私のこと、好き?
その盗聴器が見つかってからは、特に何もなかった。
でも、僕は怖かったので盗聴器と盗撮器の電波を感知して教えてくれる発見器。しかも、かなり広い周波数を感知できるらしい。盗聴器、盗撮器があればほぼ見つかる。
僕は仕事の帰りに南の部屋に寄ってみた。
南はもう部屋着になっていた。白っぽいかなり大きめなTシャツと短パンで、いつもより色白にみえた。
(え!……髪も下してるし。なんか透き通ってる感じで神秘的。)
「……どうしたの?パジャマどっかおかしい?」
「いや、いつもと違ってすごい、いい……」
「え〜、そんなにいつも私変なの?」
「何着ても似合うなってこと。」
「へへ〜ん、当ったり前じゃん。」
「…あの、盗聴器と盗撮器の発見器買ってみたんだ。やっぱりまだあるかもしれないと思って。」
いきなり南の顔が暗くなった。
「そんな、大丈夫だよ。」
「でも、お父さんに聞いたら何者に監視されている、って言ってたから。」
「大丈夫だって。」
「…なんで?あ、部屋に入ってきてほしくないのか。
じゃあ、ここでもいいや。」
「そういうことじゃないの。しょー君、しつこい!」
そう言って、南は僕を突き飛ばした。
(そんなに、僕はダメなことをしているのか?)
僕は押された反動で発見器のボタンを押してしまった。
すると、すごい大きさで「ピー、ピー、ピー」と鳴りだした。
「ほら、鳴ったじゃん。やっぱりあるんだよ。」
「…違う、違うの。」
「え、どういうこと?」
発見器を南に近づけると、首元辺りで一番強くなった。
すると、南はちょっと泣きそうになりながら、
「私の体の中から電波が出てるの。」
僕はゾッとした。
「…埋め込まれてるってことか?」
「………」
南は僕の目の前で勢いよくかがみ込んで、泣き出した。すごく大きな声で、まるで子供のように。
うぅえぇぇぇん
(こーゆー時って男、いや、家族としてどうしたらいんだろう?)
とりあえずここは寮だからうるさくするのは迷惑だと思い、南を抱えて部屋に入れ、座らせた。
(でも、僕が悪いんだよな。僕が泣かせたんだよな…)
南は少しずつ泣き止んだ。それで、まだまだ出てくる涙を手で拭きながら僕をずっと見つめていた。
(理由が何にせよ、泣かせてしまったから、やっぱり謝らなきゃ。)
「南、しつこくしちゃってごめんなさい。
でも、南のことが心配でやったことなんだ。やり過ぎだかもしれないけど、分かって欲しい…。
もし、してほしいことがあったらなんでも言ってね。」
僕がそう言い終わらないうちに、南は僕に抱きついてきた。
(え?え?えええぇ〜!?
こ、これは、なんのハグ?)
南はまだ声を震わせながら話し始めた。
「私のこと、好き?」
(え??それは、家族としてってこと?)
「もちろん!家族だろ!」
「私が今からとんでもないこと言っても?」
(とんでもないこと…?)
「うん!好き…だよ。」
「私が、…人間じゃないって言っても?」
(どういうこと?)
「あぁ、好きだ!」
「私が、……ロボット…だって、言っても?」
「ロ?ロボット…ロボット?…ロボット!?」
それ以上南は何も言わないで、僕に抱きついている。
(これは、南がロボットってことでいいのか?
……そんなことが、あるのか?
……ロボットって、こんなに柔らかくて温かいのか?)
南は僕の首に巻いていた手で、今度は肩を掴んで、僕を見て、また泣き出した。
「……やっぱり、…しょー君も…ロボットなんて…好き…にならないよね……。」
(…そーじゃないんだ。…意味が分からないんだ。理解できないんだ。ロボットだなんていきなり言われても…。)
「…バカな。…そんな、ロボットなんて信じられないし……。
でも僕は、南がなんであっても、好きだ…。嫌いになんてなれるもんか!」
「……ほんとうに?こんな私でも好きになってくれるの?ただのロボットだよ…。」
「違う!ただのロボットでなんかあるもんか!
苦しんでた僕を助けて、仲良くして、一緒に笑って……。ロボットにそんなこと、できない……。
…そうだ、君はロボットみたいな人間なんだ。」
南は黙って、僕の瞳の奥を見るかのように僕を見つめた。
そんな南を、僕は強く抱きしめた。家族として。ロボットとして。人間として…
まだ、全然話続くので安心してください。