第四話 アジト
途方に暮れるセシラを扉の向こうに立たせ、俺はエレベーターのタッチパネルを操作し、ドアを開ける。
前には厳重なセキュリティが用意された白いドアがある。IDカードに指紋認証、顔認証を得てようやく白く重たい扉が鈍い音を立てながら開く。
「すごい」セシラは感嘆詞ともとれる言葉をつぶやく。そこにはエントランスがあり、円柱が地面をくりぬき、周りを部屋が覆っている。白いただ白い施設。俺たちは地下5階におり、つきあたりを右に曲がって部屋に入る。
「どうだ? 九尾の仮面のアジトに来た感想は?」
「どうもこうもないわ。騙し討ちにあったみたい」
それは俺も否定しない。だが、彼女が本当の意味で味方か敵か。その正体を確かめるまでは情報を開示するつもりはない。
これはここのルールだから。
俺たちが部屋に入ると二人の女性が俺たちを迎え入れる。
「マァユー久しぶり、生きてたんだ?」
「マァユーって」ユーマって名前をどういじればそうなるんだ。それに相変わらずの憎まれ口は変わらないな、ラティーシャ。金髪の長い髪を束ね、俺よりも背の高い、年齢は未だに正確には特定できないこの女の名はラティーシャ・メイへ。ここは喫煙なのに堂々と煙草をふかしていやがる。
「おかえりなさい、マーユ。私がヘマしてごめんなさい」
良かった生きていたか。今回の研究所の任務の際、彼女との交信がとだえたため、残念なことになったかと思ったが生きていたらしい。あと、マーユじゃなくてユーマね。ピンクのボブヘアにとても16には見えないこの少女、ロリッ子の名はミュウ。下の名前は知らない。
二人とも狐の仮面をつけ、俺もその素顔を知らない。ここでは、相手の身分や人種、情報漏洩などの憂いを無くすために仮面をつける。もちろん俺の正体もさっきの執事以外知らない。ここのボスも同様に。
「この子が、新しく入った子?」
「そうだ。この子がセシラ・ランページ。まだ、見習いだ」
「よろしくおねがいします」
ラティーシャはセシラの体を舐め回すように見る。セシラは緊張か羞恥心のどちらかで足をガクつかしている。
「ラティーシャ様、お戯れはその辺で。リーダーがお待ちです」
「はいはい。わかっているよ」
執事の注意にラティーシャは両手を挙げて、セシラから距離をとる。
ラティーシャとミュウは奥の道に進んで行く。俺たちもあとに続いて奥の道を進む。
「ねぇ、あとであの人たちのことちゃんと教えてね?」
セシラが不安そうに小声で話しかけてくる。
「ここのリーダーに会ったあとに教えてやるよ」
俺も知らない事の方が多いがな……
「よくきたね君たち。僕はここではデーモンと名乗っている。こんな格好で申し訳ないが、どうぞよろしくセシラ君」
「よろしく……お願いします……」
ドン引きするよなこんなのがリーダーだと言われたら。デーモンは裸で温泉に浸かっている。タオルで大事な所は隠しているが、女の子の前でよく堂々と温泉に入れるな。
「僕は、ちょっと特殊な体でね。こうして一日の半分以上は湯に浸からないと生きていけないんだ」
「魔剣の誓約ですか?」
「そのとおーり。魔剣の誓約だ。はははーー」
セシラの考えに笑って答えるデーモンだが、
誓約が大きければ大きいだけ、魔剣の強さも強大なものになる。デーモンの魔剣の異能は見たことがないが、最強クラスの魔剣所持者ということは確かだ。
ここのリーダーを名乗るだけの力量。
「ユーマ君とセシラ君には、急だが任務を任せる。これはセシラ君の入団試験でもあるよ」
いきなり声のトーンが本気になり、俺は一瞬冷や汗をかく。
俺たちに与えられた任務の内容が書かれた紙を見る。これって……
「そう。じゃあ、頑張ってね」
デーモンがそう言った瞬間俺とセシラは突如現れた渦潮の中に飲み込まれる。
息が続かない……
「はぁはぁ」「ごほごほ」俺たちは口に入った水を吐き出す。これもデーモンの魔剣の異能なのか……




