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国母セルア  作者: 小松しま
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 しばしもせずに、皇帝代行セルアは、第三皇位継承権を有するレフィラ男爵夫人・巫女ファウラに、市民救済に関する一切の権限を委ねた。

 あくまでも政治向きとは別問題との名目で活動の自由を保障したのである。

 ファウラは謹み入ってそれを受け、早速行動を開始する。

 予めある程度の準備はできていたので、さしたる時もかからず、サザルに向けて出立する段取りが組まれたのだが、その際に、特別な許可を受けて、侍女を一人同行させた。

 セルアが輿入れの時に共にイブリール入りした随員の一人・アレノーワである。

 ティアモラの事情に通じているのみならず、彼女の従姉がサザル有数の豪商に嫁いでいる縁から、伝手もあった。

 更に、セルアの亡母であるマヌエラ前妃に仕えていたため、ティアモラ国内のローディアナ神殿関係者との面識もそれなりに有している。

 ファウラの助手を務めるのに、この上ない人物だった。





 経済制裁が発令された結果、予想違わずティアモラ国内は、凄まじいインフレーションに見舞われている。

 また、それに対して王室側が何の措置も行わないのだから、市民生活の困窮は深まるばかりだ。

 不安と不満、そして怒りが燻る中、ファウラを代表にした救援隊が現地入りし、歓喜の声で迎えられたのは当然だった。

 サザル側のローディアナ神殿の協力で、すぐさま受け入れ態勢が整えられる。

 驚くべきことに、そのスタッフの約一割が、ロールウェルから長旅をして来た、かつてのセルアの領民たちだったのである。

 新領主であるエテルティアの圧政は凄まじい限りで、耕地からの収穫だけで食べて行けなくなった人々は、各地へ出稼ぎに赴くのを余儀なくされていた。

 サザルは、その最大の働き口だったのだ。

 それだけ商業活動が盛んだからこそ、なのだが、イブリールの圧力によって、仕事は途絶え、サザル側としても当然の判断だが、地元の人間を優先させたため、そうした出稼ぎ労働者たちは真っ先に職を失った。

 彼らは、救いを求めて神殿に赴き、かつての領主にて敬愛の対象たる人物の意志を受けた高貴な姫君の巫女ファウラの到来を知ったのである。

 感謝の想いは瞬く間に崇拝へと育ち、その反感は、サザル領主やエテルティア王女、何よりティアモラ王室へと募って行くのも当然だろう。

 彼らが率先してそうした感情を育て上げるのに、周囲のサザル領民たちも引きずられるように、追随する。



 何もかもが、セルアの目論見通りだった。

 意のままの展開が続く。

 全てが順調なように見えた。

 この期に及んでなお動かないティアモラ王室への不安と不気味さはあっても、イブリールの「政治的思惑を加味した言動」は現地の人々に受け入れられ、彼らは次第に自国の王よりも、救済の手を差し伸べてくれるファウラ姫に……そして、その背後に立つセルア皇妃への慕情を募らせて行く。

 ……無論、ティアモラ側とて、いつまでもそのままでいるはずはなかった。


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