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3,誘拐事件と姉妹

のんびり上げていこうと思います。

サイとペネロペの初対面、もとい、この世界で私がサイと出会ってから二日が経った。

というわけで今日は……


「いよいよお姉様が誘拐される予定の日が来てちまったわ」


前世の私の記憶をもとにすると、誘拐されるのは今日の夜。

それまでに何か対策を考えなくてはならないのだが……


「結局わたちが奇襲する以外何も思いつかないのよね」


結局特にいい案は思いつかないまま当日を迎えてしまった。

前世の記憶を取り戻してから三日で用意できたのは、私の手にもなじみやすい木の棒のみ。


まだ夕方だけれどなんだか不安になってきたので、自分の部屋を抜け出してお姉様の部屋へと向かった。


部屋につくとそこにはいつも通りの様子のお姉様がいた。


「あら、セレナ。どうしたの? 何、さみしくなっちゃった?」


お父様とお母様が出かけているから、私がやってきたと思っているようだ。

まあ、それも少しあるのだけれど。


「ちょっとだけ寂ちくなっちゃっただけ。あ! そうだ!!」


ペネロペお姉様に抱きしめてもらっていたらいいことを思いついた。


「今日はお姉様と一緒に寝たいの……ダメ?」


「え、私はとてもうれしいけれど……エイミー、今日はそれでもいいかしら?」


お姉様は嬉しそうに頬を赤らめて、扉の近くで控えていた侍女のエイミーに声をかける。


「わかりました。それではそのように準備させていただきます」


「わぁ! ありがとうエイミー大好き!!」


お姉様のもとをいったん離れて今度はエイミーに抱き着きに行く。

普段はあまり表情の変化がないエイミーだけれど、嬉しそうに私を受け止めてくれた。


勿論、ただお姉様と一緒に寝るわけではない。

私はまだ体が小さいから、お姉様のベッドの中にすっぽり隠れることができると考えたのだ。

そうすれば誘拐犯はお姉様だけだと思っていたところから私も出てくることになり、きっとびっくりするに違いない。


「セレナ! 私も混ぜて!」


私がエイミーとくっついていると、なぜかお姉様まで一緒になってくっついてきた。

まさかこの後誘拐事件が起こるなんて考えられないほど、穏やかな宵の口だった。


◇◇◇


ペネロペお姉様の体温とふかふかの掛布団の中、私は必死に眠気と戦っている。

時間を知るすべはないけれど、おそらく私たちがベッドに入ってから3時間は過ぎているだろう。


午前零時あたり、もうすぐ“やつら”がやってくる。


お父様とお母様についていかなかった侯爵家の護衛も、今日の夜侯爵領のとある町で火事が起きたとかなんとかで、ほとんど出払ってしまっていた。


今考えてみれば、お父様とお母様が突然出かけたのも、侯爵領で火事が起きたのも、全部この誘拐事件の黒幕の仕業なのかもしれない。


きっと一筋縄ではいかないような相手なのだろう。

ううん、ここで自信を無くしちゃダメ。私がお姉様を守るんだ。


木の棒を握りしめ、改めて決心したその時、外から物音が聞こえた気がした。


いよいよだ。


「……おい、みつけたぞ。この部屋だ」


「しっかり長女のほうか?」


「あぁ。間違いない。ぐっすり眠ってやがる」


そういいながら窓を開ける音がした。

話声や気配から考えると、どうやら男二人組のようだ。


「警備を薄くしてもらっていたおかげでここまで難なくたどり着けちまったな」


「親方には本当に感謝だな」


二人がベッドに近づいてペネロペお姉様に手を伸ばそうかとしたとき、

私はベッドの中から飛び出した。


「うおおおりゃあああああ!!!!!」


叫べる限りの大声を放ち、とりあえず近い方の男の顔面にダイブした。


男たちは一瞬驚き固まるも、残念ながら私は2歳児、すぐに取り押さえられてしまった。


「なんだお前は!?」


「さては次女の方か? まあいい、ついでにこいつも連れて帰るか。」


それはまずい! このままだと二人とも連れていかれちゃう……!

もう絶体絶命だと思ったその時。



まばゆい光が私たち3人を包み込んだ。


「……私の妹に……何をしているの?」


その光の先には私が調達した木の棒を持ったお姉様がいた。

今までに見たことのないような怒りの表情を浮かべている。

男たち二人は光に耐え切れず早くも地面に転がってしまった。


うんともすんとも言わなくなった男たちを確認すると、お姉様は木の棒を放り投げて私に駆け寄ってくる。


「セレナっ! 意識はある? けがはない? もう怖くないよ」


そういいながら私を抱きしめてくれた。私の体がまだガクガクと震えていることに気が付くと、もっと抱きしめてくれた。

お姉様の体だって震えているのに。


私は泣いた。本当に怖かった。




ほどなくしてまばゆい光を見た侯爵邸の門番の人が、遠くからお姉様の部屋まで駆けつけてきたことで事態が発覚し、侯爵邸は大騒ぎになった。


その日の朝にはお父様とお母様も急いで王宮から帰ってきて、無事だった私たちをみて泣いていた。


結局、誘拐犯たちはお姉様の光魔法から目覚めた後、何も口を割ることなく地下牢で服毒自殺してしまい、真相は闇に包まれた。

お父様とお母様の王宮への呼び出しはどうやら本当に用事があったらしいし、侯爵領のとある町での大きな火事の件も、火をつけた犯人は焼死してしまっているそうだ。


また、誘拐事件から3日が経ったとき、とある王宮魔術師が家までやってきた。

お姉様が光魔法を使えるようになったことをきいて、どのように発現したのかを知りたかったそうだ。


私も、本来なら誘拐犯に連れ去られた馬車の中で暴発するはずだった魔法が、なぜ侯爵邸にいる時点で発現したのかについては疑問があったので、同席してみることにした。


「それで、君はどのように光魔法を使えるようになったのかね?」


「私にもよくわからないんです。けれど……」


大好きなセレナが危ない状況にあったから、どんな手を使っても助けたいと思ったんです。


お姉様はそう答えた。


王宮魔術師の人は、自分の身と大切な人の身に重大な危機が訪れたこと、そして魔力の媒介となりやすい棒状のものを手にしていたことが、光魔法の発現のきっかけとなったのだろうと結論づけて、お礼を言って帰っていった。


結局慌てていてベッドの中に置き忘れた木の棒が、そんなところで役に立っていたなんて衝撃だ。



犯人はわからなかったけれど、お姉様も私も誘拐されなかった。

そして何より、


「お姉様?」


「なあにセレナ?」


「私もお姉様のことが大しゅき! 守ってくれてありがとう」


「ふふ、私もセレナのことが大好きよ。セレナも私のために立ち向かってくれてありがとう」


お姉様とこんなにも仲良しなんだから、死亡ルートはかなり遠のいていると言っていいよね?

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