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勇者科でたての40代は使えない 【ファーストシーズン完結】  作者: 重土 浄
第十話 目白駅 「おじさん、大量の若者たちと共闘する」
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 「じゃあ、交渉成立ってことで」


 「お互い納得済みってことですわね」


 両リーダーが握手をして、この奪い合いが冒険者の掟に則った戦いであることが宣言された。


 セイカはシンウと話すこともなく、その場からすぐに去った。尾地は他のパーティーメンバーに手を振って去っていく。「裏切り者ー」等の罵声を浴びながら。




 帰路についたセイカと尾地は、コンクリの丘を登る。


 セイカは無言である。尾地はヤレヤレといった感じだ。若い子の悩みなんて中年の手に負えるものではないが、放っておいていいとも思わなかった。


 「シンウさん…幼馴染と話をしなくていいんですか?」


 その言葉を聞いて、バッとセイカが振り返るが、顔は怒りと恥ずかしさが半々。尾地を睨んだが、すぐに顔をもとに戻した。


 しばらく無言の後、


 「シンウとは家がそばで…」


 「それは彼女から聞きました」


 尾地は会話をスキップした。


 「彼女との間にわだかまりがある。了解了解、そこは理解しました。で、どうします?」


 「どうって、なに!」


  尾地のドライな対応に怒るセイカ。


 「まず、リーダーとして、そのわだかまりは今回の作戦に悪影響を与えないか?他のメンバーへの影響は?」


 尾地の言葉に少し迷ってから


 「なにも影響ありません!私事ですから。他のメンバーへの接し方の変化も、しません。するはずもない!」


 「じゃあ大丈夫ですね。ご自覚出来ているようですから…では自覚できてない方から」


 「自覚…出来てないほう?」


 「シンウさんと仲直りしたいんですね」


 「…!」


 セイカは言葉が止まり、足も止まった。


 「わた…わたしは!」


 尾地は彼女が言うのを待っている。


 「仲直りなんて!」


 「したくない?彼女が嫌いですか?」


 尾地は詰める。


 「幼馴染と言えどただの、近所にいた知人んの一人でしかありませんからね。セイカさんも御友人はご自分の手で選びたいでしょうし」


 「あの子は…!」


 「あの子は?」


 セイカは黙った。言葉が吐き出されるまでに時間がかかった。


 「あの子と一緒に冒険者になるって言ったのに!一緒じゃない。一緒になれなかった!」


 ようやく現状の不満を吐き出した。


 その彼女を見て、尾地は教えることにした。


 「シンウさんもそう言ってました」


 「シンウが?」


 「お互いが約束を破ったと、後悔してましたよ」


 セイカは息を吐きながら灰色の天井を眺めて


 「あの子も…」とだけ呟いた。



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