7,王宮へお出かけ
「セレナ、そろそろ準備できたかしら?」
「うん、大丈夫。まさか王宮にお呼ばれしちゃうなんて! 楽しみ!!」
今日は、優秀な学生や子供に対しての表彰式があるのだが、なんとお姉様だけでなく私まで表彰されることになったのだ。
お姉様は勿論その強力な光魔法で、私は勉強に熱心だということで呼び出されたらしい。
私的にはそこまで頑張っている気はなかったのだけれど、それほど死亡エンド回避のために必死だったということなのかな……
「セレナを表彰者に選ぶなんて、王宮の方々も見る目があるわね」
「もう、お姉様ったら!」
私は今年で七歳、お姉様は九歳になるが、以前にもまして私のことをほめすぎだし、過保護にしすぎている節がある。
「それじゃあもう出発しましょ、サイラスも一緒に行くって息巻いていたから公爵邸に寄って行きましょうか」
「そうだったね、サイもすごいなぁ」
そう、なんとサイも表彰者の一人なのだ。サイは魔法と剣技を組み合わせた戦闘スタイルが評価されたらしく、本人も努力が実ったとうれしそうにしていた。
「サイって本当に素敵だよね、なんでも出来ちゃって……王子様みたい」
「セレナ……」
お姉様が驚いたような表情でこちらを見るから、今の発言は少しまずかったなと反省する。
「あっ! 違うの、別にお姉様の邪魔をしようとかそういうことじゃないから……」
「……邪魔? よくわからないけど私はセレナを邪魔に思ったことは一度もないわよ」
「あはは……それはよかった」
もしかするとお姉様は、まだサイに恋心を持っていないのか? と思いつつ、私はエイミーの待つ馬車へと向かったのだった。
◇◇◇
「いやー、とっても豪華な式だったね。」
たかが10人の子供や学生のために、あんなに豪華な部屋で王様や王妃様から直接褒められるなんて、私の想像を超えていた。
「僕もまさかここまで盛大に表彰されるとは思っていなかったよ。それにセリーがちゃんと敬語を使えることにも驚いたかな。」
「ちょっと失礼じゃないの? もう七歳なんだから、私だってそのくらいの常識はあるもん……そんなことはどうでもよくて、私的には王様の弟のスチュアート様とすれ違ったことにもびっくりしたよ。」
王弟スチュアートはめったに人前に姿を現さないことで有名だ。原作乙女ゲームをやりこんでいる私もそういった人物がいるということしか知らなかったくらい、公の場には姿を出さない。
もう19歳なのに社交界にも出てこないので、やれ顔が醜いだとか、常識がなっていないだとか、殺人の趣味があるだとか散々な評判だった。
けれど、今日会った彼にはそのような感じはなかった。むしろ……イケメンだった。落ち着きのある紳士って感じ。
「まぁ、サイには及ばないけどね」
「何か言った?」
「ううん、何でもないよ……あれ、お姉様? さっきから何もしゃべっていないけれど、どこか体調が悪い?」
「あっ、いや、何でもないわ」
「無理しないで言ってね。スチュアート様に会った時、私を守るように立ってくれたでしょ? 私、うれしかった。けどね、お姉様が私に対して過保護なのと同じくらい、私もお姉様に対して過保護になりたいの。だから……」
「ありがとうセレナ。体調管理にも、もっと気を付けるようにするわね。……ちょっと考えたいことがあるから、その辺を散歩してきてもよいかしら?」
どうやら体調が悪いのではなく、今日の出来事の中で何か思うところがあったようだ。
「わかった! それまでサイと一緒に王宮の中を探検して待ってるね」
「間違ってもセレナに変なことしないでね。私あなたのこと、信頼しているから」
「大丈夫わかってるよ」
お姉様とサイが何か小声で話し終わったあと、一時間後に王宮の門の前で集まることにして別れた。
◇◇◇
「サイ、今日は聖地巡礼に付き合ってくれてありがとう」
「なんてことないよ。僕もセリーと一緒に散歩……じゃなかった。せいちじゅんれい、だっけ? できて楽しかったよ」
「そう、聖地巡礼! とっても楽しかった」
私とサイで盛り上がっていると、ペネロペお姉様が向こうの方からやってくるのが見えた。
なんだか、見送った時よりもすっきりとした表情になっていて……むしろいいことがあったような顔をしている。
「お姉様、お帰りなさい。何かいいことでもあった?」
「えっ、わかる? そう、少しいいことがあったの」
あまり探られたくなさそうだったのでそのままにしておいたけれど、嬉しそうな顔をするお姉様を見て、私もうれしくなった。
「じゃあ、そろそろ帰ろうか。」
サイがそう言った瞬間、私は今日の目的の一つを忘れていることに気が付いた。
「あっ、あの、ごめんなさい。少し待っていてくれない? 私用事を思い出しちゃって」
今日は王宮にいけると聞いて、その近くでサイとお姉様の誕生日プレゼントを買おうと決めていたのだ。できれば……プレゼントは当日にサプライズで渡したかった。
「用事? 僕らもついていこうか。もう夕方で暗くなってきたし」
「ごめん、できれば一人で行きたいんだけど……」
サイとお姉様は困ったように顔を見合わせる。
「わかったわ。エイミー、セレナについて行ってもらってもいい?」
「わかりましたお嬢様」
エイミーが私の手をつないでくれる。
「一時間くらいで帰ってくるから、できるだけ急いで終わらせてくるね」
「別に急がなくてもいいからけがをしないように、気を付けていってくるんだよ」
「はーい! いってきます!!」
まだこの時は、原作にない事件が起こるなんて考えてもいなかった。
本当は事件まで一話で書き上げるつもりだったのですが、書ききれませんでした……
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