1,実は悪役令嬢でした
初めて小説家になろうにて投稿してみました。
ゆっくり更新していこうと思いますので、よろしくお願いいたします!
都心の大学に通えば、彼氏なんて自動的にできるものだと思っていた……
そんなことを考えながら、彼氏いない歴イコール年齢の私は今日もゲーム機を立ち上げる。
けれど実際、彼氏がいないことなんて気にしていない。なぜなら、
「サイー!! 今日も会いたかった!」
私には推しキャラがいるからだ。
サイもといサイラスとはこの乙女ゲーム「貴方に花束を」の攻略キャラの一人である。
四人いる攻略キャラの中でもサイラスは一番の人気で、かくいう私もサイのルートは10回以上クリアした。
「あ、明日までに提出のレポートがあるんだった……」
仕方なくゲーム機を閉じ、パソコンを開いて本とにらめっこしながら文字を打っていく。
でもなんだか眠くなってきて……
◇◇◇
「セレナ様!おはようございます。そろそろ起きてください」
セレナ……?セレナ。そう、私はセレナ。
「おはようごじゃいます……」
「あらあら眠そうですね。まずは顔を洗いますよ」
「はぁい」
さっきのは夢?なんだか大人になっていて、乙女ゲーム……?がどうだこうだって言っていたような。変なの、私はまだ2歳なのに。
侍女のエイミーに連れられて、顔を洗いに鏡のついている洗面台へ向かう。
顔を洗うのを手伝ってもらって、ふと鏡の中の自分を見た時。
「これって……」
美しくまぶしいプラチナブロンドの髪。透き通るような白い肌。長いまつげとふっくらとした唇。そして…
「この赤い目ってましゃか!」
まさか、と言いたかったのに口がうまく動かない。だってまだ私は2歳だからだ。まだ2歳だけど、この後私は……
「私! セレナだわ! 『貴方に花束を』の悪役令嬢になっちゃう!」
突然変なことを言い出した私を、侍女のエイミーはとても心配して、今日はそのままベッドに戻されることになった。
心配をかけて申し訳ないなと思いつつ、これは事態を整理するのに好都合だと考えて、部屋にあったノートとペンを持ってくる。
この世界の文字はまだうまく書けないけど、前世の、そう日本語なら読み書きができる。
「貴方に花束を、か」
私が突然夢で思い出したのは、この世界を舞台にした乙女ゲームを楽しんでいた前世だ。
この乙女ゲームでは、庶民の老夫婦に育てられた記憶喪失の少女ペネロペが、光魔法の才能を持っていることから、貴族の通う「アマネセル学園」に通い始めるところからスタートする。
そして、16歳から18歳までの3年間の学園生活を通して、攻略キャラとの愛をはぐくんでいくのだ。
そして、セレナの役割はいわゆる悪役令嬢で、かつこれは物語中盤に明かされるのだが、ペネロペは実はセレナの姉であることが発覚する。実はペネロペは侯爵令嬢だったってわけだ。
庶民のくせにちやほやされていたペネロペに対して敵対心を持っていたセレナは序盤から中盤にかけて、しょうもない嫌がらせを繰り返ししてくる。
中盤で自分の実の姉だとわかってからも、今まで自分が一途に受けていた両親の愛がペネロペにも注がれることに納得がいかず、さらにペネロペがサイラスルートを取っていた場合にはサイラスに好かれているペネロペに嫉妬して、
「たしか、ペネロペの卒業パーティーの日に毒をもりゅんだったかちら」
盛るんだったかしら、と言いたかった言葉は盛大に噛んでしまった。
その後、ハッピーエンドならペネロペは真実の愛のキスで目覚めて、攻略キャラと結ばれる。
セレナは死刑。
バッドエンドならペネロペは永遠に目を覚まさない。が、犯人は特定されてしまう。
セレナは死刑。
これがさらにサイラスルートだと、ハッピーエンドだろうがバッドエンドだろうが、セレナがペネロペに毒を盛った後にサイラスを監禁したことで、愛しいサイラスの手によって殺される。
「何よこれ。どのルートにたどり着いても、私は死んじゃうじゃない!」
今までペネロペ視点でしかゲームをしてこなかったから、悪役令嬢の末路なんて考えてたこともなかった。
今私は2歳。姉であり、ヒロインであるペネロペは私より2歳上である。
ということは、姉が18歳で卒業するとき、私が16歳で学園の1年目を過ごし終わるまでに、何とか生き延びる道を見つけ出さなくてはならない。
「解決策はありゅかしら?」
ノートにペンを滑らせながら考える。
まずは、サイラスを好きにならないこと。これは一番大事である。いくら前世の推しだからと言って、好きになってしまったら最後、ペネロペに嫉妬する未来が見える。
都合の良いことにこの世界では、貴族は学園を卒業するときに婚約を結ぶことになる。
正確に言えば、学園を卒業した男性が、意中の女性に花束を渡し、皆の前で公開求婚するのだ。
だから、サイラスと私が家の都合で強制的に婚約させられて……なんてこともない。
冷静になって考えてみると、求婚が成功しなかった場合の男性側のダメージは計り知れないが、そこは乙女ゲームということで片づけられるのだろう。
そしてもし、物語の強制力で死刑になってしまったときのために、体を鍛えておくこともよさそうだ。もしかしたら万が一にでも隣国に抜け出せる可能性があるかもしれない。
あとは、両親の愛がペネロペにも向かうことに嫉妬しないこと。これは大丈夫そうだ。だって、今だって娘二人仲良く親の愛を受けているのだから。
あれ?娘二人……?
「しょーだ! ペネロペお姉しゃまじゃない! まだ家にいるわ!」
ペネロペが誘拐されて侯爵邸から姿を消すのは、ペネロペが5歳の誕生日を迎える前日の夜のこと。ということは、
「あと3日だわ。」
もし、ペネロペが誘拐されなければそもそもの乙女ゲームの設定が半分は崩壊だろう。
それなら、私の死刑エンドや殺害エンドを回避できる可能性も上がるかもしれない。
そしてなにより、
16歳になったセレナは覚えていなかったかもしれないが、今の私はペネロペお姉さまのことが大好きだ。
いつも私と遊んでくれたり、絵本を読んでくれたり、優しくしてくれるお姉さまを失うなんて考えられない。
「にゃんとかして、お姉さまを守らなくちゃ!」
そうと決まれば、私は3日後のために動き出した。




