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甘いは幸せ。33歳、スイーツとお酒で幸福休み  作者: まろじろう


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1/5

第1話 苺ショートと『幸せの始め方』

土曜日。


午後八時。


「お疲れさまでしたー!」


河合菜々子、33歳。


本日の仕事。


終了。


スーパーの従業員用出入口を抜ける。


外の空気。


「ん~~っ!」


両腕を上げて。


ぐーっと伸びる。


終わった。


そして。


明日は休み。


つまり。


今から。


私の時間。


「さて」


菜々子には。


休み前の楽しみがある。


スイーツ。


そして。


それに合いそうなお酒。


甘いものだけでもいい。


お酒だけでもいい。


でも。


二つ合わせたら。


もっといい。


それを探す時間も。


楽しみの一つ。


今日のスイーツは。


もう決まっている。


仕事へ向かう途中。


いつも前を通る小さな洋菓子店。


ショーケースの中に。


ずっと気になっていたものがある。


苺のショートケーキ。


真っ白な生クリーム。


赤い苺。


ふわっとしたスポンジ。


王道。


だからこそ。


食べたい。


「まだあるかな」


少しだけ。


足が速くなる。


店に入る。


ショーケース。


見る。


「…………」


いた。


残り。


二つ。


「苺のショートケーキ、一つください」


確保。


「よし」


次。


お酒。


近くの酒屋へ。


棚を見る。


赤。


白。


ロゼ。


スパークリング。


「うーん……」


今日の相手は。


苺。


生クリーム。


スポンジ。


甘い。


でも。


苺の酸味もある。


「だったら……」


手に取る。


小さめのボトル。


辛口のスパークリングワイン。


「これ」


決定。


帰宅。


「ただいまー」


もちろん。


返事はない。


一人暮らし。


靴を脱ぐ。


バッグを置く。


上着を脱ぐ。


ケーキ。


冷蔵庫へ。


スパークリングワインも。


冷蔵庫へ。


「…………」


今すぐ。


食べたい。


でも。


まだ。


菜々子は部屋の隅を見る。


丸めて置いてある。


エクササイズマット。


――バサッ。


床に広げる。


仕事から帰ってきた服。


そのまま。


着替えない。


どうせ。


これから。


汗をかく。


だったら。


このままでいい。


洗濯物は。


少ない方がいい。


首に。


タオル。


そして。


もう一枚。


頭へ。


キュッ。


タオルバンダナ。


鏡を見る。


「…………よし」


準備。


完了。


スマホを手に取る。


お気に入りのプレイリスト。


もちろん。


推し。


タップ。


――♪


イントロ。


菜々子の口元が上がる。


「エクササイズ、スイッチオン!」


スタート。


腕。


上。


横。


ステップ。


ステップ。


身体をひねる。


「いち、にっ!」


リズムに合わせる。


腕を伸ばす。


脚を上げる。


「ふっ!」


別に。


スイーツを食べるためだけじゃない。


推しの曲で。


身体を動かす。


楽しい。


それに。


33歳。


若く見られたいわけじゃない。


無理して。


若い子みたいにしたいわけでもない。


でも。


「いつまでも可愛く見られたいもん」


それくらい。


いいでしょ。


――♪


曲が変わる。


汗。


じわっ。


首のタオルで拭く。


「ふぅー!」


頭に浮かぶ。


冷蔵庫。


その中には。


苺ショート。


スパークリングワイン。


「…………」


もう一曲。


――♪


「よしっ!」


動く。


踊る。


汗をかく。


食べたいものを。


我慢する?


そんな選択肢。


最初から。


ない。


食べたい。


飲みたい。


だったら。


動く。


それだけ。


――♪


曲。


終了。


「はぁーっ!」


両手を膝につく。


汗。


びっしょり。


「頑張った!」


タオルバンダナを外す。


首のタオルも取る。


そのまま。


お風呂へ。


シャワー。


汗を流す。


髪を乾かす。


お気に入りの部屋着。


形は。


シンプル。


でも。


色は。


少しだけ可愛い。


鏡を見る。


「うん」


これくらいが。


ちょうどいい。


そして。


夕飯。


ちゃんと食べる。


スイーツがあるから。


夕飯を抜く?


それは。


違う。


普通に食べる。


でも。


お腹いっぱいには。


しない。


食べ終わる。


片付ける。


「ごちそうさま」


お腹。


いい感じ。


でも。


「…………」


まだ。


終わりじゃない。


むしろ。


ここから。


私の幸せは。


さらに。


高まる。


冷蔵庫。


オープン。


「お待たせ」


誰に?


決まっている。


苺ショート。


そして。


スパークリングワイン。


箱を取り出す。


ボトルも。


テーブルへ。


箱。


オープン。


「…………!」


苺。


生クリーム。


スポンジ。


白と赤。


やっぱり。


可愛い。


「いいねぇ」


次。


スパークリングワイン。


栓を開ける。


――ポンッ!


「おっ」


グラスへ。


シュワァァァ……。


細かな泡が。


上がっていく。


「いいじゃん」


座る。


まずは。


スパークリングワイン。


グラスを持つ。


「今日もお疲れ。私」


キュッ。


「んっ!」


辛口。


炭酸。


すっきり。


仕事終わり。


エクササイズ終わり。


お風呂上がり。


夕飯も食べた。


そして。


明日は休み。


ここからが。


私の。


ご褒美時間。


フォーク。


苺ショートへ。


上から。


すっ。


生クリーム。


スポンジ。


そして。


苺。


全部。


一緒に。


持ち上げる。


「…………」


パクッ。


一瞬。


止まる。


次の瞬間。


「ん~~~~っ!」


両腕。


ぐーーーーっと。


上へ。


脚も。


ぴーーーーん。


身体いっぱい。


伸びる。


「しあわせぇ……」


生クリーム。


ふわっ。


甘い。


でも。


重くない。


スポンジ。


しっとり。


そこへ。


苺。


甘酸っぱい。


「これ好き!」


もう一口。


パクッ。


「ん~~っ!」


また。


伸びる。


そして。


スパークリングワイン。


キュッ。


「…………!」


合う。


ケーキの甘さ。


生クリームの余韻。


そこへ。


辛口。


炭酸。


すっと。


流してくれる。


そして。


口の中が。


もう一度。


ケーキを欲しがる。


「なるほどね」


パクッ。


キュッ。


「ん~~っ!」


パクッ。


キュッ。


止まらない。


菜々子はフォークを置く。


グラスを持つ。


今日も。


働いた。


身体も動かした。


汗もかいた。


お風呂にも入った。


夕飯も。


ちゃんと食べた。


そして。


今。


大好きなスイーツ。


それに合わせて選んだ。


お酒。


一人。


33歳。


独身。


「…………」


だから?


菜々子は笑う。


仕事して。


好きなものを買って。


推しの曲で身体を動かして。


ちゃんとご飯も食べて。


好きなスイーツを食べて。


好きなお酒を飲む。


今。


こんなに。


幸せなのに。


最後。


苺。


フォークで。


持ち上げる。


パクッ。


「ん~~~~っ!」


両腕。


ぐーっと。


上へ。


脚も。


ぴーん。


身体いっぱい。


幸せを。


伸ばす。


そして。


笑う。


「甘いは幸せ」


スパークリングワイン。


キュッ。


河合菜々子。


33歳。


至福の休日。


始まります。

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