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コーヒーブレイク32

世界樹の治療をシラタママが開始して、ノアが山脈に大穴を開けてから数時間後のことになる。


「「「本当に申し訳ございません」」」


 目が覚めると俺は応接室のような部屋に案内されていた。

 一応、俺が眠ってしまった後の事はノアとロロン、ソフィア……そして、新たに俺の嫁!? になったと言っている、小さな真っ白スライムのシラタマから状況は説明されていた。


 しかし。


 なんで、召喚に答えてくれる召喚獣には結婚の話が提示されているのだろうか?

 俺にとっては、召喚後に眠くなるのと同じくらい謎である。


 話を戻そうか。


 四尻尾議会の代表議席である、シー、アクア、アジュールが俺にペコペコと頭を下げている。

 ちなみに、タンは逮捕されたのでここにはいない。


「世界樹様を救って頂いたことで、パーステールの結界も持ち直しました。これには我々、四尻尾議会だけでなく、国民全てが感謝しております……しかし――――」


 代表してシーから俺に対して、説明が始まったのだが……なんで謝っているのだ? と思っていたのは訳があったみたいだね。


 結局のところ、世界樹の治療も始まり結界は崩壊しなかった……だけどノアの放った一撃で、国民全てが恐怖のドン底に落ち、俺達は『守護者』から一変して『魔王』扱いに降格されたので、国から出ていってもらいたい。


 まあ、そんなところだが……この世界にも『魔王』がいるのだろうか?


「はぁ……話は分かりましたよ」

「では!」

「俺達は、この国を出ていけばいいんですよね」

「……すまんのじゃ」


 俺は、泣きそうになっているノアに「大丈夫だよ」と囁くが、ノアはシュンとしたまま俯いている。

 漆黒竜神の威厳を常に放ち我儘三昧なお姫様イメージを持たれているが、意外と素直で心のやさしい乙女なのだ。

 それだけ今回の山脈大穴事件には、かなり参っている様子だった。


 兎に角。この会話でホッとしたのか、シーが胸をなで下ろしながら「それでは明日にでも、この国を――」などと言ってきた!


 それを「「はぁ?」」と漏らし、プルプルしながら会話を遮ったのは……ロロンとソフィアだった。


 なんかものすごくお怒りです。


 俺と出会ってからのロロンとソフィアは、この亜人の国の中枢機関を守護する召喚士と騎士だった過去が、まるでなかったかのように俺とノア側になっている。

 四尻尾の代表議席なんて雲の上の存在なのだが、今のロロンとソフィアには関係ないようだ。

 このままだとメイドモードからバトルメイドへとモードチェンジしかねない。

 それぐらいに二人は顔を赤くして、頬を膨らませていたのだ。


「明日、この国を出ろなんて……酷すぎです」

「私もロロンに同感だ。ここまで世話になったフユノ様とノア様に、なんて罰当たりな仕打ちをするのだ」


 あー! まずいな。ソフィアったら剣を抜いてしまうぞ。

 俺と初めて出会った時などは、有無を言わさずに剣先が迫って来たしな。

 さてどうしたものかと思っていると、俺の頭の上で声がした。


「あのう。マスター。わたし達、この国にいられないんですの?」


 ポニョポニョと俺の頭の上で揺れているシラタマが、悲しげな表情で俺を覗きこんでいる。


「お母様は、世界樹様を治療中ですけど……まさか! お母様を置いて、明日この国を出るですの?」


 シラタマの言ってることは、もっともだと俺も思う。まさか母親をこんな知らない世界の国に置き去りにして行くなんてできる訳ない。


「まさかね。それはないで、しょ……って、えっ」


 バキバキバキ、ドンドンドン。激しく何度も床に頭を打ち付けて土下座を繰り返している……世界樹の巫女シーが俺の目の前で流血していた。


「……シラタママは、このままにしろってこと?」

「はい。世界樹様の治療が終わるまでは……」


 流血しながら、凄むシー。


「なんとも……これが、憧れの四尻尾議会の代表達かと思うと……防衛騎士団に所属していたのが、情けなくなるな」

「ソフィア……ちょっと言いすぎだよ。当たってるけど……」

「妾からしたら、ロロンとソフィアの変わり身のスゴさもって……」

「「私たちは、すでにノア様のバトルメイドですから! 優先順位が違います」」

「見事にそろったのう」

「……お母様が可哀想ですの」


 十四の瞳が……俺に突き刺さるのだった。




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