第一話 魔剣vs魔剣
「はぁはぁはぁーーーやばい、やばすぎる」
俺はとある組織に追われている真っ最中だ。
街路地の角を曲がりフェンスを乗り越え逃走を計るが、どうやらここまでらしい……。
「ユーマ君悪いことは言わない、研究所から盗んだ物をこちらに渡すんだ」
すでに30人近い組織の人間に包囲され、待ち伏せされていたらしい。
「嫌だって言ったらどうする」
「君を殺して奪う」
男がそう言った途端に俺の頭上をまばゆい光が覆う。
けたたましいプラペラの音と共に機関銃を構えた軍用ヘリが暗闇から現れる。
(コソ泥1人にヘリまで飛ばすか普通……)
「これでもやり合うのかい君は?」
「どうせ返しても口封じに殺すだろ」
「長話は無用、3つ数える間に持っている箱を渡せ。3ーーー2ーーー」
男の合図でマシンガンと機関銃の銃口がおれに照準を合わせる。
(あまり魔剣は使わないように釘を刺されていたが……)
俺は魔剣を召喚する。
すると、俺の手のひらに剣のつかが現れ、漆黒の剣を形取る。
「ーー1ーーー打てーーーー!!!」
その言葉と同時に俺は魔剣を振りかぶる。
銃弾は跡形もなく消え、ヘリは地上に真っ逆さまに墜落してしまう。
「魔剣か…」
男達は、銃を捨てて腰の剣を抜き、斬りかってくる。
「今はお前たちにかまってやれる時間はないんだ。 手っ取り早く片付けさせてもらう」
俺は魔剣を逆さまに持ち地面に突き刺す。
戦場にはチリが舞い、俺1人だけが立っていた。
いや、もう1人だけビルの屋上にいるか……
「気づかれちゃったかぁ〜〜 凄い魔剣だね。人に触れずに骨まで残さず殺せるなんて。でも、人殺しとは感心しないな」
ぼさぼさの長髪にお姉口調の男は無傷で俺の元まで飛び降りてくる。
「バチラ、お前よりは少ないさ」
コイツからは死の匂いがプンプンしてくる。
一体何人殺せばここまで匂えるのか…
「ユーマ君、潜入してたとはいえ、仮にも我々の同志だと思っていたんだが残念だよ。ここで殺してあげる」
バチラの手には緑色の魔剣が握られている。
魔剣使い同士の戦いはどれだけ自分の手の内を見せないことだ。
俺の魔剣は、破壊の魔剣ーーー
その異能は対象を直接斬らずとも魔剣を振りさえば、物体を跡形も無く破壊することができる。
だが、有効範囲は12メートル。
やつと俺との距離は約20メートル、さっきの戦闘を見られた以上、俺の方が一手不利か……
俺は地面を力強く蹴り、一気に魔剣の有効範囲まで接近するがバチラは俺との間合いを取り続ける。
(やはりバレてるか)
だが、恐らく正確の距離範囲を知っているわけではない。
俺は魔剣で周囲のビルを壊し、崩れた空中の瓦礫を使って空中から距離を詰める。
しかし、空中の瓦礫が俺に向かって分裂し銃弾のようにはじけ飛んでくる。
絶好の機会だったが、魔剣で瓦礫を破壊し、一度態勢を整えるために地上に足をつける。
(遠距離攻撃型の魔剣か、念力か反射の異能か…)
「命をかけ合っている時によそ見はダメでしょ」
俺の着地と同時に無数コンクリートの礫が雨のように降りかかってくるが、俺は冷静に魔剣で消しながら、右、左へと避けながら少しでも距離を縮めていく。
(相性では俺の方が有利だ)
コイツの魔剣の異能は恐らく、拡散。 ありとあらゆる物体を分裂させ拡散できる。
だが、バチラ自身の間近にある物体しか拡散できない。
魔剣には最大の弱点がある。 魔剣の力を使えば使うだけ、体の中の血液が失われてしまうことだ。
あまり、やつの拡散されたコンクリートを破壊するのに血を消耗してしまえば逆に体の方が持たない。
お互いこの誓約はあるが、バチラに消耗はみられない。
俺は一直線にバチラ目掛けて突き進む。
「焦っているの? そうゆう時こそ隙ができるのよ」
「うるせえ、狂人」
俺は魔剣の打ち止めも近く、バチラと距離をとるが拡散弾は勢いを増して、しまいには俺の体を貫通し始める。
「あなた蜂の巣みたいになっているわよ」
楽しそうなバチラの笑い声が俺の冷静さを完全に失わせた。
出し惜しみしていてはこちらが負けてしまう。
「この一撃で決める」
俺は右足に全体重をかけ閃光のごとくバチラの心臓を狙い走る。
「これで終わりね、坊や」
バチラは不適な笑みを浮かべながら、俺がさっきしたのと同じように魔剣を地面に突き刺す。
「しまった……」
地面から今までで一番の大きさの鋭い岩が俺を串刺しにする。
ここで、死ぬのか……俺……
「ぐはっーー!?」
だが、結果は違っていた。
俺の魔剣がバチラの心臓を突き刺し、バチラは大量の血を口から吐き出す。
「何で私が……それにその魔剣は……ゴホッゴホーーー」
「ああ、そうだ。だが、お前は何も知らなくていい。じゃあな、バチラ・ブラディスーーー」
俺が魔剣を引き抜くと共にバチラの死体は鈍い音を立てて地面に横たわる。
「今回はマジでやばかった……」
俺がバチラの魔剣に触ろうとすると、魔剣は次なる宿主を探しに消えてしまう。
(やはり魔剣の回収は無理か)
貧血状態になり、瓦礫の壁に腰かけるが意識がもうろうとする。
「ちょっとヘマしっちまたぜ……」
体に刺さった瓦礫を抜くが、キリがない。
体力が回復した後で魔剣で消すしかないな。
俺は自分に接近してくる足音に気づく。
今の状態の戦闘は不可能に近い。
「誰だそこにいるのは……」
俺は言い終える前に意識を失った。




