6,実は天才?
読んでいただきありがとうございます!
毎日死亡エンド回避のために頑張り続けて、もう六歳になってしまった。
体づくりは欠かさずやってきたし、何といっても私はあれから勉強にも少し力を入れるようになっている。
そして勉強を続けてみて一つ気が付いたことがある。
それは、セレナは決してバカではなかったということだ。
本当はまだ勉強を始めるつもりなんてなかったのに、うっかりエイミーの前で「勉強しようかな」とか言ったせいでまだ五歳の時に始めることになってしまった。
本来ならこの世界では本格的に勉強を始めるのは10歳からなのに……
しかし勉強してみると、意外なことにスルスルと内容が頭の中に入るのだ。
前世ではあまり勉強が好きではなかったけれど、地頭が良いと勉強も楽しいことに気が付いた。
それからは、私は体づくりに加えて勉強にも力を入れるようになった。
「ふわぁ、そろそろ素振りでもしに行くか……」
歴史の本を閉じて机の隅に寄せると、部屋の隅にある木剣を取ってドアを開ける。
「あっセレナ! 勉強はもう終わっちゃったかしら?」
「うん、ちょっと素振りでもしに行こうかなって思って」
「じゃあ私も魔法の練習しに行くことにするわ」
「本当? じゃあ素振りが終わったらお姉様に魔法教わろうかな」
「わかったわ! セレナは本当に頑張り屋さんね」
「あはは……」
着実にタイムリミットの16歳に近づきつつある私は、とりあえずあらゆることに全力で取り組むようにしていた。全力で取り組んでいれば……
「セリー、ペネロペ! 久しぶりだね」
サイのことを忘れることができるかと思ったからでもある。
「そんなに久しぶりでもないわ。一か月前にも来たじゃない」
「一か月もここに来れなくて僕は寂しかったのにな……」
お姉様とサイが二人で言い合っているのを横目に少しため息をつく。
お姉様と同い年のサイは今年8歳になった。
最初に出会った時より大きくなったサイは、以前にもまして王子様のようだ。
ここ一年は魔法の練習に加えて剣の鍛錬もしているそうで、この間見せてもらった剣の腕は私をゆうに超えていた。
「セリー会いたかったよ!」
両手を広げて私に抱き着く。
初めのころはハグにも戸惑っていたけれど、何回もされるうちに彼にとって大した意味はないのだということに気が付いた。
それからは私を妹扱いしているのだなと思ってされるがままにしている。
「セリーはまたかわいくなったね、最近は剣だけじゃなくて魔法や勉強も頑張っているんだろう? 努力家だね」
「ふふっ、ありがとうサイ」
この誉め言葉は素直にうれしい。ちょっと頬を緩ませているとお姉様の咳払いが聞こえた。
「サイ」
「……わかったよ」
これは……サイを取るなっていう私へのけん制?
まずい、私はサイに恋心なんてないことをアピールしなくちゃ。
「やっぱりいつ会っても、サイは私のお兄様みたい!」
その言葉にお姉様とサイは二人で顔を合わせてニコニコと笑った。
……対応、これであってるよね?
◇◇◇
息を大きく吸って、力を杖の先に集めるように集中する。
するとだんだん杖の先に火花が散り始めた。
「きたっ!」
あとはここにもう少し力をこめれば………
「あっ……」
力のこめかたが違うのか火花は炎に変わることなく一瞬で消えてしまった。
私は一応炎魔法を使えるらしいのだけれど、これは残念ながら勉強と違って努力でどうにかなるわけではないらしい。
お姉様が光魔法を使って、あたり一面を白い光で包んでいるのをうらやましいと思ってみていると、サイが声をかけてきた。
「なるほど、火花は出るけどその先が上手くいかないのか……僕もよくわからないけどもっとこう……杖の先端にだけ集中させる感じで」
そういいながらサイは私の背後に立って覆いかぶさると、後ろから私の握っている杖を一緒に握った。
「そう、集中して。僕が支えてるから」
集中も何も、前世の推しにバックハグされているこの状況で火花すら出せる気がしないのですが!
「あの……サイ?」
「ん? どうしたのセリー」
「あの、一人でできるから平気だよ? 杖の先に力をこめればいいんだよね?」
「そうだけど…」
「サイラス。」
いつの間にか魔法の練習に集中していたはずのお姉様が厳しい目でサイを見つめていた。
「セレナが困っているでしょう? 私がセレナに教えるからあなたは自分の練習をしていていいわよ」
「わかったよ。」
なんだか残念そうな声色で私から離れると、隣で風魔法を使い始めた。
彼はペネロペお姉様にも並ぶほどの魔法使いで、周囲では風がごうごうと鳴っていた。
「サイもお姉様も努力と才能の塊ね。私は魔法を使えるようになるのは無理かも……」
「私とサイラスが普通じゃないだけだわ。セレナはいつも頑張っているじゃない! 体も鍛えていて、お勉強も私よりもできて、それにこんなにかわいいんだから、魔法くらいできなくたってどうってことないわ。でもどうしても魔法も頑張りたいって言うなら、」
「言うなら?」
「私が手伝うわ。だからそんなに悲しい顔をしないで、私のセレナ」
そういって頭をなでてくれるお姉様の暖かさに涙目になる。
「僕も手伝うよ。セレナの力になりたい」
「貴方は適度な距離感を守ってほしいわね」
「努力はするよ」
そんな感じでまた二人が口喧嘩を始めるものだから、思わず笑ってしまった。
「本当に二人は仲がいいよね」
「誰がこんな人と仲がいいだって?」
「誰がこんな方と仲がいいですって?」
思わずハモってしまった二人の様子をみて、私はさらに笑うのだった。
あぁ、こんな幸せな時間がいつまでも続けばいいのにな。
◇◇◇
「どうだったか?」
「はい、サイラス・ハンプシャーがペネロペ・リンジー及びセレナ・リンジーとよく遊んでいるとのうわさは本当でした。一か月に一回はリンジー侯爵邸に入り浸っているようです。しかし……」
「しかし?」
「これは私の主観なのですが、サイラス・ハンプシャーが好意を寄せているのは姉のペネロペ・リンジーの方ではなく、セレナ・リンジーのように見えたのです」
「それは本当か? 預言者が言うには、サイラス・ハンプシャーとペネロペ・リンジーがお互いに想いあう運命にあるとのことだったが」
男は部下に対し疑惑の目を向ける。
「私も確信があるとまではいきませんが、あなたもあの様子を見れば同じことをお考えになると思います」
「ふむ……そうか。それなら一度セレナ・リンジーをさらってみるか。それで、サイラス・ハンプシャーの様子を見れば真実がわかるだろう」
「それから、ペネロペ・リンジーの方もセレナ・リンジーに対して並々ならぬ執着があるように見えます」
「そうか、もしそれが本当ならセレナ・リンジーがハンプシャー家とリンジー家を没落させるカギになりそうだ……とりあえずあとは任せたぞ」
「承知いたしました」
命令を受けた部下は数人の黒服の男を引き連れ、あっという間にその場から姿を消した。
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