第6章:傲慢なる者の終焉 ―叛逆の号砲―
第5章をご覧いただき、ありがとうございました!
第6章は、四方八方を武装兵に囲まれた絶体絶命の状況から、一瞬の隙を突いて駆け抜ける「超高速の脱出劇」です。
救うべき患者のいない、生き残るための泥臭くもスタイリッシュな現実世界での死闘。
そして屋上で待ち受ける、人々の絶望を繋ぎ合わせた異形の怪物『人工神』。
逃げ場のない地上50階、200メートルの高空から風月と火楽が挑む、前代未聞の「ダイブ」の結末をどうぞ見届けてください!
ドリームキャッチャー本部、最深部。
無機質なアラート音が、鎮圧部隊の足音をかき消すように鳴り響く。
風月と火楽は、数十丁の自動小銃の銃口に囲まれながら、静かに呼吸を整えていた。
「……いいのかしら。ここで私たちを殺したら、大事な『サンプル』が台無しになっちゃうわよ?」
火楽が皮肉げに笑うが、その右手は背後の「血薔薇」のデバイスを強く握りしめている。
本部長は、防弾ガラスの向こう側で冷淡に首を振った。
「案ずるな、里見。君たちの脳細胞は、死後すぐに特殊な保存処理を施し、人工神『DEUS-Ex』の演算回路として組み込ませてもらう。……意識は永遠に絶望の中で生き続ける。組織への、最高の献身だろう?」
「……狂ってるな」
風月の低い声。
彼は右腕の装甲が剥げ、火傷で赤黒く爛れた腕を晒していた。だが、八咫烏の紋章は、その皮膚の奥で脈打つ血管さえも青白く発光させている。
「火楽、床だ。……三秒で、すべての照明を潰せ」
「了解!!」
一秒。風月が、わずかに残ったスーツの全エネルギーを脚部に集約させる。
二秒。火楽が「血薔薇」を床に向けて叩きつけた。
三秒――。
「――灼熱波!!」
鞭から放出された超高圧の熱気が、クリーンルームの床を瞬時に溶解させ、冷却用ガスを爆発させた。
猛烈な白煙が視界を遮り、同時に風月が放った電磁パルスが、部屋中の電子ロックと照明を破壊する。
「撃て! 逃がすな!!」
本部長の怒号。
銃声が闇を切り裂くが、そこに「英雄」たちの姿はすでになかった。
非常用の赤い警報灯だけが回る、血に染まった廊下。
風月と火楽は、追撃してくる武装兵たちをなぎ倒しながら、エレベーターホールへと突き進む。
「『漠着』が解けかかってるわ……! 武見、このままだと現実世界での戦闘は持たない!」
「分かっている。……だが、俺たちが生きている限り、この組織はナイトメアの増殖を止めない」
角から現れた三人の重装兵。
彼らは「バク」の廉価版ともいえる無人戦闘フレームを装着していた。
風月は、ボロボロになった日本刀を逆手に構える。
「……退け」
風月の姿が、赤い警告灯の瞬きと共に消えた。
キィン、という澄んだ金属音。
一瞬の後、三体の戦闘フレームの首が、同時に火花を散らして転がり落ちた。
風月は納刀もせず、流れるような動作で敵のサブマシンガンを奪い取り、背後の追っ手に向けて正確な制圧射撃を見舞う。
「スタイリッシュじゃないわね、銃なんて使うのは」
火楽が追いつき、熱を帯びた鞭でシャッターを焼き切る。
「……背に腹は代えられない。……火楽、屋上へ向かう。そこから外部へダイブ(脱出)するぞ」
「ダイブって……ここ地上50階よ!? パラシュートなんて持ってないわよ!」
「『バク』の重力制御を全開にする。……脳が揺れる覚悟はしておけ」
屋上へと繋がる非常階段。
背後からは、もはや人間とは思えない咆哮が追いかけてきていた。
先ほどタンクの中で脈動していた「人工神」――『DEUS-Ex』のプロトタイプが、不完全なまま解き放たれたのだ。
壁が内側から突き破られ、無数の銀色の触手が風月たちの足を狙う。
その触手の先端には、これまでの患者たち――由香里、棚橋、郷田、そして光の「顔」が、苦悶の表情を浮かべて張り付いていた。
「……あの子の顔を、そんな風に使うなんて……!!」
火楽の怒りが、白熱した炎となって爆発する。
彼女は振り返り、迫り来る触手の群れを真っ向から焼き払った。
「風月、先に行きなさい! ここは私が食い止める!」
「断る。……二人でなければ、墜落して死ぬだけだ」
風月は火楽の腰を引き寄せ、迷うことなく、夜の闇へとダイブした。
地上200メートルからの自由落下。
眼下には、死んだように静まり返った東京23区の夜景。
「……『イカズチ』!! 重力偏向、最大!!」
風月の右腕から放たれた黒い雷が、二人の周囲に強力な磁場を形成する。
空気抵抗が物理を無視して歪み、二人の体は一羽の巨大な鴉が滑空するかのように、灰色の空を切り裂いた。
背後では、ドリームキャッチャー本部の屋上から、巨大な銀色の怪物が月夜に向かって咆哮していた。
それは、神に憧れた人間たちが作り出した、この世で最も醜悪な「悪夢」。
「……逃げ切った、のかしら」
新宿のビル影に、激突に近い形で着地した二人は、雨の降り出した路地裏で荒い息をつく。
スーツは完全に大破し、八咫烏の紋章も、力尽きたように輝きを失っていた。
「……いいや。始まったばかりだ」
風月は、冷たい雨に打たれながら、遠くそびえ立つ本部ビルを見上げた。
「俺たちは英雄から反逆者になった。……世界中が、俺たちの悪夢を見ることになるだろうな」
彼らの手元には、資料室から奪取した「プロジェクト・ネクスト」のすべての真実が収められたチップが握られていた。
第6章、最後までお読みいただきありがとうございました!
重力制御を全開にした新宿への滑空、そして「俺たちは英雄から反逆者になった」と言い放つ風月の覚悟。これまでの『ドリームダイバー』の枠を飛び越えた、ダークヒーローとしての二人の姿を熱く描写してみました。
命からがら逃げ切ったものの、スーツは大破し、世界中から追われる身となった二人。
次回、**第7章『静寂の雷鳴 ―逃亡のデッドエンド―』**へと物語は進みます。雨降る新宿の路地裏で、組織が放つ最強の「人間兵器」が二人の前に立ちはだかります。
「200メートルからの脱出が最高にカッコよかった!」「ここからの逆襲劇が楽しみ!」と思ってくださった方は、ぜひページ下部の**【ブックマーク】や【☆☆☆☆☆評価】**で、夜明けを呼び戻す二人への応援をよろしくお願いします!




