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国母セルア  作者: 小松しま
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 彼らの言いようは、あまりにもうがち過ぎだ。

 だが、若者たちはその仮定が大層気に入ったらしく、勝手に「そうである」、「ラーダこそが、この事態を招いた元凶だ」との展開を続ける。

 さすがに、古参の者たちが苦言を呈した。

 今は、言葉遊びなどをしていて良いような状況でないのだ。

「とにかく、ラーダ殿に御助力を請いたい。起死回生の妙策を、どうかお授けくだされ」

 外野のざわめきを振り払って、副元帥は懇願する。

 ラーダは、それに困り顔を見せた。

 あまりにも大きな期待を寄せられ、一介の騎士に過ぎない身には荷が重いと訴えたが、更に副元帥が懇願を繰り返す。

 やむなくラーダは、役に立てないと思うが……と、前置きをした上で、了承を示した。

「……率爾ながら、詳しい戦況を御説明願えますか? 陣営や戦力の推移の把握もできておらぬ門外漢の身でございますため……」

「お、おお。確かにその通り!」

 副元帥が喜色を浮かべるのに、重鎮の一人が卓上の地図を示す。

 両軍の布陣がこと細かに記されていた。

 だが、曖昧な部分も多い。

 もはや、まともな諜報組織も機能していない可能性が高かった。

 凝視するラーダはしばしの思案の後、副元帥や重鎮たちに鋭い問いを重ねる。

 実に的確な指摘ばかりだが、軽佻浮薄な青年貴族たちは、全く意味を読み取れなかった。



 ややして、ラーダは瞬いた。

「……誠に申し訳ございませんが、もはやこれなる若輩者には、いかなる活路も見いだせません」

 苦しげに奏上すれば、側近たちは鬼の首を取ったように雑言を発する。

 彼らはここに至ってなお、陥っている事態の重みを理解できていないらしい。

「何と……」

「そのような……」

 副元帥も重鎮たちも、目に見えて落胆した。


「そなたなら、何かしら策があるはずです」


 それまで沈黙を守って来たエテルティアが立ち上がって告げる。

 途端、議場に沈黙が貫いた。

 重苦しい空気の中、ラーダは眉を寄せて首を振る。

「本当に……もはや、何の術もないのです。地の利を活用したイブリールの包囲網は、完璧。たとえ、外国からの援軍が背後を攻撃したところで、前後の挟み撃ちもかなわない形の布陣がなされております」

 その言葉に、弾けたように副元帥が地図に目を走らせた。

 四方八方に視界を滑らせ、しばしの後、それに同意の失望を表わす。

 全くラーダの言う通りだった。

 イブリールの布陣は、細い道筋の果ての開けた場で四方向への警戒を果たす形を取って分散しており、各陣営を別個撃破しようにも、目的地への到達前に集中攻撃を受けるのは間違いなく、まともに応戦すらできないまま壊滅を余儀なくされるだろう。

 彼らの監視下にあって、ひそかに兵を移動させ、万全の構えを果たすなどかなうはずもないのだ。

 よって、内からも、外からも、突き崩すのは不可能であると告げられて、一同の肩が落ちた。

「この期に及んで、何の攻略がかないましょう。まだ、交渉する余力がある内に……どうか、殿下……」

「お黙りなさい!」

 降伏勧告など断じて受け入れられないため、エテルティアはラーダの進言を遮る。

「で、ではっ、お父上さまにお出まし頂いては?」

 重鎮の一人が提案する。


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