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第二章.7

「そいつが鬼か。想像と違うな。」

「初めまして、フロウと申します。」

「ヤナギの昔話に出てくる妖怪だったよな? どこからどう見ても人間だぞ。見慣れない人種と言っても通用するな。」

丁度隅で休憩していた英雄達を見つけて、とりあえずの紹介を済ませる。

召喚魔法使いである事を公表すると言ったら、笑って頷いてくれた。どうやらこいつもイヴァンさんから話を聞いていた様だ。

「うん、もっと見るからに鬼って想像をしていたから驚いたよ。」

周りから送られる好奇の視線が少し恥ずかしいが、2ヵ月ほどの付き合いになると、侮蔑されるような事は無かった。

それよりも、どうして手数で劣る僕達があれだけの成果を上げていたのかを納得され、少しだけだが召喚士の地位向上を図れたのかもしれない。

その後の話で男性陣はフロウの実力を確認してから連携の確認をし、僕達は楽しい基礎練習を行う事にした。


「また基礎だけど、さっきの召喚を考えると必須なんだよね・・・・」

僕が溜息を吐いてぼやくと英雄が反応した。

「そういや俺が見たのって結局ルルだけだが、他の皆は違ったのか?」

首を傾げる親友に僕は笑って答えた。

「基本的には変わらないよ。呼び出す時の見た目が少し違うだけなんだけど、今回は結構大変だったんだ。」

それを聞いてジナイーダさんが面白そうに聞いてくる。

「見ていたこっちとしては少しハラハラしたんだから。異常は何もないの?」

本気で心配しているというよりは、一応確認をしている感じだ。

「ええ、痛みはもうありませんよ。その、なんて言うか・・・・僕の中をかなり熱い塊が無理に通ったから、まだ何か引っ掛かっている感じは残ってますけど、感覚的に悪い物じゃない事は分かります。恐らく道が広げられた感触が残っているだけですね。」

僕が苦笑して答えると彼女は問題ないと判断したのか頷いた。

「なあ、遊馬。いったいどんなのが通ったんだ?」

後ろ親友が声を掛けて来たので振り返ると、少し頬が引き攣っていた。

どうしたんだこいつ? お腹でも痛いのかな?

「なんて言ったら良いのか少し困るんだけど、固い感触だったね。逞しいって表現したらいいのかな? そんな感じのやつが体の中を広げて行ったんだよ。」

そう言って英雄を見ると微笑んではいるが固まっていた。フロウは笑顔のイヴァンさんに肩を組まれている。少し顔が青く見えるけど人見知りしているのかな?

その時の事をもう少しだけ聞かれ、フロウを預けた僕達は個室へと移動した。



「さて、聞かせてもらおうか。ナニをした?」

2人がいなくなった瞬間にイヴァンさんが肩関節を極めて地面へ跪かせた事を確認し、俺は優しい声で新しい仲間に尋ねる。

「ま、待ってくれ!! 俺は何もやってない!!」

可愛い新入りは一生懸命に身の潔白を、自らの無実を叫んでいた。敬語を使えていない事からどれだけ焦っているのかが窺える。だが、話を聞いていた他の連中や俺に、そんな事はどうでもよかった。

『畜生!! アスマちゃんからあんな胸が熱くなる事言われやがって、この野郎絶対に許せねえ!! 』

『お前にわかるか? 年頃の美人が何の気兼ねも無く俺達オッサンに、尊敬や親愛の念を持って接してきてくれる事の尊さが。』

『若手にとってもアスマさんは憧れだったんだ!! 他の美人さん達と違って、凄く距離の近い素敵なお姉さんだったのに、それを、それを・・・・』

『あの温かな眼差しを独占しようとするどころか汚しただなんてとんでもない奴だ。』

『私のお姉ちゃんになってもう人だったのに・・・・それを汚すだなんてユルサナイ。』

『よし、ヒデオとの兄弟丼で許してやろう。さあ。』

周りから嫉妬に彩られた怨嗟の声が木霊する。

一番怖かったのは終始無言で微笑みを崩さずに取り押さえていたイヴァンさんだったのだが、予想通りフロウは優しい仲間達から思いっきり揉まれる事になった。

制裁の途中で一番近しい俺が恒例・・通り狙われる事になったのだが、今回はフロウがいたので死角をカバーし合い、訓練中に起こる事故で怪我をすることは無かった。

言うまでもないが、俺が他の連中と訓練をしていると何故・・事故率・・・い。

しかし今回は背中合わせが有る。これは案外行けるかもしれん。



訓練が終わり、いつも通りジナイーダさんに運ばれると、テーブルにボロ雑巾が2枚転がっていた。

「初日から随分ハードに行ったんだね?」

降ろしてもらった僕が震える足で隣に座り聞くと、2人は遠い目をしながら答えてくれた。

「2対多の集団戦闘を経験してきたところだ。先輩方が快く胸を貸してくれてな、ある意味実戦の中で連携の練習が出来たよ。」

「訓練の筈なのに途中で殺気を感じたぜ・・・・アレは新人に優しくなさすぎるって。英雄さん、良く今まで生きて来られましたね。」

親友が乾いた笑いを浮かべ、フロウは彼に憐憫と尊敬の混ざった複雑な視線を送っていた。

どうやら無事に仲良くなったようで安心する。恐らくだが彼らを見る限り戦闘スタイルの相性も大丈夫の様だ。

「さあ、2人共宿へ帰ろう。」

僕がそう言うと彼らは頷き、英雄に背負われてギルドを後にした。

宿でマルコヴナさんに人型であるフロウとプラフィを紹介すると、プラフィを見て鼻の下を伸ばしていた。

苦笑した僕達はここ3週間分の新聞を買おうとして止まる。

凍てつくオーラを放つ女将さんが現れ、マルコヴナさんが冷や汗をダラダラと流し停止したからだ。

「あんた! また客の女の子に手を出すつもりかい!?」

「か、母ちゃん!? 待ってくれ、誤解だ!!」

「言い訳なんか聞きたくないね!! さあ、裏へ来な、洗いざらい話してもらおうじゃないか!!」

マルコヴナさんは夜叉に変貌する一歩手前の女将さんに耳を引っ張られながら連行されて行った。

悲鳴を上げ、助けを求める彼の姿はとても哀愁が漂っていたが、僕達も恐怖に震えていたので動くに動けなかったのだ。許してほしい・・・・

その後騒ぎを聞きつけた息子君に新聞と救出を頼む事にした。僕達は実に無力である。

「なるほど、母に伝えてきます。それと新聞ですね。古い物は倉庫にありますので、少々お待ちください。」

そう言って彼は裏に入って行った。

それから少しすると箱に入れて持って来てくれた新聞を受け取り、料金を払う。

「もしかして、近いうちに宿を立たれるんですか?」

息子君が不安そうに聞いて来たので僕達は首を傾げる。

「良く分かったね? まあ、今すぐに立つって訳じゃないから、まだしばらくの間はよろしくね。」

そう言って微笑むと顔を赤くして俯いた。なんか可愛い。

この子が他の冒険者や傭兵から聞いた話しによると、新聞は旅人にとって色々と使えるアイテムらしい。火を起こしたり、濡れた靴の中に入れたりと活躍の場は多いそうだ。一番参考にしようと思ったのは、トイレの話だ。補充を忘れてしまい、紙切れを起こした旅人が、捨てるのを忘れていた新聞紙で危地を脱したと聞いた時は心の底から賞賛を送った。あれは経験した者のみが分かる絶望だからね。読み終わったら捨てずに取っておこう。

英雄も同じ経験が有るので僕の考えには二つ返事で賛同してくれた。

「こういう物を入れる袋も作っておいた方が良いね。」

「ああ、それに紙なら使った後に燃やせばいいからな。」

この世界の魔道具には超大規模な空気清浄器が有るので、ちょっとやそっと物を燃やした程度では環境破壊には繋がらないのだ。魔法って素晴らしい。



ここで資源の問題が出てきそうなものだが、魔物が湧き、錬金術が跋扈するこの世界では金属などの一部を除いて、リサイクルの観念はかなり低い。木も専門の魔法使いによりすぐに育つし、石油は存在しない。その辺りの事は僕達の常識で考えるだけ無駄だろう。

『発展した化学が魔法と変わらないなら、発展した魔法はその先を進んでいて当然だ。』

とは、この世界に来る時に受けたマレフィお姉ちゃんの講習で言われた言葉だ。



閑話休題

「ねえ、そう言えばここの商品って他に何を売ってるの?」

僕が効くと英雄も興味深そうに頷く。すると息子君は僕達に商品の一覧が載った2枚組の紙を渡してくれた。そこには新聞や日用品等が書かれており、最初で聞いておけばよかったと僕達は少し後悔する。

片方の裏面には大人のアイテムが記載されていた。詳しい説明付きで。

「ほう。」

僕がそう言うと、息子君はハッとなり僕から顔を背けた。セクハラしたとでも思ったのかな? そんなつもりは一切なかったのだが・・・・

今の所性欲は無いが、とりあえず必要そうなものが有ったので親友に声を掛ける。

「ねえ英雄、コンドームぐらいは買っておいた方が良いんじゃない? いざと言う時に無いと困るよ? それにフロウも必要でしょ?」

僕達からしたら何処を見ても心躍る世界だ。右を向いても左を向いても美形が多いここでなら素敵な女性を見つける事もあるだろう。そんな時に持っていないのは非常に拙い。全てではないが性病の予防が出来る事を考えれば必須だし、日本製の物ほど信頼できるのかは不明だが、無いよりは絶対に有った方が良い物だ。

「遊馬、俺はいつでも責任を取る覚悟だぞ。」

凄く良い笑顔をしながら、こちらを見て言い切ったので、内緒話をする為に屈んでもらい、耳元で囁く。

「あー、はいはい。でも本当に良いの? これが有れば長く楽しめるし、使用済みをお腹の上に置いてある画像ってお前、かなり好きじゃなかったか? それに現代では意外な使い道がネットにも書いてあったじゃないか。」

周りに聞こえない様に言うと彼は頷き、顎に手を当てて真剣に悩みだした。

とりあえずこいつは放っておいてフロウを見ると、彼も少し困っていた。プラフィは口元を押さえて笑っている。

「まあ今買う必要は無いけど、フロウも相手の事を考えてあげなきゃ駄目だよ? 必要な時は僕だけじゃなくて英雄に相談しても良いんだからね。」

そう言って微笑むと、僕らは凄く反応に困っていた息子君にお礼を言って部屋へと戻った。夕食は女将さんが厨房から離れたので少し遅くなるらしく、その間に少しでも新聞を読む事にしたのだ。


事情を説明されたが、前科の為に解放されなかったマルコヴナさんの無事を祈りつつ、僕達は情報収集に力を入れる事にした。


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