コーヒーブレイク15
「さっそくじゃが、妾と旦那様が寛げる場所にあない、せい……ん?」
ノアは、今だ眠っているアオイを膝枕アンド膝足置きとして正座している、ロロンとソフィアをジトッと見る。ジロッではなかったのが救いか。
「お前らは旦那様のなんなのじゃ?」
ロロンとソフィアはワタワタしながらも、お互いに目を合わせると同時に答えた。
「「お世話係です。護衛だ。」」
そして再度目を合わせてポッ! などと乙女の顔を覗かせたのをノアが見落とす訳もなくニコニコと微笑んだ。逆にそれがものすごい恐ろしく感じる二人。それを見守る多勢。
「なんじゃ……惚れとるのか」
甘美なウィスパーボイスから放たれた一言に、ビクッとしたロロンとソフィア……とタン。
「……おい。虎男。なぜお前がビクつくのじゃ? 妾は旦那様以外に興味はないぞ」
一瞬で恋に落ち、一瞬で恋に散ったタンは無視しよう。
「妾が聞いているのは、そこの二人じゃ」
もしや、結婚したての夫に手をだしたドロボウ猫ならぬ狼と狐ってことなのか? 死をも予感する二人に追及の竜の手が及ぶ。
「くっくくく。隠しても無駄じゃ。トキメいておるのじゃろ、心が熱いのじゃろ、体が熱いのじゃろ。くくく、妾には分かるのじゃ。お前ら二人が旦那様に夢中なのはお見通しなのじゃ」
「うううっ、そんなこと……」
「くっ……」
スッと近づき二人の頬を軽くなでるとノアが片膝をつきアオイを自らの胸へ導いた。ギュッとアオイを抱きしめるノア。
「眠っておるのか。まあ、妾を呼び出すのに使った魔力は計り知れんじゃろ。魔力ゼロ状態も致し方ないのう」
大会議室で起こっている恋の物語。目で見ているのは四尻尾議会の代表のみ、他の者は全て土下座中だ。
そして当事者のロロンとソフィアはノアからの追及に身を固くしている。
「ん? なにを固くなっておるのじゃ。獣人なら強い雄に惹かれるのはどうぜんじゃろ、妾の旦那様は妾が認めたのじゃ、すなわち最高で最強で最愛の男なのじゃ。英雄なのじゃ勇者なのじゃ。だからあたりまえなのじゃ、お前らが惚れるのは当然の結果じゃ。そして妾はその素晴らしきアオイの正妻じゃ、旦那様が女性の百人や二百人をはべらかそうが気にもせぬわ。逆にハーレムも作れぬ男などと笑われてしまうのは妾の内助の功を疑われるのじゃからして……お前らをメイドとして妾と旦那様に従事するのを許そう。むろん褒美として定期的に種をもらうがよいぞ」
ノアの一方的な要求にロロンとソフィアも唖然としていたのだが――――
バッっと三歩下がり「宜しくお願いします」と頭を下げたのだった。ごきげんでピコピコ揺れる四つの耳とワサワサと振られる二本の尻尾。
なぜかノアの背後に回ったタンが同じように土下座していたのは無視された。彼の名誉の為にも四尻尾議会最大の秘密となったようだ。




