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黒之戦記  作者: 双子亭
第2章 雲海の古城
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『化け物退治へ』第1話

長いこと投稿出来ず、申し訳ありませんでした。

    アルザス地方、ケルト砦ーーーー









 村長宅で村長と話した後、俺はケルト砦へと兵を移動させた。いつまでも村の近くに駐屯させておくと村にも迷惑がかかる上、砦の方が活動の拠点としては最適だと判断したからだ。ケルト砦は村から山裾に沿って半日程歩いた場所にあり、丁度、竜臥山脈の入山口にあたる所にある。ケルト砦は木組みの仮設砦ではなく、壁は石を積み上げた石壁で周りを堀が囲んでいるかなり堅牢な永久砦だ。その上、若干古いが大型の弩砲もいくつか備え付けれている。



 アルザス方面の領軍の拠点ともなっており、俺自身この砦が何故こんな所にあるのか、何故これ程の装備を持っているのか疑問が尽きないが、



(デカいな、ホント)



 俺は外壁の上を砦の守備隊隊長の案内を受けながら、砦の見張り塔にかかる侯爵家の旗を仰ぎ見ながらそう感じた。



「閣下、こちらが件の外壁です」



 隊長が指差した場所は、地面に対して垂直に3本並行に走った大きな傷跡だった。



「数日前まではこのような損傷は見られなかったのですが、霧が出た翌日にはもう傷跡がありました」

「霧?」

「はい、この辺りではよく発生していまして、隣りにいる者の顔が分からなくなるくらい濃い霧が出ます」

「なら、化け物の姿を兵は誰も見ていない、と」

「はい、このような傷を熊や狼が付けれるとは思いませんし、村の方では化け物の目撃情報もあったのでそれではないかと」

「ふむ……… 他に異常はないか?」

「そうですね……… そういえばここ最近、山の方で狼の群れを見なくなった気がします」

「そうか…… わかった。それじゃあこれから山の方へ調査へ行ってくるよ」

「ハッ、お気をつけて下さい」



 外壁を降りて、砦の門の前に行くとそこには50人の兵士とそれを率いるアメリアと護衛のアヤノが待機していた。



「閣下、部隊の準備完了しました」



 アメリアが敬礼しながら報告するのに、俺は頷き、アヤノの方を見ると、



「………アヤも準備できた」



 アヤノもハルバードを引っ提げ、愛馬の側で眠そうに答えた。その愛馬は頭を下げて1人の少女に撫でられていた。その少女というのが俺のことを魔王と呼んだ少女、リリアだ。



 俺のことを魔王と呼んだ後、いろいろと大変だった。村長は驚きの声を上げると同時に地に頭を付けて謝罪の言葉を叫び続け、アメリアは腰の剣に手を掛け、その様子を見た村長の妻が恐怖にかられて叫び声を上げ、その一連の騒動を聞きつけた兵士達が部屋の中に押し寄せ、俺が止めなければ血なまぐさい事が起こっただろう。



「リリアちゃんも、いいかい?」

「うん」



 リリアをアヤノの馬に相乗りさせ、俺も騎乗するとケルト砦を出発した。









    竜臥山脈、山道ーーーー









 ケルト砦から出発して、数時間が経った。まばらだった低い木々も背の高い針葉樹へ、地面も踏み均されていたのが、デコボコした山道へと変わっていった。振り向くとケルト砦に掲げられていた侯爵旗が木々の間から見えていた。



「ふぅ。リリアちゃん、君が化け物を見たのはこの辺りかい?」



 俺の言葉に対して首を横に振って否定するリリアは何やらアヤノに耳打ちした。



「………まだ、先だって」

「そうか……」

「閣下、少し………」



 アメリアに呼ばれ、少し歩速を下げ、アメリアと並んだ。



「ケルト砦からもう大分離れてきました。子供の足で半日でここまで来るのは無理だと思いますし、ここまで来て何の形跡もありません」

「そうだなぁ………」



 俺は少し前を歩くアヤノを見て、唸った。確かにアメリアの言うとおりだ。ここまで来て特に変わったこともない。そもそもリリアがここまで来れるのか、何故ここまで来たのか、という話しを聞いていない。



(早急すぎたか………)



 リーネンブルクで話しを聞いた時、もしかしたら俺がここに来た理由が分かるかもと思い、こんな北部の辺境まで来てしまったが、もっと事前調査をしてから来れば良かったと半ば後悔し始めていた。



 と、そんな時だった。



「エイジアス殿!」



 兵士の声を聞き、前を見るとアヤノが急に駈け出していた。



「アヤノ!」

「チッ、全隊、駆け足! 遅れるな!」



 俺がアヤノを追いかけ、アメリアが部隊の移動速度を速めた。先行するアヤノは徐々に速度を速めて、部隊から離れて行こうとするのを俺たちは必死に追いかけた。









    竜臥山脈、裂け谷ーーーー









 アヤノを追いかけて馬を駆けて、いつの間にやら今まで草木が周りを囲んでいたのが、片方を反り立った崖をもう片方は深い谷底を川が流れているような道に出てきていた。道幅は馬で通れる程はあるがアヤノのように上手く馬を操ることが出来ず、また部隊を率いるアメリア達も細道な為、思うように進むことが出来ず、自然と俺はアヤノとアメリアから離れる形となった。



「アヤノ! 待て!」



 声の限りに叫んでみたが、谷底からの風によってなかなかアヤノには届かない。日も傾き、空一面を赤く染めていて、もう少しすれば夜空になってしまう。夜になると追跡も難しくなることを考え、若干焦り初めていた時だった。



「グォォオオオオオオオオオオ!!!!」

「っ!」



 地鳴りのような音が辺りを鳴り響き、馬が驚き俺は御しきれず、振り落とされてしまった。上手いこと受け身がとれたおかげで特にケガをすることもなかった。俺は後ろを振り返って確認するとアメリア達が必死に馬を抑えていた。前を見るとアヤノも馬をとめてある方向を睨んでいた。いつものアヤノと違う、研ぎ澄まされた剣のような近づきがたい雰囲気を出しており、しばらく目を奪われたが、アヤノが何を見ているのか気になって彼女が見ている方向に俺も視線を向けた。



「な、何だよ、あれは………」



 この世界は元の世界と違うが、今までゴブリンやオーク、コボルトといった魔物は確認されていなかったから、いないものだと思っていた。だが、そんな先入観を簡単に崩してしまうような存在が谷を挟んだ崖の上にいた。



 それは一言でいえば、『狼』と言えるだろう。だが、元の世界の狼とは大きくことなるし、この世界の狼とも大分違っていた。身体は赤紫色で黒色の立髪を、前足には大きくて鋭い爪があった。頭には捻れた黄金色に輝く双角を持ち、紅眼は妖しく輝いていた。だが、何と言ってもその大きさが、象と同じくらいの大きさであることからもあの『魔物』の威圧感を増しているのだろう。



 そう、俺の前にいるものは、この世界の古の伝承に出てくる『魔物』と呼ばれるものが目の前に現れたのだ。



「グォオオウ!!!」

「なっ!!」



 魔物は谷をやすやすと飛び越え、俺とアメリアの間に着地した。



「ユウキ! 伏せて!」



 アヤノの声を聞いて俺は頭を抱えて地面に伏せた。魔物の吠え声や馬の嘶き、鉄と鉄がこすれる音やぶつかる音、様々な音が聞こえてきた。



 怖い。



 そう、ただただ恐怖を感じていた。クレヴァーでの撤退戦の時はそれ程に感じなかったが、今はものすごく怖かった。頭を抱える手は震え、地面に擦りつけている顔を上げることは出来なかった。



 そうしていると音がピタリと止んだ。少しだけ頭を持ち上げて周りを確認しようとした時だった。



「ユウキ!」



 横から殴られたと思ったらすぐに浮遊感を感じた。



「う、そだろ………」



 意識が徐々に遠ざかる中、視界には崖道で狼の魔物とそれと果敢に戦うアメリア率いる部隊、そして、



(何、やってるんだ………)



 俺と一緒に落下しながら必死に手をのばすアヤノの姿が映った。俺は手をのばそうとするが彼女の手を掴む前に意識を手放してしまった。

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