コーヒーブレイク10
「……なんだか、和やかな感じで纏めてますって感がでてるけど」
いまだ、俺の顔面にはソフィアが繰り出した剣先が光っているのだ。
「貴様がロロンにした事は許さんし……私は貴様が『守護者』というのも疑っている」
「あらら~。アオイちゃんはピンチかしら~」
話に割って入ってきたのはアクアだった。チラッとソフィアを見たアクアが、眼光鋭くソフィアをたじろがせると「わたし。そんなに怖くないもん」と可愛く微笑んでいる。
「ねえ。さっきも言ったけど~。魔法って何? アオイちゃんの使う魔法の呪文? 見せてほしいな~。そうすれば、ここにいる皆が納得してばんざ~いだよ」
「そうだな! 証明してみせろ。貴様が本当に『守護者』ならばロロンにしたことも許してやる」
「……えっ。私の意思は?」
「……えっ。『守護者』ならいいの?」
なんだか、俺とロロンの意思を無視して話が進んでいるが……。
ちょっと待ってほしい。俺が言ったのは働いてるカフェのオーダーが魔法の呪文みたいで長くて不思議なのんだよって話であって。本当の魔法使いだなんて言ってないし。
「魔法と召喚の違いとか……意味が分からない」
そうボヤいた俺にロロンから説明があった。
曰。
この世界に魔法という概念は存在しなかった。
ロロンは魔法がなんだか分からないが、さっき俺に水の塊をぶつけたトカゲみたいなのは、ロロンが召喚した水の精霊が変身した姿だった。
召喚士と精霊は契約によって主従の関係となり、必要に応じて精霊を召喚する。
精霊は主の依頼に答えるべく自らの力を解放するのだ。もちろん個々の属性やランクによって出来ることは決まっているのだが……。
水の塊や炎を吐いて攻撃するなど、俺の世界で幻想的に魔法と思われていることの全てが召喚した精霊の力で行われているのだった。
だから、人間でも亜人でも直接的になにかを魔法みたいにすることは。出来ないのだ。
全てが召喚した精霊の力なのだ! ちなみに人間は精霊と契約できないので召喚士になれなそうだ。詳しくは分からないらしい。
「こんな感じです」
ロロンが、ちゃんと説明できなくてごめんなさい。そんな感じで俺にペコリと頭を下げた。獣耳がピコピコしてて、可愛い。
「説明も聞いたんだし。貴様の魔法っての見せてもらおうか」
なんだかソフィアの睨みが、激しくなったようだが……。この子って。四尻尾議会の代表議席の人じゃないよね? いつの間にか仕切ってるし。
しかし困ったぞ。マジで魔法なんて使えないし……ただオーダーを唱えただけで、何も起きなかったら。俺は無事でいられるのだろうか?
「そんなに呪文を聞いてみたいなら。別に構わないけど、何も起きないぞ! ただのオーダーなんだからな」
ちゃんと言っとかないとな。ソフィアと名乗る獣人ならオーダー唱和後に、俺を滅多刺しとかやりかねないからな。まったく可愛いのに。
ブツブツと文句を言ってると、ニコニコマーメイドが俺の頭を撫でてきた。
「は~い。アオイちゃんの安全は~。わたくしが保障しま~す」
なんか軽いが……仕方なく俺は。オーダーを考えることにした。




