いてあるのは、さすがに女の子向けの絵本もちゃんとあって、見ればやっぱり女の子がドレスを着たお人形を抱っこしている。やっぱり、この世界にもお人形はあるはずだ、その女の子の周りにはうさぎもクマも謎の可愛い生き物もある。

「どうしたの?セシル」

首を傾げてる私に気づいたアランお兄様が声をかけてきた。お勉強終わったんだね!遊んでくれる時間ですね!

「ない!」

まだ、単語しか発音できないから、絵本のお人形とおもちゃ箱を指差して訴えてみました。

「ない?どれどれ」

私のみてる絵本を除いてみれば、あぁっとうなづかれた。

「確かに、我が家にはないね。男子ばっかだし。セシルは欲しいの?」

「ほちい!」

全力でね!!

「そっかぁ」

お兄様が抱っこして、歩き始めた。どこに行くのかな?たどり着いたのは、お父様とお母様が休憩しているお部屋だった。

「どうした、アラン。我が家のお姫様をつれて。勉強は終わったのか?」

「はい、お父様。勉強は終わりましたよ。セシルがお人形欲しいって」

「人形ならたくさんあるだろ?」

「あれは、僕たちが遊んだお人形で、女の子のお人形じゃないよ。セシルはこのお人形が欲しいらしいんだ」

そう言って、絵本をお父様に見せた。

「・・・」

「そういえば、我が家には女の子らしいお人形ないわね。」

お母様が覗き込んみながら呟けば、ふと私と目があった。

「?」

「セシルが欲しいっていったの?」

「はい、言いましたよ?ね、セシル」

「あい!」

お兄様が答えてくれたけど、お母様は不思議そうに首をかしげてお父様を見た。

「ねぇ、あなた」

「ん〜君が言いたいことがなんとなくわかってしまったよ。」

「母上?」

「セシルは今までジョゼフとエドガーが遊んでも興味を示さなかったから、お人形には興味がないと思ってたんだけど。」

 お母様が不思議そうに首をかしげてきた。じーっと見つめられて、何か怪しんでるんだけど。どう言うことかな?だってお兄様たちの遊びに参加したら、絶対剣とか弓持たされて遊ばれる、そのまま男の子の遊びになる、またムキムキに成長しちゃうって思うじゃない。

「ま、ママ」

「息子たちと違って、セシルは手がかからないのよね。ばあやもそう言ってたし、周りの侍女達も」

「そうだね」

お父様が何故かうなづいた。

「セシルは風邪を引いてから大人しくなったね」

そう言いながら、お父様が私を抱っこした。

「今のうちに調べておくかな」

な、何をですか?お父様。


深刻な表情をする両親に不安げに見上げていれば、他のお兄様が乱入してその日はうやむやになってしまった。でも、その続きは数日後、両親に連れられてきた協会で判明した。


「「前世の記憶?」」

お兄様たちの驚いた声が協会の祝福の間に広がった。私は、白いローブを羽織っているおじさんに乗せられた台座の上からぼけっとしてる。だって、いきなり自分が前世の記憶があるってバラされちゃったんだよ?!なんなのこの台座!いきなり乗せられて、なんかおじさんが呪文を唱えたら周りに前世の映像が流れて消えたんだよ。


「やっぱり、前世の記憶が」

お父様とお母様はわかっていたようで、困惑した顔をしていた。

「それで、娘の成長に影響はあるのか?」

お父様がおじさんに聞くと、真剣な顔でおじさんがうなづいた。

「えぇ、ちゃんと綺麗に魂が浄化されずに転生をしたようです。記憶と感情、理性全てが残っているようです。何かしら影響はでるでしょう、性別は前世と同じようなので、そこは問題ないようですが。どうされますか?」

そこまでわかるのか、魔法すごいな。ちょっとまって、成長に影響ってどう言うこと?めっちゃ不安だよ。

「ママ?パパ?」

怖くて両親を呼べば、お母様が私の手を握ってくれた。


「全てを封印したら、どうなりますか?」

えええ、お母様封印ってもしかして今の私や記憶をってこと?!

「そうですね、今どれくらい理解しているかわかりませんが、行動は変わる可能性があります。・・・一番良いのは、前世の感情と理性を封じることです。記憶まで封印すると、何かの拍子で戻った時に、成長した感情や感性、理性が崩れてしまう。」

 真剣な表情でおじさんが答えると、お母様が不安げにお父様をみた。

「それなら、神聖魔法師殿。前世の理性と感情は封印してください」

つまりどう言うことだ?理性と感情が封印するとどうなるんだろう、よくわからず首を傾げてると、神聖魔法師殿って呼ばれたおじさんが私の両手をとった。

「いいですかね、セシル姫」


「・・・ほえ?」


「今から、セシル姫の前世の一部を封印します。セシル姫が生まれる前の知識をお持ちでしょう?これから生活していく上で、過去に持っている感情は姫の成長の妨げになってしまいます。」


「しゃまたげ?」

「はい、常識や感情はその場所にあったもので成長するものなのです。だから、それを一部封印しますね。少しだけ眠ってもらう感じです。」

「セシル、おねんねしちゃうの?」

私という人格はどうなっちゃうの?死んじゃうってこと?なんだか、真っ暗な闇を思い出して怖くなった。震える私の頭をおじさんが撫でながら優しく言った。

「いいえ、好き嫌いが少し変わるだけです。」


「かわる?」


「はい。お兄様達が良いなって思うものがわかるようになるだけですよ。怖いなって思うものや、美味しいって感じるものとかね」


「あい」

どういうことだろ、つまり日本人的な感性が封印されるってことかな?

「では、封印しますね」


そう言って、優しくおでこにふれて、胸、肩、両手に触れていくと、ふんわりとした光とともに何かが収縮してキュッと消えてしまった感じがした。


「ふぇ・・・」


なんだかそれが悲しくって、後ろを振り返れば、ママとパパが心配そうにこっちを見てる。

「ご両親の元に行って大丈夫ですよ」

そう言って、台座から降ろされた、さびしくて私は駆け出した。

「ママ、パパ」

「セシル、大丈夫よ。大丈夫」

ママが背中をトントンして落ち着かせてくれた。それでもなんだか、心の中がきゅーってして寂しい。

「ママ、キューってする。」

「そう、今セシルの前世を少しだけ封印しちゃったから寂しくなっちゃったのね。大丈夫よ。」


「じぇんしぇ?わかんない。ママーしぇしるわかんなくなった」

 さっきまでわかってた事が、全然わかんなくなっちゃった。ぜんしぇがふういんされちゃったからかな。でもいっぱい知らないこと知ってるのはわかるの、よくわからないことはたくさん。


「たぶん、今日は熱がでるかと思います。日常生活で、我々が知らないことを聞いてきても、変な目で見ずに受け止めてください、全てを封印しているわけではないので、前世の記憶と混同している可能性もあります。あと、なるべく、周囲には漏らさないように。」

そう、神聖魔法師が言うとセシルの両親はうなづきました。

「お前たちもわかったね。」

セシルの父親が言うと、兄達も困惑した表情でうなづきました。


 その日の夜、セシルは神聖魔法師が言ったように熱を出しうなされ、心配した両親と一緒に寝ることになりました。熱くてだるい中、それでも大好きなママとパパと一緒に寝てもらえてセシルは、なんだかふわふわのポカポカで怖かったのも忘れてぐっすりねむれました。


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