エピローグ 果てなき夢の境界線
ついにここまでお読みいただき、本当にありがとうございます。
本エピソードをもちまして、『ナイトメア・デリート:漆黒のイカズチと血薔薇の戦姫』は【完結】となります。
悪夢に浸食された東京で、数々の理不尽と戦い続けてきた風月と火楽。
組織の飼い犬から反逆者となり、神をも斬り伏せた二人が、最後に選択した未来とは。
夢と現実の境界線に昇る、本当の夜明けをどうぞ見届けてください。
気がつくと、風月は新宿の廃ビルの一角で横たわっていた。
空からは、あの一年前から降り続いていた灰色の粒子が消え、吸い込まれるような深い藍色の夜空が広がっている。
「……終わった、のね」
隣でボロボロの私服姿の火楽が、ビルの縁に腰掛けていた。
二人の手元にあった「バク」のデバイスは、役目を終えたように砂となって崩れ去っていった。
ドリームキャッチャー本部は、人工神の崩壊に伴う精神的フィードバックにより、システムが完全沈黙。
本部長をはじめとする幹部たちは、自らが作り出した「無限の夢」の深淵に囚われ、二度と目覚めることのない眠りに落ちたという。
「ああ。……だが、世界が変わるわけじゃない」
風月は、感覚の戻った右腕を握りしめる。
組織が隠蔽してきた真実は、レジスタンスの手によって世界中に拡散された。
人々は、自分たちが「英雄」と呼んでいたものがいかに虚像であったかを知り、自らの足で立つことを強いられている。
「……でも、これからはちゃんと『自分の夢』が見れるわ」
火楽が、東の空を指差した。
地平線の向こう側から、鋭い陽光が差し込み始める。
一年ぶりの、本当の朝日。
「武見。……あんた、これからどうするの?」
「……俺は、これからも潜るさ。組織はいなくなったが、人の心がある限り、ナイトメアは消えない」
風月は立ち上がり、ポケットの中で唯一残った「八咫烏」のチップを弄んだ。
「……今度は、誰かの命令じゃなく、俺自身の意志でな」
「ふん。……じゃあ、私も付き合ってあげるわ。あんた一人じゃ、また冷たい事言って患者を怖がらせるだろうし」
火楽が不敵に笑い、風月の隣に並ぶ。
朝日を浴びる二人の影は、長く、力強く瓦礫の街に伸びていた。
夢と現実の境界線で、彼らの新しい物語が、今ここから始まる。
――『ナイトメア・デリート:神殺しの八咫烏』、これにて【完全完結】です!
最後までお付き合いいただき、本当に、本当にありがとうございました……!
漆黒の雷を操る風月と、鮮血の薔薇を纏う火楽。不器用で冷徹に見える風月が、火楽という相棒を得て、最後には自分の意志で「誰かのために潜る」と決めるまでの成長を描ききることができ、作者としても感無量です。
灰色の空が晴れ、二人が並んで朝日を見上げるラストシーンが、皆様の心に少しでも残れば幸いです。
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