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黒之戦記  作者: 双子亭
第1章 戦火の花嫁
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『ちから』第1話

2ヶ月投稿することができず、すみませんでした。

   リトルベルク傭兵ギルド前ーーーー




「…………」

「てめぇ、ウィリアムか」



 傭兵たちの前に立ちはだかった赤髪の美少年は一言もしゃべらず、また彼らと視線を交わすこともなく、その両方の紅眼は……



(……さっきから俺、ガン見されてるな)



 そう、少年が現れてからずっと俺は見られ続けている。見方によっては睨まれているとも捉えることができるが、もしそうだとしても、恨まれる理由が思いつかない。立場上、一部のヒトからは恨まれてはいるが、彼がそういった部類の人間だとは思えない。



「おい、ウィリアム! てめぇ、いったい何しに来た!」

「………む、おぉそうだった。お前たち、経験豊かな傭兵ならば喧嘩を売る相手ぐらい見分けるようにしなくてはな」

「ぁあん? どういう意味だ」

「そこのローブを纏った御仁はな、リーネンブルク侯爵の下で政を任されている者で、名を『ユウキ・サイトウ』という方だ」

「………」

「信じてないようだな。ならば右手を見せて貰えば証明となる物があるはずだ」



 ウィリアムという少年に言われて、俺は袖を巻くって右手が見えるように前へつきだした。右手の人差し指には指輪がはめられており、牡羊の頭が刻まれていた。



「リーネンブルク侯爵家の紋章である、牡羊が刻まれた指輪をもつこの方は間違いなく侯爵家に関わりをもつ人間だ。………剣を納めよ」

「………ちっ」



 傭兵たちは剣を納めると俺と少年の前から立ち去ろうとした。



「おっと、忘れておった。お前たち、その女子おなごに剣を返すのだ」

「ふんっ」



 そう言うと、傭兵は少年に剣を投げつけて立ち去った。



「まったく………。 サイトウ殿、お怪我はないか?」

「あっ、大丈夫です。 ………アレイン、立てるか?」

「むっ、何とか」



 アレインに肩を貸しながら立ち上がった俺は、少年と向き合った。



「助けていただきありがとうございました。私はご存知かと思いますが、『ユウキ・サイトウ』と言います。こちらは友人の『アレイン・ゲイルバーグ』です」

「私は『ウィリアム・クリスフォード』という、しがない傭兵だ。よろしく頼む」

「それで、クリスフォード君は彼らのことを知っているんですか?」

「あぁ、ある商人の護衛でいっしょになってな。それだけだ」

「そうですか」

「もう用がないなら私は去っても良いだろうか。長旅で碌なものを食べていないから腹が減っているんだ」

「あ、はい。いいですよ」

「それと、この剣はあなたからあの女子おなごに返してあげてくれ」

「わかりました」



 そういうと、クリスフォード君は傭兵ギルドの中へと姿を消していった。彼から渡された剣を俺は眺めた。鞘は全体が白く、金で装飾がされていて、剣の柄は金で出来ており唐草模様が彫られていて、中心には赤い宝玉が埋め込まれていた。仕事上、高価な物品をたくさん見てきたが、こんなに美しく輝くぎょくは見たことがなかった。



(何のぎょくだろう………)



 ただ、そうただ純粋にそう考えただけだった。しかし、俺は次の瞬間に起こった出来事に驚きを隠すことが出来なかった。





 ――――火霊結晶『アルテノンの宝玉』 





(えっ?!)



 ふいに頭の中に浮かんだ言葉に俺は驚いた。剣の柄の宝玉に触れながら疑問に思っただけなのに、何故このようなことが起こったのか皆目見当がつかなかった。しかし、頭に浮かんだ言葉には心当たりがあった。



 『アルテノン』……四代精霊統治時代に火霊神ルークムントの下で『火の民』を治め、影の侵攻の際には先陣を率いて戦った英雄の名前だ。



 その名を冠するこの宝玉は、相当の価値か能力ちからを有するのだろう。しかし、何故そのような物をこんな娘が?



(まぁ、こんな娘にあまり深く追究するのもあれだしな………)



 俺は振り向くと、少女に向けて剣を差し出した。



「はい、これだけきれいな剣だとまた誰かに取られてしまうかもしれないから、布か何かで包んで持ち運びなさい」

「………あ、ありがとう」



 その剣を受け取ると、少女は走り去ってしまった。



「さて、俺たちもそろそろ………ん、どうした、アレイン?」



 アレインの方を向くと、アレインはさっきの傭兵が入っていった傭兵ギルドの方を見つめていた。



「………アレイン?」

「いや、何でもない。それよりも何かあの剣を見て考え事をしていたみたいだが」

「ん、いや、まぁ……… あ、体は大丈夫か? 家まで送ろうか」

「問題ない」

「だが、念のために………」

「俺に構っている暇はないと思うぞ」



 そういうと、アレインは通りの先を指さした。その方向から、一人の少女がこちらにむかって駆けているところだった。赤い髪に赤い猫耳の侍女服を着た少女、ネルは俺の姿を見つけると手を振りながら走ってきた。



「ユウキ様! お探ししました」

「ネル、どうしたんだそんなに慌てて?」

「はい、えっとですね、イリーナ様が天気が良いのでお昼を外で食べられるのですが、ユウキ様も一緒にどうかと訊いてきて欲しいと頼まれまして………」

「あぁ、わかった。是非ご一緒させていただくよ。アレインはどう?」

「俺は遠慮させていただく。先の闘いで少し体を痛めたからな、イリーナ様にはよろしく言っておいてくれ」



 アレインは俺から離れると人ごみの中へと紛れていった。

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