コーヒーブレイク11
「……言質とったからね」
「は~い。言質とられました~」
なんとも毒気を抜くのが上手いというか、天然なのか……。
アクアの顔を見てたらなんだか、どうでもよくなってくる。
エルフ巫女のシーは「御祓で滝に打たれますか?」とか聞いてくるし。虎男のタンは「生け贄は必要か?」だし……。ああ、アジュールもなんか言ってたような気もしたが無視しといた。
傍にいるロロンには、精霊との契約に滝とか生け贄が必要か聞いてみたが、返ってきた答えは必要無いだった。まったく四尻尾議会って俺をなんだと思ってるのか。
まあ、言質とったから大丈夫だろ。仕方がないねとばかりに、いつも仕事でオーダーを通してる姿でも見せとくことにした。
(あっ。でもオーダーシートも書くものもないぞ)
と思っていると。
パァァァとサロンのポケットの中が光りだした。この世界に来る時から制服として着用していた『スタバッグ』のロゴ入りのやつだ。
なんだろうと小首を傾げながらも俺は、光っているポケットをまさぐった。もちろんイヤンなんて物は入っていないはずだ。
「おっ! なんだよ。あるじゃんか」
いつもならサロンのポケットにオーダーシートなんて入れておかないのだが……なぜだかペンも一緒に入っていた。
しかも、取り出してみると馬鹿みたいに分厚い。たしか用意されているシートは百枚綴りなんだけど……今、俺が掴んでいるやつはメチャメチャ分厚かったのだ。
(……なんだこれ? かるく二十センチは厚みがあるけど。いったい何枚綴りなんだよ)
そして、ほんの一瞬ではあったがオーダーシートとペンにキラキラとした糸のような物が俺の小指と繋がっていたのだ! だがそれは一瞬だけ見えると消えてしまった。
まあなにかの勘違いだろうと、俺は気を取り直してオーダーする商品を考えることにした。
ブツブツと基本になる商品名や追加するアクセントなどを考える。
「ダークで。エスプレッソ追加で。ノンファットで。エクストラで――――あんまり普段頼めないのにしよう」
ウンウンと唸りながら考えてる、そんな俺を見守るように周囲の一団はシーンとしていた。時折、緊張しすぎた誰かが「ゴクッ」と唾を飲む音がする。
そんな雰囲気の中、一人の男から聞こえるような呟きが漏れだした。
「……魔法って言ってたよな。いやまさか……まて、ちょ。古の神言語だぞ……」
額から汗を流しながらワタワタしだした男。狐男。でもなんだかダンディーなイケメン狐。
「ダーク? エスプレッソ? 君! ちょっと待ちたまえ。その言語はどこで覚えたのだ」
ツカツカと踵を鳴らして近づいてくるダンディー狐男。
「おい。待て! ティム・グレイ」
虎男タンが、慌ててティムを静止しながら「いったいどうしたんだ?」と言っていたが、俺はすでにオーダーを頭の中で構築させてシートに書き出していた。なんだか分からないが書き込んでいる間に周りで起きていることが耳に入って来なかった。オーダーシートにひたすら書くこと以外は全く気にならなかったのだ!
「オーダー! ベンティ」
俺は通るような声を出してオーダーシートの唱和を開始した!




