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「あっ!」
「きゃあっ!」
セレスティアは咄嗟に左肘を上げて目を庇った。
乳母もまた、両手で顔を覆う。
ゼルフィードただ一人が、悠然と構えていた。
虹色の輝きは、祖父と孫を覆う。
そして、しばしもせずにセレスティア一人を包み込んだ。
「ひ、姫さまっ!」
乳母が狼狽する中、セレスティアは陶酔の心地で神器を凝視する。
箱から発せられる温もりに、酔いしれるかの快さを覚え得ていた。
「乳母殿!」
「殿下!」
部屋の外から、案じる声が響く。
神聖なる輝きは、室内に留まっていないらしい。
当事者たちに知る由もないが、実は昼日中にも関わらず、館一つを凌駕し、周辺からも認識できたのだ。
当然、すぐさま王妃の知るところにもなるだろう。
祖父と孫の邂逅を苦々しく思う彼女の意向を受けて監視に来ていた役人たち然り。
「失礼を!」
一刻も早くゼルフィードを退出させよとせっつく役人たちをなだめていたサナレーン侯爵が、イブリール大使である壮年のドリュー伯爵やその秘書ら、更にはセレスティアの侍女たちと共に、部屋へ乱入する。
その後ろに役人たちも追随した。
「おおっ……!」
神の恩賜を体現する高貴さに、足を踏み入れた一同は硬直する。
「我らが神の祝福を受けて誕生せし、聖なる王女セレスティアよ……」
一同の注目を受ける中、ゼルフィードは静かに言葉を紡ぐ。
「御身に担う誉れを以て、類い希なる恩寵を、新たなる祖国とその民へ降り注がんことを……」
聖職者の言祝ぎの神聖さに、イブリールの民たちは畏み入って、その場にひざまずいた。
一拍後、セレスティアの手から放たれた光りが消える。
神の御業としか言いようのない現象を目の当たりにした瞬間は圧倒されたものの、沈静によって、我にかえったティアモラの役人は、醜く表情を歪める。
「お控え頂こうか! 大神官殿!」
いかにも小悪人と言った風情のその中年男は、大仰に部屋を横切ると、神の教えを体現する尊い聖職者の前で胸を反らす。
正に虎の威を借る狐。
本来の身分や立場では到底あり得ない位置に自らを置いて、彼は大神官に挑みかかる。
「これなセレスティア嬢は、すでに王家を離れた無冠の者。ティアモラの民ですらない!」
イレニア妃の寵を得んがための訴えだ。
卑小にも彼は、セレスティアを王女どころか姫(これは、純粋な敬意を示す以外、相手を侮る場合にもあり得る扱いだが、一般的には、目下への尊意、あるいは近しい間柄の主人へ従者が用いる尊愛の称である)とすら呼ばない。
王家の意向を担う者としての自負があってこそだが、本来上位の者が相手を尊重して告げる「殿」と、大神官を称する心得違いぶりだ。
これぐらいの尊大さは無理もないのかもしれない。




