第三話 九尾の仮面
俺達がセシラの豪邸の外に出ると、俺の呼んだ車が到着している。
「お待たせしました」
運転席から仮面をつけた年配の執事が降りてくる。
「悪いな、作戦はだいぶ崩れてしまった」
俺は執事に箱を渡す。
「いえ、回収できれば問題はありません。それよりそちらは……」
「彼女は味方、少なくても俺はそう考えている」
セシラは少し困惑しているようだが、彼女は俺と一緒に後部座席に乗り込む。
黒塗りの車は公道に出て、目的地のアジトに向かって出発する。
「本当にあなた何者なの?」
どことなく落ち着かないセシラが不安な顔で尋ねてくる。
「革命者、そう考えてもらっていい」
リーダーの同意なしにベラベラと秘密を喋るわけにもいかない。
「革命者ね……それにしてもあなた達この国で何しようとしてるの?」
俺は口にふくんだペットボトルの水を吹きそうになる。
「知らないで仲間になるとか言ったのか……」
「目的の一致を感じたから、同意したのよ」
いたって真剣な彼女の表情がおかしく思えてしまう。
「目的の一致ね……」
確かに俺たちのゴール地点は一致している。
だが、そこに到達する過程は必ずしも同じとは言えない。
「セシラ、お前は人を殺したことがあるか?」
「何、急に? そんなのあるわけないでしょ。そう言うユーマは何人の人を……」
「さぁな、覚えてないかもな……」
魔剣を手にした日から、ただ他人の命の重さが軽くなってしまった気がする。
「それって、目的のためだから?」
「そうかもしれないし、辛い現実から逃げたいだけかもな……」
「逃げたいだけ……」
セシラは急に頭を抱え、取り乱してしまう。
「どうした?」
「違うのこれは……私は……魔剣が……」
どうやら彼女には思い出したくない過去があるようだがここでは聞かなかったことにする。
30分ぐらいして車が街の外れで止まり、執事の男は公衆電話の中に入り受話器を取る。
「何で公衆電話?」
セシラは先程とは違い落ち着いており、俺に疑問をぶつけてくる。
「よくあるだろ、公衆電話を使って地下の基地に行くやつ」
「よくバレないね」
少し王道すぎると俺も思うが……
執事が車に戻ってエンジンをかけると、車は地下に沈み始める。
「沈んでるよ。この車!ねえ!」
「大丈夫です、このまま行くと目的地です」
執事は慌てるセシラをいさめて、俺達に仮面を渡す。
俺は仮面をつけて、セシラにもつけさせる。
「ねえ、何で仮面を付けるの?」
ここに来るまで質問されっぱなしだったが、この質問には俺もきちんと答える。
「それはだな、ここが世間から九尾の仮面と呼ばれる組織の拠点だからだよ」
「九尾の仮面て……まさか……!」
彼女も気づいただろう。
ここは反ルブテン帝国、最大級の対抗組織だということを。
九尾の仮面ーーーその正体とはエドワード公国の支援を受ける、抵抗組織の1つだ。
エドワード公国はもともと、ルブテン帝国の支配下にあったが、30年前に戦争を起こし独立。
今もなお戦争は続いているが両者睨み合いの冷戦状態。
そこで、公国は非公式に複数の抵抗組織を支援し、ルブテン帝国を疲弊させることに注力し、現状に至る。
俺は車を降りセシラと面と向かう。
「ようこそセシラ、九尾の仮面の拠点へ」
「歓迎するぜ」




