『折れない剣と泥の冠』
黒雲は押し寄せ 大国の影は迫る
高き血統の兄らは怯え 国を捨てて逃げ惑う
病床の父王は涙し 「これぞ神の定め」と嘆く
十倍の敵を前に 城内はただ絶望の静寂に沈む
若き王子レオナルドも 己の無力を呪い 膝を折りき
されど街の泥の中 民は怯えつつも 明日の畑を耕し
崩れし壁を直さんと 汗を流して抗えり
黒き煙の立ちのぼる鍛冶場にて 職人の娘エレーナは叫ぶ
「最悪の選択は 運命にひざまずき 何もしないこと
諦めたその刹那に すべては終わりを迎える
私はただ 終わりが来るまで鉄を叩き続ける」
その一言は雷のごとく 王子の魂を呼び覚ます
彼は城へ駆け戻り 残されしわずかな兵に告ぐ
「勝利の行方は知らずとも 戦わずして国を渡すな
最も気高きことは 決して諦めぬことなり」
武勇なき王子は泥にまみれ 知恵を尽くして罠を仕掛け
今できる一歩を ただ実直に積み重ねん
押し寄せる鉄の軍勢 崩れかける鉄の門
されど王子は剣を抜き 最前線にて盾となる
その折れぬ背中を見て 民の胸には炎が灯り
泥にまみれた執念が ついに大国の軍勢を退けり
小さな国は死の淵より 自らの手で未来を掴み取れり
歓声の響く中 傷だらけの王子は立つ
黄金の冠にあらず 泥に汚れた兜を戴きて
父王は涙して抱きしめ 「お前が正しかった」と讃えり
何もしない絶望こそが 最大の罪なりきと
王子はただ微笑み 遥かなる青き空を見上げる
その胸には いかなる嵐にも折れぬ 気高き信念が刻まれていたり




