第79章 アンタッチャブル(触れる事のできない者)
「大罪人リュシア・エーベルハルト元伯爵令嬢!王命により、お前を討つ」
レン・タナカ将軍は、私に剣を突きつけた。
まだ若い。十代だと聞いていたが、本当にそれくらいにしか見えなかった。
だが、その目だけは違う。
何人もの命を見てきた人間の目だった。
「その様な不名誉を受ける記憶が無い!」
私は叫ぶ。
こんな場所で、大罪人扱いされる覚えなど無い。
「王命である。是非も無し!」
彼は、剣を構える。
次の瞬間だった。
私の後ろの二人、エドガルとアベルトゥスの足元の地面が高く盛り上がり、見上げるほどの高さへ連れていく。
「なっ――!」
エドガルが体勢を崩す。
その上で二人は、突然現れた鉄の牢獄に囚われる。
鉄格子は分厚く、鈍い光を放っていた。
「馬鹿な、何の詠唱も準備も見られなかったぞ」
アベルトゥスが驚きつつも魔法で牢を破壊しようとするが、何故か魔法が打ち消される。
魔力が牢へぶつかった瞬間、煙のように霧散した。
「お前達に用は無い」
将軍は、私に手を向けた。
何かの気配が私の前で破裂する。空気そのものが砕けたような衝撃だった。
咄嗟に剣を前へ出す。
耳を裂く轟音と共に、地面が大きく抉れた。
「馬鹿な。本来なら今の一撃で塵になるはずが」
彼は、驚きの声を漏らす。
私は剣を握る手に力を込めた。
刀身が、熱を持ったように震えている。
「その剣から力を感じる。その剣のせいか」
今度は、私の剣のあたりで気配が破裂する。
凄まじい衝撃が腕へ走る。
だが、剣は折れず、砕けもしない。
「やはり、破壊出来ない。魔剣か聖剣の類か?そんなものがあるとはな。魔法に対するアンタッチャブルというわけか。ならば、こうするまで!」
私の足元の地面が消え、大穴が出来る。
崩れた地面と共に、体が落下した。
そこに落下しそうになった時、体がふわりと宙に浮いた。
いつの間にか現れた、私が助けた小ドラゴンが私を掴んで空に舞い上がる。
小ドラゴンは、私の2倍ほどの大きさに成長していた。
「お前……!」
風が唸る。地面が一気に遠ざかった。
その直後、将軍の周囲から現れた無数の鉄の刃が、こちらに向かって飛んでくる。
空を埋め尽くすほどの数だった。
小ドラゴンが大きく羽ばたく。
宙を舞って、それを次々避けていく。鉄刃が掠めるたび、空気が裂けた。
私は体勢を変え、剣を構える。
そして、そのまま宙から将軍に切りかかる。
レン・タナカ将軍は、その斬撃を軽々と受け止めた。
金属音が響く。
重い。
だが、押し返される。
私は続けて斬る。
肩、首、胴。
何度も連続で攻撃するが、全て見切られる。
彼は最小限の動きで防いでいた。
まるで、こちらの剣筋を最初から知っているみたいだった。
私は一度距離を取る。
「面白い。ならば!」
彼の周囲に砂煙が現れ、それが私の前に吹き付けられる。
視界が一気に茶色に染まった。
次の瞬間だった。その砂煙が轟音を上げて爆発する。
全身を叩き潰されるような衝撃。
私と小ドラゴンは、地面に叩きつけられた。
肺の空気が全部抜ける。
地面を転がり、何とか剣を支えに起き上がる。
小ドラゴンも苦しそうに鳴いた。
「もういい、お前は逃げろ……」
私が、何とかそう言うと、小ドラゴンは頷いて飛び去った。
その背中が、空の向こうへ消える。
「終わりだ」
将軍が言うと、私の体を砂山が持ち上げる。
これが爆発すれば、ひとたまりもない。
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