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第一章.9

マレフィさんは僕のお礼を聞いた後、ドキリとする様な満面の笑顔で仕事を進めだした。

『私の気が済まないからしっかりと終身サポートさせてもらうわ!! 』と言ってかなり気合が入っている。

今は僕の体と英雄の新しい身体についてだ。

「非常に簡単に言うと、本来であれば肉体と心、つまり魂は別物で、肉体に魂が入ると、その魂に応じて肉体が変化するの。だからぶっちゃけると、魂さえ残れば後は肉体を用意するだけで何回でも再生できるわ。といっても魂を扱えるレベルの術者なんて滅多に生まれないけど。私達ならともかく、人類で使えたのは数人だけね。それも世界創生レベルの時代だし。と言う訳で絶対に死んだら駄目よ?

もし死んだら、魂を回収して、私色に染め上げて愛玩用にするからね?」

僕を直視して言ってくる。ああ、この目は本気だ。現代で何度も目にしたから分かる。

英雄は特に気にした風も無く質問した。

「魂と肉体については分かった。それとこいつが戻れない事とどういう関係が?」

そう、僕も聞きたかったのだ。向こうに行くのを決めたとはいえ、知れるなら知っておきたい。

彼女は笑顔で頷くと答える。

「良い質問ね。

本来魂はその世界ごとに生まれるわ。だから二人の魂をファンタジー用の肉体に入れても現代用の肉体に変質するの。

そこでアザルストの大馬鹿は遊馬君の魂に直接手を加えたの。と言っても中身を変えたりしたんじゃなくて、あの世界用に形を変えただけね。その時に性別も弄られたの。

そしてこれは魂に大きく負担がかかるのよ。同じ事をやると魂が崩壊して廃人になるわ。

そうね、良くて即死、悪くて神々が救済できないぐらい転生の輪から外れて永遠に苦しみ続けるわ。

正直私も経験が浅いからやりたくないけど・・・・・試す?

今まで3回やって、1人が成功1人が即死、1人が逝ってしまったわ、ギリギリで転生の輪に連れ戻したけど。実力派5柱がかりだったわね。私も含めて皆もう二度としたくないって言ってたわ。だってあれ、助かったの奇跡だったし・・・・」

僕は力強く首を振り断る。力のある神々が頼った奇跡ってなんですか?

その方何者ですか?

「で、英雄君の魂はまだ真っ新だからファンタジー用には余裕で作り変えられて、遊馬君は形が近いから荒業で何とかなるのよ。安心して、これは初めてだけど余裕だから。今度は実力派6柱で挑むし失敗は無いわ。」

「つまり失敗はしなくても6柱で挑まないといけない何かが有るんですね? 僕の魂には何が仕掛けられているんですか?」

唯の直感だった。理由は無い直感が聞いておけと叫んだのだ。

「・・・・正直に話すとね、アザルストの奴、遊馬君の魂に色々とトラップを仕掛けて行ったのよ。解除に失敗するとあいつに居場所がバレたりとか、盲目的に好きになるとかね」

ちょっと待ってください!! なんですかそれ!?

僕は驚愕で固まった。

「一番拙いのが、1日1回あいつに抱かれないといけなくなる呪いよ。さすがのあいつも私たちクラスが対応するとは思っていなかったらしくて、解除は出来るんだけど一応保険でね。」

いつでも始められるというマレフィさんの言葉に僕は、力なく頷いた。頷くしかなかった。


それから協力してくれると言う神様達が部屋というか光の中にやってきて紹介を受けたのだが、皆パッと見は恐ろしく人間臭かった。見た目は気さくそうなお兄さんとお姉さんで、マレフィさんと挨拶もそこそこに仕事の話を軽くして、儀式を行う事となった。

僕はすぐに眠らされて他の部屋に運ばれ儀式が行われたらしい。起きた時は元の場所で、隣にいた英雄に聞いたら起きるのを含めて3分無かったらしい。神様達が笑いながら時間軸がどうのとスケールの違う事を言っていたのを聞いて神様なんだと理解した。

結果は無事終わったらしい。終わった後に僕は泣きながら皆さんにお礼を言った。その中で口々に『マレフィに何かされたらすぐに連絡してね。』と言われた。

良かった、この人たちはアザルストとは違うようだ。


全員が出て行ったのを確認するとマレフィさんは手元の書類に上から目を通し、一呼吸置いて言う。

「さて、主要なものはこれで終わりね・・・・

ではでは、神様付属の転生物でお約束のスキルを選びに行って見ましょうか。」

僕と英雄のテンションが一気に上がる。ファンタジー世界にレベルは無いらしく、戦闘では純粋に戦いが上手いほど、魔力操作が上手いほど強くなるらしい。

スキルは才能で持って生まれたものだそうだ。現代人も持つらしいが、社会的に上手く発掘が出来ず、最近はピタリとはまった人以外は死蔵しているらしい。

(戦闘系なんて平和な世の中じゃ使わないもんね。)

見る事が出来るのは神様ぐらいらしく、他は頑張っても大体の感じを掴めるだけだそうだ。皆いくつか持っているらしい。


「魂を弄る関係で英雄君から先にするわね。」

そう言って彼女は青色に美しく光る正八面体の小石を取り出した。

それを英雄に渡して真剣な顔で頷く。

それを見た僕と英雄に衝撃が走り、お互いに顔を見合わせて小石を見ると、それはまごうこと無きサイコロであった。

「「 ま、まさか? 」」

2人とも驚きを顔に張り付けながらゆっくりとマレフィさんを見る。

彼女は顔を逸らしながら申し訳なさそうに言う。

「想像の通りよ。スキルは出目で決めてもらうわ。

で、でも安心して。出たスキルを私達で強化する予定だから!!」

慌てて付け足す彼女に僕達は何とも言えない視線を送り、顔を見合わせて頷く。

「じゃあ、先に行ってるぜ。」

そう言って覚悟を決めた英雄はニッっと笑ってサイコロを振った。

そういえばこれ出目は見えないんだね。

英雄にも見えていないらしく、止まったサイコロを見て困惑している。

マレフィさんは驚愕しているがどうしたのだろう?


そんなことを考えていると武門を司るという男の神様が現れ説明してくれた。

「すまねえな坊主、嬢ちゃん。さてお前が引き当てたスキルだが、前衛職向けで完全に戦闘特化の物だ。実を言うと、これで出るスキルは大した事ない。だからこれを種として俺達が強化するんだが、元からどれをどうするってのは決めておいたんだ。

んで、坊主に割り当てられるのはこれだ。」


武神様が1枚の紙を見せてくれるそこにはこう書いてあった。


【闘術】

流儀も流派も無く、だた戦う者の為にあるスキル。

あらゆる武器が馴染む。

格式のある戦いでも、蔑まれる様な戦いでも、一切関係なく更に闘う者の為にあるスキル。

戦いに次ぐ戦いを求め、勝利も敗北も関係なくただ戦う事を喜びとし、戦う事を宿命付けられた者が背負う。

過去の保持者は皆戦闘に狂い、血を求め、戦場を転々とし敵味方問わず怖れられる存在となった。だが戦いで死んだ彼らの顔は皆満足そうな顔をしていた。

このスキルは補正が掛るだけであり、本人が正道を行くのであれば味方から賞賛される物である。


【食いしばり】

即死でなければ不屈の心で致命的なダメージを耐える。

ただし治療が間に合わなければ帰らぬ者となる。


【底力】

死に近づくほど力が漲る。


【戦雲】

この所持者あるところに乱あり。

とまで言われる不幸な奴。

だが平和な場所では発動せず、火種があり、2月以内で解決出来ると判断されると、たとえ国家間でも争いを呼ぶ。

所持者が強く望めば不発にもできる。

負け戦にどうぞ。


【闘神の加護】

自らが傷つけた相手の血を浴びれば浴びる程、身体が強化される。効果時間は約1日。現在の自分で扱いきれる力量を超えると自動的に吸収が止まる。最大は2倍。

被った血のランクにより上昇率が変わる。


それを見て英雄は僕に聞いてくる。

「これは、当たりなのか?」

僕は複雑な顔で答える。

「間違いなく狂戦士だけど、正道を行くなら・・・・勇者だよ。うん。

でも全ての武器が使えるって優秀じゃないか。僕達は戦う術なんて知らないから丁度いいよ。たぶん剣術とかそういう近接スキルが出てたんじゃない?」

そう言って武神さんを見ると頷いた。だが、何故か凄く嬉しそうだ。

「予定ではそのスキルセットは1つしか無かっのだが・・・・小僧、やはりお前は才能が有る。」

僕達が首を傾げると、

「スキルは本来自分に合ったものや、今までの行いから選ばれる。これを引き当てるという事は後の世で伝説に語られるほどの戦士となるかもな。それとそのスキルを手に入れた段階で体は向こう用になっているから安心しろ。では、良き戦いを期待しているぞ?」

そう言って笑いながら出て行った。

「ねえ英雄。」

「なんだ?」

「僕のスキル次第だと足引っ張るかも。」

僕は間違いなく強スキルを引き当てた親友に申し訳ない気持ちでいっぱいになる。

「まだ決まってないから気にするな。それと・・・・・引かないでくれてありがとう。」

そう言って微笑んでくれた。そしてマレフィさんがゆっくり動き出す。

「まさかそんな物騒なもの引くなんて、あなたあのまま現代社会に残ったら、生きて行けなかったんじゃない? 武門関係の奴らはともかく、私たちは全員枠合わせの為だと思っていたもの。今なら分かるわ。あいつらこれを引くの確信してたわね・・・・後始末する私の身にもなれ。」

マレフィさんは疲れきった顔で溜息を吐いて、僕に英雄と色違いの赤いサイコロを渡してくれる。青いサイコロはいつの間にか消えていた。

「投げる前に1つだけ。さっき言われたように、スキルはこれまでの行いでも選ばれるけど、あなたは魂を歪められた影響が出るわ。どんな結果が出ても心を強く持ってね。」

なんで今そんな意味深な事を言うんだこの人は?投げたくない。肩に手を置いてくれる英雄の優しさが嬉しい。覚悟を決めよう。

僕はサイコロをやさしく転がした。

止まったサイコロは淡い光を放ち消えていく。そうか、英雄のもこうやって消えたのか。

マレフィさんは僕と目を合わせてくれず、紙だけ渡してきた。

振り直しは駄目なんだろな。


【召喚魔法】

超常のモノを召喚する事ができる。召喚されたモノの力は術者の技量に大きく左右される。

非常に強力だが、召喚相手と波長が合わなければ呼び出すことは出来ない為、非常に扱い辛く人気は無い。

社会でも冷遇されている。


【リンク】

契約を結んだ召喚獣と魔力的に繋がる事で身体能力が上がり、傷の自然治癒力が高くなる。

相手から力を譲渡されると自分が、自分から力を譲渡すると相手の能力を底上げできる。

譲渡した側は大きく能力が落ちる。


【神の器】

肉体自体に影響はないが、髪の毛一本から爪の先まで凄まじい魔力を備える。

これらを材料に作り上げた物は性能が飛躍する。

過去に血肉が不老不死の材料と言われ乱獲の末に絶滅した。

実際に不老不死の効果は無く、あるのは滋養強壮であったのだが誤った情報が広がった事で悲劇を招いた。

非常に美味。


【ヒロイン+】

補助と回復の魔法が使える。

悲劇に見舞われる確率Up

男に言い寄られる確率Up

これから先の行動で若干変化が起こる。

例)悲劇のヒロイン 悪女 など。

通常より効果が高い。


【トラブルメーカー+】

本人が望んでも望まなくてもトラブルが向こうからやってくる。

神に愛された残念な者に贈られる。

通常より効果が高い。


【芳香++】

自分と波長が合う相手に対して香しい香りを放つ。

それは相手の心を落ち着けたり、ケダモノにしたりと様々である。

効果は相手の気持ち次第であり、相手の好む香りを発する。

本来であれば受け手の承諾が必要なのだが強化された事により、効果は低いが常時発動する様になっている。

通常より効果がかなり高い。


【誘惑+++】

自分と波長が合う相手に対して誘惑を行う。

保持者の動作1つ1つが非常に蠱惑的に見える様になる。

本来であれば受け手の承諾が必要なのだが強化された事により、効果は低いが常時発動する様になっている。

通常より効果がとても高い。



英雄が言い辛そうに僕を見る。

僕は涙を流しながらマレフィさんを見た。

マレフィさんは沈痛な面持ちで口を開く。

「プラスが付いているのがあの男の置き土産よ。」

言われなくてもわかる。

「僕はこのバッドエンドしか見えないスキルでどうやって生活したらいいの?」

そう、問題はこっちだ。僕は涙を溜めて英雄を見る。

とっさに顔を逸らして答えずに、彼は聞く。

「なあ、マレフィさん、一応確認なんだが、このスキルってもう効果は発動してるのか?」

僕は怪訝な表情で英雄を見てからマレフィさんに視線を移す。熱っぽく僕を見る彼女の喉がゴクリと動き答える。

「言うまでもないでしょ?もう発動済みだし振り直しはできないわ。耐えて。」

僕は首を傾げる。

「やるだけはやってみる。」

英雄が悲痛に頷くのが良く分からない。

マレフィさんが目をつぶり一呼吸置いて真面目な顔になり話す。

「分かっているとは思うけど、行き先次第で間違いなくあなた以上に戦乱の種となるわ、傾国の美女なんてレベルじゃないわね。こちらでも手を打つけど・・・・・守ってあげて。

それと頭で意識をする事でオンオフを切り替えられるから覚えておいて。今は発動中。」

その言葉を聞いた英雄も目をつぶり何度か深呼吸すると

「ああ。」

と力強く頷き僕を見る。

「もう大丈夫だすまないな。その誘惑系のスキルなんだが、今俺に発動していたんだ。効果だが、触れる所に居たら正直危なかった。もう一度言っておく、絶対に男と二人になるな。冗談抜きで襲われるぞ。それは相手の本能を狂わせる。」


その言葉を聞いて僕はやりたいことが終わったら誰も来ない山奥で静かに暮らそうと心に決めた。ファンタジーなんだし、願いが叶う大瑠璃とか無いかな?

瑠璃よ、大瑠璃よー、僕の願いを叶てください。


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