番外編
①読書
第三王女ユージェニー付きの執事であるハロルドは、午後の予定の確認のためにユージェニーの部屋を訪れた。部屋の中に入ると本を集中して読んでいる主が居た。
「ユージェニー様、何をお読みになっているのですか?」
「これか?スーロン皇国で流行っている小説だ。昨日、届いてな」
「サクラ様からですか?」
「いや、セイロン将軍からだ」
意外な人物からの贈り物だった。
「随分と集中されてましたが、どのような内容なのですか?」
「うむ。孤児の少女が師を得て強くなる。師と別れた後、波乱万丈な旅を続けて、やっと師と再会する。すると、師はある国の皇族で、少女は養女となり幸せになるという話だ」
「・・・どこかで聞いたことがある話ですね」
「スーロン皇国では庶民から貴族まで夢中の小説だそうだ」
「なるほど・・・ユージェニー様、どうされました?」
「うむ。この話には少女の友達として隣国の王女が登場しないのが不満でな」
「さすがに、そこまで忠実に再現はされないでしょう」
「作者は秘密だがシェンメイ陛下らしい」
「え!?」
②運動
「ハロルド、決めたぞ。私も剣を習う」
ある日の午後、唐突にユージェニーが言い放った。
「はい?剣ですか」
「うむ。サクやカーラを見ていて、私も強くならねばと思ったのだ。なに、兄上たちも習っているのだから、私が習わない道理はない」
「王子様方は男性ですから。それに、ユージェニー様が剣を振るう機会は無いのでは?」
「機会が無くても習っていて損はないだろう」
「・・・陛下が了承されるかどうか」
「そうだな。父上に聞いてみよう。お会いしたいと伝えてくれ」
「かしこまりました」
「ハロルド、許可が出たぞ」
「!?左様でございますか」
「うむ。習ってはならぬ理由はないとのこと」
(あの陛下にしてこの王女ありだな)
「何か言ったか?」
「いえ。ようございましたね」
「早速、サクに手紙を書こう」
③食事
「スーロン皇国で食べた薄い皮に肉が入った料理が食べたい」
ユージェニーが呟いた声をハロルドが拾った。
「はあ、確かギョーザとか言いましたっけ」
「うむ。皮のパリパリ感ともっちり感。なかの肉のジューシーさが忘れられん」
「肉はどうにか用意できても、外側の皮はなんとも・・・」
「そうだ!サクに手紙を書いて送ってもらおう」
(・・・食欲は行動力を生むな)
「ハロルド、何か言ったか?」
「いいえ。私も食べたいです」
後日、手紙を読んだサクからギョーザの皮が大量に送られてきた。スーロン皇国で食べたものとまではいかないが、クリストフ王国流のギョーザにユージェニーは満足したらしい。