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システムE ver.2  作者: 八澤
第三話 トイレに入った後のヤ暮ったい女子高生が見せるわかりにくいサインを見逃すな
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ver.018


 店の外で、マコが階段に座って待ちくたびれていた。私達の姿を確認すると、ひょこっと立ち上がり、声をかけてくる。

「大丈夫だった?」

「見りゃわかるでしょ。やっぱり、ミナミの攻撃が効いたね。それよりも、加勢に来い馬鹿。私達がモドキと闘っているのをずっと見ていただろう」

 マコは小さく舌を出して謝る。「ごめんごめん。でも、どうせ俺が行っても意味無いじゃん」

「モドキがあんたを殺している隙に攻撃するくらいは出来るでしょ」

「うわ、囮かよ。非道い。もしこの世界に弟に対する非道い仕打ちする姉トーナメントがあったら、ねーちゃんは絶対に優勝狙える!」冷やかすような口調でマコは言った。

「否定はしない。ってか邪魔だから、どいてどいて」

 しっしとマコをどけて、道に出た。さっと辺りを見回したけど、誰も居ない。モドキの仲間がすぐに集まってくると思ったけど……。

 いや、待ち構えているのかもしれない。

「じゃあ、先へ進もうか」

「どこに? 逃げても、また偽物が襲って来るよ」マコが口を尖らせた。

「だから、そのボスを倒しに行くの」そのまま進もうとしたが、ミナミに腕を引っ張られていた。

「あの、それは、親玉の居る場所がわかったんですか?」

「うん」

 二人は「どこに!」と同時に声を上げる。

「多分アレで合っていると思う」

「アレ?」

「そう、アレ。近くに居るじゃん。ほら、すぐそこに……」

 私が指さすと、二人は同時に振り向いた。その先には、観覧車を中心としたアトラクションが、無造作に立ち並んでいる。

「遊園地? あれ全体が、もしかして、敵なの?」

「違うって。よく見てよ、あそこにあるでしょ――メリーゴーランドが……」

 フードコートを出て、十メートルも離れない場所に、メリーゴーランドがあった。相変わらずくるくると音楽をまき散らしながら回り続けていた。

「あれが敵?」

「タブンネ。まぁ、間違ってはいないと思うけど」

「でも、どうしてねーちゃんはわかったの?」

「私達が最初にこの遊園地に入った時を思い出してね、で、その時に、目に入ったのが、メリーゴーランド」

「そうだっけ?」 

「そんぐらい覚えとけ。で、次に、観覧車のゲートに触って、アトラクションが動き始めた後、私達はトイレに行ったよね。その時に、近くにはお化け屋敷と、メリーゴーランドが廻っていた」

「嘘、マジで! あ、そういや、ねーちゃんを助けたのも、メリーゴーランドの前だったような……。でも、違う種類なんじゃない。この遊園地に、メリーゴーランドが二つあったりして」

「いえ、あれは最初に眺めたメリーゴーランドと一緒でした」ミナミが反論した。

「でももしかしたら、この遊園地にはメリーゴーランドが同じモノが二つあったりして」

「そんな遊園地聞いたことが無い」

「ここは、普通じゃないし……」

 やけに食い下がるマコを納得させるために、私は歩き始めた。マコとミナミもついてくる。百メートルほど距離を取ってから、振り返ると、少し離れた場所を、メリーゴーランドが廻っていた。

 さっきまで、存在しなかった場所で、だ。

「うぉ、ホントだ。恐ぇー。音も立てないで近づいてきてる……」

 メリーゴーランドは、多分今までのモドキの本体だろう。板に書いてあった絵を思い出すと、あれには球体のような部分があり、そこから紐がいくつも伸びていた。その球体の部分が、多分メリーゴーランドだ。私達人間に成り済まして行動できるほどの擬態能力を備えているのなら、メリーゴーランド程度に化けて私達を監視する程度、お茶の子さいさいに決まっている。

 個人的には、あと二つほど目星をつけていたけど、今の移動からメリーゴーランドが本体で間違いないだろう。

「ミナミ、さっきレベルアップして新しいスキルを手に入れたでしょ、ちょっと見せてくんない?」

「え、あ、はい。そうえば、私、スキルが増えていたんですね」

 ミナミはやっと元の元気を取り戻したかのように小さく微笑んだ。が、ケータイを開いた途端に、その笑みが消えてしまった。震え始めた。さっきからずっと握っている手から、短い振動が伝わってきた。ミナミは口元を拭うように顔を障り始めた。汗が噴き出たわけでもないのに、繰り返している。

「ん、ミナミ?」

 私の声で我に帰り、ミナミはケータイを手渡してくれた。「すみません、ちょっと、いや、なんでもないです。はい、これが新しい私のスキルです」


ひあぶりのけい

特殊

タイプ――炎

消費SP 5

広範囲に広がる炎の波を生み出す。

【指先よりも小さなそれは、強い熱を体に残していく。もう、この傷は消えないだろう。幸いにも、誰にも気づかれないような場所だったからよかった。……いや、誰にも気づかれないような場所に、傷をつけられたのか】


いつまでもさむい

特殊

タイプ――氷

消費SP 7

対象一体に向かって、全方位から細かい氷柱を何本も突き立てる。その氷は付着すると、相手の行動を妨げる。

【雪が降る。皮膚を切り裂くような風が通り抜けていく。その中で、じっと待っていた。あの暖かい世界に、入ることは、絶対に不可能なのだから】


じっけんだい

特殊

タイプ――雷

消費SP 7

相手に触れることで発動することが可能。強烈な電を放つ。

【身動きを封じられ、放たれた痛み。どこからか聞こえる笑い声が脳内で反射していた。湿りが、足元を撫でている】


「この三つは、ミナミの最初のスキルの上位系だね。威力とか範囲が強くなる代わりに、消費【SP】が大きくなるってやつ。で、この新しいスキルなんだけど、……奥義?」


うチかラばクはツ

特殊 奥義

タイプ――万能

消費SP 1

一つの戦闘中において、【アツイ】【ツメタイ】【イカツチ】の三つ、あるいは、それらの上級スキルの三属性を全て使うことにより、使用可能となる。対象の内部から超強力な爆発を起こす。

【様々な感情の入り乱れが起こって何もわからないし、それを理解したくなかった。裏切られたのではない。最初から、味方ではなかったのだ。敵だった。敵を味方だと信じて、行動を共にしていただけなのだ。それを、認めたくない】


 ※タイプ――万能について。万能は、全ての属性に対して有利に働き、相手のいかなる防御も打ち破ることが可能。


「な、なんかすごいね……」

「うわ、スキルの使用条件がめんどい。一戦闘中に全て使わなきゃいけないんでしょ。【SP】の回復を待ちながら、いけないのか」

 ケータイをミナミに返した。ミナミは、その画面を見ずに、ポケットに入れてしまった。そして、じっと床を見て、何も声を発しなくなる。

 ……何かあるんだな。ミナミのスキルから察するに、名前かな。私やマコのような中二的な色合いを帯びてはいない。そんなことを考えていると、その名前を、どこかで聞いた、あるいは見たことのあるような、そんな不思議な気持になる。フレイバーテキストも、訳有りな匂いがギュンギュンする。まぁ、今は本体を倒しに行くという問題があるので、このことは後で真剣に考えることにした。


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