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第11話 ゆっくりしていってね、人間さん♪

 半年前、俺たちはシルヴァルトの森で、この世界――フェルナース大陸を支配してる神々と出会った。カリコー・ルカリコンに肩入れしてた火の神(メラルカ)だけじゃなくて、他に何人もの神と。

 稲妻を操り、嵐を呼び寄せる荒天の支配者、雷神ゴドロム。七つの海を統べる海神ザバダ。東西南北、四方の風を娘に持つ風神ヒューリオス。最強の神との呼び声高き、軍神ウォーロ。地上に生きとし生けるものすべてを創造した、大地の女神トゥポラ。天の高みから降り注ぎ、地の底から湧き上がる水の女神チャパシャ。草花と樹木、鳥と獣の王として君臨する、森の神ガレッセオ。

 俺たち三人は、連中と束の間だが顔を合わせ、言葉を交わした。神々が持つ強大な魔法の力を目の当たりにし、俺たち地上の種族を見下す冷酷な支配者としての一面も見た。一方で、謎めいた奴らの素顔――飲むことと食べること、歌と踊りが大好きで、時には夫婦喧嘩したり、考えの違いから喧々囂々の議論を繰り広げたりもする、人間臭い姿を垣間見ることもできた。

 あのとき会った神々が、今また、目の前にいる。向こうも俺たちの存在に気づいて、一人、また一人と近づいてくる。


「おうおう――久しぶりぞ、人間の小僧!」

「シルヴァルトの森でお会いして以来ですねえ」

「そなたら、わしのことを覚えておるかの?」

「…………そこの人間。当ててみなさい、私たち一人一人の名前を」

「ガルちゃん、見て見て~♪ あの人、この前森で会った人間さんだよ~! 妖精さんと魔女さんも一緒みたい♪」

「あーパシャ、わかったからそんなに引っ張るなってぇ、いつも言ってるだろぉ。ったくよぉ……」


 相変わらず、賑やか好きで騒々しい連中だ。けど、こんな辺境の町に、どうして神々が?


「姫さん、こりゃ一体……」

「先程お前に話した『先客』たちだ。三日前――私がこの町へ来たばかりの頃だが、突然この館にお出ましになり、しばらく厄介になると告げられた。それから今日まで、この庭に堂々と居座られ……」

「こうして日夜、宴を繰り広げまくってるってわけか。そりゃまた、一体どうして?」

「神々のお考えなど、私にわかるはずがないだろうっ。ただ地上へ遊びに来られただけなのか、何かお考えがあってのことなのか。とにかく、相手は神々だっ。粗略に扱うわけにもいかないから、見ての通り客人として、丁重に扱っているっ」


 姫さんはまだ話があるみてえだったが、それ以上続けることはできなかった。神々がこっちへやってきて、俺たちをもみくちゃにしたからだ。


「ちょうどよい! 貴様らも加わるのだ、我ら神々の宴にのう!」

「おぬしもじゃ、フォレストラの〈狼姫〉。腹が減っては戦はできまい? 今は浮世の悩みや苦しみなどしばし忘れて、宴を楽しむがよかろう」

「美味い酒と肴には、美しい女性が欠かせませんからねえ。さあ、あなた方もどうぞご一緒に」

「え? いや、ちょっと待ってくれよ、俺たちゃ――」

「そう遠慮するでない、人間の小僧! いざ我らと語らい、歓楽を尽くそうぞ!」

「…………ガル、音楽を頼むわ」

「おう、ポラ姐! それじゃ今回も一曲、景気よくいくぜぇ!」

「ゆっくりしていってね、人間さん♪」


 神々の一人が右手を振り上げ――パチン! 軽やかに指を打ち鳴らし、音楽が始まる(ミュージック・スタート)

 こうして俺たちは、半ば強引に引き込まれちまった。気まぐれな神々が、時に地上の種族を招いて共に食べかつ飲み、歌って踊るという宴――神話や伝説の中で語られる、天上の宴に。


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