コーヒーブレイク13
「ロロン! フユノ様が呼んでいるぞ」
「えっ! 目が覚めたのね」
バタバタと足音をさせて勢いよく部屋に入ってきたソフィアが開口一番にロロンに言った。
フユノ様が目覚めた……。この言葉をどれ程待ちわびたものか。
ロロンはソフィアを放置したままあっという間に部屋を飛び出すと、耳と尻尾をピコピコ、フリフリしながら駆けて行くのであった。そんなロロンを呆れたように見つめるソフィアもまた踵を返して部屋から立ち去ると、内心でフユノの目覚めを喜んでいるのを悟られないように表情を引き締めてから、走ってロロンを追いかけるのであった。
ドタバタドタバタ――ガチャ!
ハアハアと息を切らしながら俺のいる部屋へ飛び込んでくるロロンとソフィア。
俺に会いに美少女が二人も走ってくるなんて、なんてウヒヒな光景などと言いたいのだが、それを許さない美女がツカツカと近づき、ロロンとソフィアに説教していた。
「……なんじゃ。はしたない。それに旦那様は、目が覚めたとはいえ安静が必要じゃ! もっと静かにせい」
「「すみません」」
二人とも獣耳をペタリと下げて謝っている。
「そんなに怒らなくても……俺は大丈夫ですから」
「そうはいかん。この二人は妾と旦那様のメイドなのじゃ! もっとしっかりしてもらわんと」
「はぁ。旦那様はやめてよ~」
「何を言っておるのじゃ。アオイは妾の旦那様なのじゃ」
そんなやり取りを「くすっ」と微笑みながらロロンは昨日の『漆黒竜降臨事件』を思い出していた。
ドールハウスと化した議事堂に現れた漆黒竜。
その黒々とした竜から放たれるオーラの神々しさに全ての国民が平伏したのだった。
身長は百十五メートル。建物でいうと横浜のベイ○ェラトンホテル規模であり、この世界カラーズでの建物が平均して三階建て程度、だいたい十メートル前後なのだからどれほど巨大だか理解してもらえただろう。
ちなみに人間の国にある城は含まれていない、あれは三階建て建築物ではないみたいなのだ。小さく言うと王様に怒られそうなのでやめておく。
そもそも、この世界の人間事情は詳しく聞いていないのだ。
話を戻す。
ロロンが膝枕をする『守護者』アオイに近づく紅玉の瞳の巨大な竜に、いつもは強気のソフィアも腰砕け状態でアオイの足に抱き着いて女の子座りをしている状況だった。
「グルルル」
竜にしてみれば、先程の咆哮とは違い吐息を漏らしたぐらいなのだろうが……亜人達は食物連鎖の最下層にいるかの如く、多くの者がおでこを床に擦り付けるマックス土下座に力が入る。
ロロンもソフィアも、ああ……食われてしまうと思った時だった。
「フユノアオイ。そちの提示したことに偽りはないのじゃな?」
紅玉の瞳にいっそう輝きが増していく。
「むう。沈黙は肯定と受けてもいいのじゃな?」
ジロッとアオイを睨む竜に「「ひいっ」」と返事をしたのはロロンとソフィアだった。
「なんじゃ、お前らは? 妾はアオイに聞いておるのじゃ」
「「あわわわわ、申し訳ございません」」
ロロンは膝枕でアオイの顔を、ソフィアは膝にアオイの足を乗せて土下座をしていたので、二人のおっぱイに挟まれることになった顔と足は、まさに至福の時をすごしていたのだが。アオイは爆睡中で気づいていなかった。もったいない。




